映画『第三の男』と世論
大学院の基礎ゼミで、わたしは世論研究をテーマにした発表をした(パートナーのMさんお疲れさまでした)。このとき読んだ高橋徹編(1960)『世論』有斐閣に映画『第三の男』が出てきた。日本の世論が初めて自律的な動きを見せたのは、1950年代終盤の勤評闘争と警職法闘争の時代で、不気味な『第三の男』として立ち現れたというようなことが書かれていた。
これを読んで、「なーるほど、第三の男ねえ!」という感想を漏らせる人がいれば、映画通だろう。わたしは映画通ではないので、レンタルDVDで見ることにした。借りてきたのはキャロル・リード監督『第三の男』(1949,英)。世界的に大ヒットした作品で、“第三の男”役に若き日のオーソン・ウェルズが好演していた。
映画の舞台は、米ソ英仏による統治を受けていた第二次大戦後のウィーン。複雑で政治的な緊張に満ちた状況下で、ある男(オーソン・ウェルズ)が不正な薬物取引をするため、自分を死んだことにしようと一計を案じる。それを友人の作家がやってきて暴いてしまうというストーリー。モノクロだったけど、構図といいカット割りといい、とても端正であざやかだった。なかでもオーソン・ウェルズがウィーンの地下水路を逃げまどうシーンはなかなかだった。
映画を見終わっていい作品だなあとい感じ入ったのだけど、1950年代後半の世論がなぜ“第三の男”と形容されたのか、最後の最後までわからなかったです>高橋先生
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