イラク邦人人質へのツライ眼差し
みんなで寄ってたかって、人質3人と、その家族を責めたてるの風潮は、じつにニッポン的だなあと思う。これは、オウム真理教に対する集団ヒステリーが高じた時期の空気に似ているし、神戸の児童連続殺傷事件が発生したときのある種の空気に通じる。知人のフリーライターは「この国には神はいない。ロード・オブ・セケンがある」と話していたけど、今回もまた、いやな世間に出会ってしまった。
だれだって事故に遭うことがある。運わるく事件に巻き込まれることだってある。それは、危険だとされる地域であっても、安全とされる地域であっても、不測の事態は起こりうる。その被害者に対して、“お国に迷惑をかける粗忽者”というレッテルを貼って、その家族をも責め立てるのは卑劣だ。そして、世間はいつも卑劣だし、いつもお節介だし、いつも寄ってたかって…なのだ。(3人の行動を過度に美化するのもヘンなのだが)
たとえば、1999年秋、茨城県の核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所で起こった臨界事故で、亡くなった大内久さんに対して、今回のようなヒステリックな非難は起こっていない。むろん、あの事故では、JCOの経営陣や大内さんの上司たちに大きな責任があった。しかしながら、大内さん本人にも安全管理に度し難い行動が認められる。(大内さんを責めろと言っているのではない)
哀れな家族たちが、いったいどんなツラををして、どんなセリフを発するか。その姿は生意気っぽいか? その顔つきに反省の色がないか? 髪型が、服装が、気に入らないか? そういった話題を肴に、正義漢ぶって、評論家ぶって、すっとぼけた“一家言”を得意げに披露する人たちを見るのが、心底ツライ。
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