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2005年2月 4日 (金)

主体と目線 - カナロコの場合

神奈川新聞が2月1日にウェブサイトをリニューアルさせた。従前は「神奈川新聞WEB」というタイトルで、地ダネを主体としたオーソドックスなページだったが、会員制コミュニティサイト「カナロコ」という名前に生まれ変わった。URLも変えたのだから、デザインを一新させたというようような生やさしいものではない。住み慣れた家を出て、別の地番に新築一戸建てを作っているようなものだろう。ブログを積極利用していることと、コミュニティサイトであるという点が新聞社としてはスゴイと言われている。だけど・・・

新聞社による会員制サイトとしては、河北新報朝日新聞のasParaがすでに導入している。ブログの導入では夕刊フジがある。そうした先行事例と比べて、どこがどう違うのか、すでに多くのブログでいくつも語られていると思うので、多くは書かない。ただ、これだけは備忘録として書いておきたい。それは主体と目線である。

ページを見れば、カナロコを運営している主体は編集部であることがすぐにわかる。わたしには、これが画期的に思えた。

民間企業のサイトはその企業の顔であり、看板だ。いまではさすがに減ってきたと思うが、90年代半ばの企業ページが次々に開設されたころ、多くの企業は社長ページを作り、「当社は消費者のみなさまの安全で快適な生活のため云々・・・世界に羽ばたく21世紀企業であり云々・・・・」というような挨拶文が、顔写真とともに掲載された。会社のパンフレットから切り抜いたような社長ページは(更新されることもないので)すぐに干涸らびてゴミページになった。この点、ライブドアの社長日記は、堀江社長のキャラと企業のカラーがよく出ていて大成功したといえる。やはり企業サイトの主体は経営者なのだ。

でも、カナロコの場合は、社長でも編集局長でも常務でも専務でもない。編集部・スタッフブログを読むと、一人ひとりの編集部員であることが分かる。そして彼ら/彼女らの息づかいが聞こえてくる。

もうひとつは、編集部ブログの文体である。文体について2004年夏のエントリーですこし生意気を書いたが、一言でいえは読者に向けた目線だと思う。この目線が低い。2005/02/01 0:19:38にdondonさんが書かれたエントリー「新装開店、ご感想は」の一部を以下に引用させていただく。

現在、このニュースでは「コメント」「トラックバック」の機能は閉じています。「お試し版」として検索、カテゴリーなどの機能に訪問者になじんでもらうのがひとつの狙いです。もうひとつ、本音を明かせば、ネットの世界で話題になる「荒らし」や「煽り」があったらどうしようとおびえたからでもあります。
 ニュースを会員制コンテンツにしてから、「コメント」機能を生かします。
 新聞社って臆病なんです。

「新聞社って臆病なんです」というフレーズに、わたしには釘付けになった。です・ます調で続く説明調の文章に、いきなり「・・・なんです」という会話表現を織り交ぜるテクニックは、記事しか書いたことがない記者にはできない芸当だと思う。まるで、公的空間のアナウンスではなく、私的空間における発話なんです。
(わたしは記者さんブログの文体がかねがね気になっていた。すべてとは言わないが、多くの記者さんはアプリオリに読者を啓蒙・指導する立ち位置にいて、読者には想像もできないようなすごい経験をしていて、言論表現の自由のために日々闘っていたりする。でも、ちょっと批判されると激昂したりオロオロしたり・・・・文体はコワモテなのに根性なしのヘタレだったりする)

以下に引用するのは、アクセス困難をアナウンスするdondonさんがの2日目(2005/02/02 11:29:04)のエントリー「中間報告させていただきます」の一部だ。

 皆さんが、この混乱ぶりを温かい目で見守っていただいていることに感激しています。さまざまなブログにアップされた投稿やコメント、『カナロコ』のスタッフブログに寄せられたコメントを昨夜、確認作業をしていたOマネジャー(女性です)はパソコンに向かいながら、涙を流していました。本当にありがとうございます。
 臆病に始めたことを皆さんが支持していただいたことで、少なくとも方向は間違ってはいなかったと実感し始めています。
大学院のゼミで半年にわたってフェミニズムやジェンダーに関する専門論文を読んできた経験からすると、わざわざ「女性です」と記したことを問いたくなるが、それはひとまず脇へ置いて、Oマネジャーが涙を流して感動していたことに、dondonさんご自身が感動しながら書いていることが伝わってきて、わたしも感動した。

