判決全文は、すでにバーンと公開されている
24日の読売-デジタルアライアンス訴訟の判決全文が、東京地裁のサイトで公開されている。知的所有権をめぐる訴訟なので、「知的財産権判決速報」コーナーでさっそく公開された。で、わたしも判決全文をざーっと読んだ。とても興味深い内容だった。
読売側はDA社の電光掲示板のようなツールで自社記事の見出しを利用されたことに対し、(1)著作権の侵害である(2)たとえ著作権法違反でなくても、営業妨害だ--という二段構えの訴えをおこなった。
(1)の著作権関係の審理は、具体的な事例がいくつも取り上げられている。たとえば、「いじめ苦?都内のマンションで中3男子が飛び降り自殺」の見出しについて、読売側は「いじめ苦?」の部分に創作性があると主張したようであるが、飯村敏明・榎戸道也・佐野信の三判事は「ありふれた表現であるから,創作性を認めることはできない」と判断した。こうした個々の事例は、メディア企業の社員研修に使えそうな内容となっている。
また(2)のDAが読売の営業活動を不法に妨害したという訴えについては、▽YOL見出しは読売自身がインターネット上で無償で公開した情報▽読売側に排他的な権利が認められない以上、第三者がこれらを利用することは本来自由▽特段の事情のない限り、インターネット上に公開された情報を利用することが違法とならない---という結論がごく簡単に記されているにすぎない。
それにしても、裁判所が判決全文を「速報」するなんていう時代が来ようとは!
突然ですが、クイズです。
裁判の判決文の著作権者は、いったい誰になるでしょう。
A そら、書いた判事に決まってますがな。常識でっせ。
B 裁判の場合、原告・読売と被告・DAの双方が平等に著作権を保有するねんよ。
C 判決文は、書いた判事の勤め先である東京地裁のものに決まってまんがな。
D おまえらアホか、判決文に著作権なんかあるかい!
さーて、正解は、A~Dのどれでしょう?
著作権に関して信頼できるサイト:Copy & Copyright Diary
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