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2004年10月31日 (日)

岡本薫さんの講演会

複写と著作権メーリングリストのオープンセミナーが30日に東京・中野で開かれ、同居人と一緒に参加した。参加したというと、何か熱心に議論をしに行ったみたいだが、あくまでも軽い気持ちで聴いていただけ。とても消極的な参加である(末廣さん、ごめんなさい)。

セミナーの講師は、文部科学省企画・体育課長で前著作権課長の岡本薫さん。「『自由』と『民主主義』と著作権」と題する、2時間近い熱演。マシンガンのような話しぶりに圧倒された。岡本さんの『著作権の考え方』(岩波新書,2003) はずいぶん前に読んでいたが、ナマでお目にかかるのは初めて。いつも思うのだが、活字を通してしか知らない人を、実際に間近で見てナマの声を聞くことはとても大切だ。テキストを読んだときにわたしのなかで膨らむ著者像がガラガラ崩れてしまう--そんな面白い体験ができる。今回も「へえー、こういう人なんだ!」という体験ができて嬉しくなった。

・著作権者は権利強化を願う(印税や使用料をどしどし増やしたい)
・利用者や産業界は権利の緩和を願う(無料で利用したい、させたい)
・著作権に関わるすべての人は現在の著作権法に不満を抱いている
・いずれの立場の人は幸福を追求する→エゴが拡大→他者を否定する独善
・利害が対立する社会=民主主義が前提とする社会=討議の必要=respect for others
・現代社会は1億総クリエーターで総ユーザー
・著作権法は善ではなくルールであり、調整のツール

要点を乱暴に抽出すると、こんな感じの話だった。「著作権課長」というポストは、さまざまな利害が衝突する交差点。在任中はさぞや大変だっただろう。わたしが今回、岡本さんがエライと思ったのは、専門用語を極力使わずに分かりやすく話されたこと。そして“役人=全体の奉仕者”という当たり前のことに自覚的でいらしたこと。(このところ、社会学の論文を読む機会が増えていて、その多くが悪文であるため、きちんと伝える努力をしている人を見ると無条件にエライと思ってしまう)

気になったこともある。岡本さんはわたしのような門外漢のド素人に配慮して、面白そうなエピソードを散りばめて講演を組み立てていた。その中で、大丈夫なのかなというような話もあった。じっさい、岡本さんが言及した<事件>の関係者が会場にいたので、小心者のわたしなどはハラハラさせられた。また、ある新聞社が記事データベースの表現を、印刷当時と違う内容に書き換えているという<事件>は、だれも指摘はしなかったけど、その新聞社の関係者が会場にいれば聞き捨てならなかっただろう。ああいう話し方をすれば、その新聞社が記事をコッソリと“改ざん”しているようなウワサが一人歩きするはずだから。岡本さんお得意の表現を拝借すると、岡本さんには相当の「覚悟」があるのでしょう。

■岡本薫(2003-2004)『著作権の考え方』岩波新書(bk1amazon
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