編集部の電話番号は非公開
NTT電話帳(ハローページ)への掲載率が低下していることは容易に想像がつく。社会人になって以来、わたしも一度も掲載したことがない。氏名、住所、電話番号などの情報を不特定多数の人にさらす必要を感じなかった(あの分厚い本を各戸に配る神経も理解できなかった)。わたしと同じような考えの人が増えれば、電話帳の価値は低下する。それは不便なだよなあという思いもあるが、それはそれで仕方がない。個人情報は守られるべきだ。だがしかし、企業が電話帳(タウンページ)に掲載しない例も増えていると知り、すこし愕然とした。その一例が、同居人がスタッフとして働いている編集部である。
きのう、携帯電話を家に忘れた同居人に連絡をとろうとして、職場の電話番号を調べたところ、なんと載っていなかった。編集部の電話番号はヒ・ミ・ツなのだ。遅い夕食を一緒にとりながら、そのことを尋ねた。同居人曰く、マスメディア(とくに出版社)のなかには業務妨害やいたずらの被害に遭わないよう、まずファクス番号を公開しなくなり、それが電話番号にも広がったのだという。マスメディアがリスク軽減のために電話番号を公開しないというのは、ここまで来たかと思った。たしかに変な電話はかかってこなくなるなり、業務は効率的になる。だけど、思いがけない情報が飛び込んできたりすばらしい出会いの可能性をも遮断することにもなる。それでいいのか?
すべての個人・企業が、リスク軽減のため電話帳に番号を載せない社会と、載せる社会。どちらが豊かな社会だろう。電話帳がパットナムのいうソーシャル・キャピタルに含まれるような気が(なんとなく)する。ジェイン・ジェイコブズがいうところの、見知らぬ人が出会いうる街路の「歩道」や、サンスティーン本にあった「パブリック・フォーラム」とも(きっと)無縁ではないだろう。
こういう現象について、ルーマン『信頼』はどのように言っているのだろう(読まないといけない!)。大学院はいよいよ冬学期。サラリーマンと学生の二足のわらじの再開である。先生、みなさん、よろしくお願いします。
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コメント
どうも。私の言ったことは、10年くらい前から個人的に感じていたことにすぎないので、その辺は差し引いて読んでくださいね、みなさま。雑な話し方をしてごめんなさい、同居人さま。
あと、ファックス番号と電話番号の意味合いは若干ちがうかなーと感じています。電話はけっこう残っているので、今回のケースは某企業の性格が大きいかも。業種によってもちがうでしょうから。
投稿: 同居人 | 2005年9月29日 (木) 08時59分