いくぶん少し長い備忘録になってしまったが、わたしとしてはカナロコの試みについて、「新聞社によるブログ本格導入」とか「新聞社がコミュニティサイトに参入」というような受け止め方をするだけでは不十分だと思う。上部構造をしっかり見つめてみたいと思う。

最後に、カナロコ編集部スタッフさま、回線がパンクするほどの盛況のようで、まずは順調な滑り出し、おめでとうございます。心より応援しています。

■関連サイト
・カナロコ http://www.kanaloco.jp/
・神奈川新聞WEBの旧URL http://www.kanagawa-np.co.jp/
・Googleで 2005年1月25日 03:31:43 GMTに保存された「神奈川新聞Webってどーよ?」http://www.kanagawa-np.co.jp/toppage/doyo/answer.html のキャッシュ
■参考サイト
・藤沢生活::ニュース キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!「神奈川新聞がブログを始めた」 2005-02-01 16:30
・ネットは新聞を殺すのかblog「神奈川新聞がブログニュースサイト構築!」 2005-02-01 09:00
・ネットは新聞を殺すのかblog「神奈川新聞に対する期待」2005-02-02 16:24
・ガ島通信「『カナロコ』住民になってみた」2005-02-01 22:37
・猫手企画@新聞屋「神奈川新聞がコミュニティーサイトを立ち上げ」2005-02-01 12:33
・[muse-A-muse]「神奈川新聞がブログ始めたみたい」2005-02-01 17:53:50
・愛と妄想の日々。「神奈川新聞がコミュニティサイトをスタート。」2005-02-01 19:51

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コメント

 神奈川新聞さんの取り組みに拍手を送るものです。全体的に評価するにはしばらく時間が必要ですが「時代を作る」ものになる可能性がありますね。

 そうした立場を前提にしながらも、一点だけやはり気になることがあります。報道機関として、今後ネット社会にどうリーチし、社会貢献なり、ビジネスなりの分野で成果を出すために「ニュース」をどう位置け付けたらいいのか、という点です。

 「カナロコ」のように実名、実住所等詳細な属性情報を要求するコミュニティー形成に新聞社がネットで取り組んだ例は、PC通信以来、数多くあります。新聞社が各地域で果たしてきた役割に相当するぐらいのコミュニティーはそれなりに作れてきたと思います。しかし、それらはついにネット報道モデル、収益モデルになりませんでした。苦戦してきました。その点が議論の出発点の一つです。

 一方、弊社が2003年秋以来、ニュース閲覧に登録制を実施してきた経験によると、新聞社のニュースがネットで有する「吸引力」は、予想をはるかに超えるものでした。少なくとも現時点で弊社が実名や実住所を要求してコミュニティー形成に走れば、恐らくニュースニーズの半分を逃してしまう結果になりそうです。
 そんなわけで弊社としては「ニュースサービス」と「コミュニティーサービス」を一緒にしてしまうのではなく、あたかも楕円が持つ二つの中心点のように形成する方向を考えたいと思っています。

 「カナコロ」が導入したブログのような新しい仕掛けによって、実名、実住所リクエスト型のコミュニティーから新たなニュースニーズを開発できるようなストーリーが生まれることを期待しています。トラックバック、コメントなど、ブログ特有のリンク機能をフルに活用し、ネット社会に打って出れば、「神奈川新聞」のニュースに対する新規のニーズを開拓することにつながるはずです。ご指摘のように新聞社の編集力のすべてを結集することが必要になります。

投稿: schmidt | 2005年2月 4日 (金) 07時20分

 schmidtさま、どこか浮かれていた気持ちを引き締めていただき、ありがとうございました。わたしの問題意識もschmidtさんと大きな差はないように思っています。

 たしかにカナロコはどこをどのように切っても、神奈川新聞社というニュースで勝負する報道機関が運営するサイト。楽天やライブドアといった企業とは違う何かが期待されていると考えるのが自然ですよね。

 米国のAmerican Press Instituteが運営する Cyber Journalist.Net というブログがあるのですが、ずいぶん前に "Journalism = Community = Democracy" という記事が載っていました(すでにご承知だったらごめんなさい)。こういう理念(上部構造)とともに、ビジネスとしてのニュース活動(下部構造)を見つめる必要があるのではないかというのが私の思いです。4月以降にどのようなビジネスモデルが提示されるのか楽しみですね。

投稿: 畑仲哲雄 | 2005年2月 4日 (金) 23時52分

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