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2004年7月 5日 (月)

世論(2)

第20回参議院選挙を目前にして、報道各社の世論調査結果があいついで報じられている。若干のバラツキはあるものの、どうやら自民が伸びなやみ、民主党がけっこう票をのばしそうな情勢だ。もちろん、選挙はじっさいにフタを開けてみなければわからない。投開票日まで1週間。この時点で“やや不利”と報じられた側の運動員たちには一斉にムチが入り、むしろ“引き締まった”格好で投開票に突入できるかも知れない。なぜなら世論の動向というのは水モノだから……

……ここでいう「世論」って、いったいなんだ?

世論調査の「世論」とは、報道機関の調査に協力してくださる人々が、あくまでも匿名を条件にかたった政治意識の累計でしかない。母集団には、「マスコミの調査なんかに応えてるヒマなんてあるものか」という忙しい人は入っていない。しかも、回答者がかならずしも正直に答えているとは限らない。熟慮のうえで回答した人の意見も、政治的な問題を真剣に考えたことがない人がテキトー答えた意見も、数値のうえでは等価である(まあ、選挙自体がそういうルールなのだから仕方ないけど)。

いずれにせよ、それが報道機関のいう「世論」なのだ。じぶんたちの調査結果こそが世論を映すもの。そういう前提で世論調査報道が行われる。

しかし、世論は報道機関だけの専売特許ではない。自民党が考える「世論」もあれば、野党が考える「世論」もある。外務官僚が想定する「世論」もあれば、警察官僚が受け止める「世論」もある。宗教界や経済界も、それぞれ自らの行為を、自らが考える「世論」に照らして……

……おいおい、じゃあ世論ってなんだ?

宗教権力が失墜し、専制君主が放逐され、貴族社会が崩壊し、社会が近代化していった果てに、人々は民主的手続きを通じて自身を治めるようになった。議会での討論を通じて立法をするルールが生まれた。ただ、議会はいつも満場一致で決まるほど甘くはない。いくつもの立場が対立し、いくつもの利害がぶつかり合うのが常だ。政治は妥協の連続だ。

政治家ならだれもが知っている。絶対的に正しい政策なんてない。政策や立法というのは常に暫定的。そこで「世論」が重要な働きを見せる。世論とは統治を正当化(正統化)する指標であり、「審級」となった。政治家も役人も財界もマスメディアもNPOも宗教者も、だれもが「世論」を奪い合ってきた……。世論というのは、ただそれ自体が本質的に存在するのではなく、社会的に構成されている……

……こういう世論観は、いわゆる構築主義に入るのでしょうか。最近、付け焼き刃ながら、いろんなことを考えつつあり、今回は、自問自答のつぶやきとなりました。独り言が行きつ戻りつしてすみません。

ところで、上田哲氏はかつて(今も?)“なんでも国民投票で決めよう”と主張しました。住民投票は地方自治を考えるうえで重要なキーワードだと思います。そういう、自分たちのことは自分たちで決めるルールというのは、究極の民主主義のように思えます。だがしかし、「おねがいだから、○○党に投票してね」と言われて、本当にその通り投票するような人に投票する権利を与えていいのでしょうか?

■私的メモURL
(財)日本世論調査協会
http://wwwsoc.nii.ac.jp/japor/
内閣府「世論調査」ページ
http://www8.cao.go.jp/survey/index-all.html
NHK「政治意識月例調査」
http://www.nhk.or.jp/bunken/news-jp/bnl-yo-r.html
世界世論調査学会
http://www.unl.edu/wapor/
ウェブサイト「朝日新聞を購読しましょう」の「朝日VS読売、世論調査対決」
http://www.asahicom.com/yoron/
Dr. Dr. h.c. Elisabeth Noelle-Neumann
http://www.noelle-neumann.de/
沈黙の螺旋
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%c4%c0%cc%db%a4%ce%cd%e6%c0%fb
池田謙一氏のウェブサイト
http://www-socpsy.l.u-tokyo.ac.jp/ikeda/
Patrick Champagne : Faire l'opinion
http://www.homme-moderne.org/societe/socio/champagn/
パトリック・シャンパーニュ『世論をつくる 象徴闘争と民主主義』(宮島喬訳、藤原書店、2004年2月)
http://www.fujiwara-shoten.co.jp/book/book476.htm
宮島喬氏
http://www.rikkyo.ne.jp/grp/jyoseika/ken/vin/miyajima_t.html
石井洋二郎氏のコラム「ブルデュー社会学と日本」
http://www.bekkoame.ne.jp/~n-iyanag/AABMFJ/conferences/ishii.html
法政大・野村一夫さんの「社会構築主義の導入――理論的核心」
http://archive.honya.co.jp/contents/knomura/health2/critical02.html
上野千鶴子編 『構築主義とは何か』 by 立命大学院先端総合学術研究所・北村 健太郎さんのDB
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/db2000/0102uc.htm
「本質主義(Essentialism)」かいせつ・池田光穂さん
http://www.let.kumamoto-u.ac.jp/cs/cu/021111esse.html

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