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2005年1月23日 (日)

『虹色のトロツキー』の事実と虚構

trotskii昨年末になってようやく安彦良和『虹色のトロツキー』(中公文庫,全8巻,2000)を読んだことを記しておきたい。この作品は、満州を舞台にした史実を織り交ぜた長編劇画である。板垣征四郎、石原莞爾、東條英機、川島芳子、甘粕正彦、安江仙弘…… 実在の人物がテンコ盛りで登場する。おかげで、どの部分が安彦氏の取材に基づいた「事実」で、どの部分が「既出の事実」なのか、歴史に疎いものには確信が持てないところもあったが、ワクワクしながら読めた。

主人公は日本人の父とモンゴル人の母をもつ青年ウンボルト。大学生になったり、馬賊になったり、モンゴル軍人になったり・・・・、父の幻を追いながら翻弄され続け、最後にノモンハン事件で重傷を負って消息を絶つ――。しかし、主人公の息子とおぼしき青年が東京・秋葉原で安彦氏と出会う場面が最後の最後に描かれていて、「なーんだ、モデルがあったのか」と思い知らされる。ホンマ(事実)とウソ(虚構)の切り分けをしてほしいというのが正直な実感だ。

「満州国」の人材育成のためにつくった建大(満州建国大学)の学生たちが(日本では発禁の)マルキシズムの書物を自由に読んでいたことや、満州にいたロシア系ユダヤ人を保護しようという計画があったことは事実のようだ。しかし、石原莞爾が建大にレフ・トロツキーやマハトマ・ガンジーを招聘しようとしていたというのは本当なんだろうか。ウソだよね、だぶん。

ちなみに、この劇画について、松岡正剛氏が「千夜千冊」サイトで絶賛しているのが意外だった。

■関連サイト
・安彦良和『虹色のトロツキー』中公文庫,全8巻,2000 (bk1amazon
・松岡正剛の千夜千冊「虹色のトロツキー
・はてなダイヤリー「虹色のトロツキー
・「やねしん」のさろん・本だな「虹色のトロツキー」
・新イエローピープル「虹色のトロツキー」
・NHK BSマンガ夜話「虹色のトロツキー」関連BBS
・フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「満州」「レフ・トロツキー」「安彦良和

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