今さらながら初めてのコミケ(下)
しかし(当然のことだけど)よーく見ていくと、同種のキャラでも作家によって微妙に違う。人目をひく工夫を凝らしたウマイ作品もあれば、素人目にも下手な作品もある。単にウマけりゃいいというわけでもない。ヘタでも味のある作品もある。つまり、みんなが他人の「メイド服姿+ネコ耳少女」を模倣し、触発され、じぶんにしか描けないメイド服姿+ネコ耳少女を創造しいているということが、コミケ会場をうろつくことではじめて見渡せた。創造的模倣という言葉があるが、「模倣」という行為は創造の源なのだなあ、ということがすこし分かった。
その2 作法
コミケにはいくつものローカル・ルールやコミケならではの作法があるようだ。ひつとは行列。「ここは最後尾ではありません」とか「ここが最後尾です」というプラカードを、列を作る客の側が高々と掲げる。われ先に突き進む“大阪のおばちゃん”たちに囲まれて育ったわたしにとって、そうした振る舞いはたいへん文明的で優雅に映った。面白い仕組みだと思った。だけど、必ずしもよいことばかりではない。何人ものデイパックが無遠慮にぶつかってきた。狭い通路を大勢の人が押し合いへし合い進む場面では、せめてデイパックをおなかの側で抱えるような周囲への配慮も必要だと思うのだが、そうした配慮をしている人は見あたらなかった。プラカードはローカル・ルールだけど、デイパックは社会のルールであるはずだ。
その3 空気
会場の雰囲気が、なにかに似ていた。何かに・・・・。それはアキハバラの空気である。アキハバラの空気は、東京・中野にも存在したオウムの飲食チェーン店「うまかろう安かろう亭」の空気に通じる。どこか浮世絵的。つまり、どこか浮世離れした空気。わたしは高校時代にアマチュア無線部に入っていたが、その空気にも似ているような気がする。これは的確な言葉で説明できない。なんだろう、このホワーンとゆるい一種独特な空気は。
その4 肥満
やはり会場をうろついている人も、ブースで売っている人も、総じて肥満体型が多かった。家から外に出ないでマンガばっかり読み/描きしていると、運動不足になるのだろう。ジムですこし努力をすればナイスバディ/イケメンになれそうな素材の持ち主が、おやつを頬張りながら一心不乱にマンガを読む姿を見せつけられると、もったいないなあと思ってしまう。だけど、それは彼ら/彼女らからすれば「大きなお世話」。わたしだって、彼ら/彼女の目からみれば別の意味で「もったいない」存在かもしれないのだから。
・・・・・・・・以上、今さら何を寝ぼけたことを、と叱られそうなことばかりを書いてしまいました。「コミケに行こう!」のウェブサイトの冒頭に「インターネットが普及してきても、紙に刷られた本の価値は変わることがありません」と謳われていて、おお、彼ら/彼女らも同じ思いを抱いていたのかという思いを抱きました。できればコミケに関する社会学系の論文があれば読んでみたい。準備不足ということもあり、まだまだ、わたし自身がコミケを十分受け止め切れていないんですよ。でも、まとまったノンフィクションを読みたいと思う前に、論文を読みたいと思えるようになったのは、私にとって大きな変化です。
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