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2007年1月18日 (木)

社会人にとっての・・・

社会人が大学院に通うって一体どういうことだろう。働きながら調査をしたり、文献渉猟したりして、慣れない長文(論文もどき)を書く。それは少なからぬ負担である。研究なんてしていなければ、好きな小説を読みふけることができる。映画を見に行ける。ふらりと小旅行に出かけることも可能だ。何もせずにボーっとしていることも・・・ 人生には愉しみごとがいくつもあるのだ。でもわたしは、不慣れな研究のまねごとをしてきた。なぜだろう。純粋な知への欲求? 現実逃避? 暇潰し? ・・・どれも違う。わたしにとっての大学院は、やはり社会人生活をしてきて眼前に横たわる問題群とガチンコ勝負するための知の筋力を付けるジムであったように思う。

この三年間、多くの人に励ましてもらった。「そういう役目をする人間が必要なんだ」「いろんなものを持ち帰ってくれ」と言ってくれた人もいる。だが、いやな言葉も少なからずいただいた。「そうまでして肩書きがほしいの?」「ハクを付けのためだろ」「いいご身分だな(仕事もしないで)」「トーダイに入る方法を教えてよ(メールで)」「どーせ“お客さん”扱いなんでしょ」「ジャーナリズムって研究するもんじゃないんだよ」「おれも時間さえあれば大論文を書くんだけど、仕事が忙しいから」「新聞の学問なんて役立たずなのさ」・・・・ こういう言葉を聞かされるたびに、げんなりさせられた。

いくつもの困難があり、難問がある。それらのなかには“現場”の経験や知恵だけではどうすることもできないものもある。田中宇はハーバード大学を「知のディズニーランド」と表現したが、わたしにとっての東京大学大学院は「筋トレ」のジムだった。筋トレはジムに通わなくても--自宅で一人ででも--できる。だけど、ジムにはしっかりした方法を教えてくれたり、独り善がりになる危険を回避してくれるトレーナーがいる。それが教員や先輩たちである。良いトレーナーと出会えば、学問は俄然面白くなる。

大学院から「もう出て行ってよ」と言われても、トレーニングは継続したいと思う。トレーニングをするということは、好きな小説を読んだり、映画を見たり、旅行に出かけたりする時間を「犠牲」にすることではなく、豊かにすることだし、問題群と闘うためには、まだまだ筋肉が必要だと分かった。

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コメント

バカ話要員が登場しなかった orz

投稿: 仲間由紀恵@3年計画 | 2007年1月19日 (金) 11時42分

仲間先輩、この3年間、本当にありがとうございました。おかげさまで修論提出までこぎつけることができました。またみんなでメシ食おうな!

投稿: 畑仲哲雄 | 2007年1月19日 (金) 12時34分

三年間、お疲れさまでした!
>社会人が大学院に通うって一体どういうことだろう。
・・・私の場合、第一回目の大学院は専業主婦が社会復帰するステップとなったわけですが在学中「主婦の為のカルチャーセンターじゃないのよ」と言われた時は「女の敵は女」と実感(笑)。

今回は研究生活の中で、どうしても自分の思うような論文がかけないそのジレンマを解消したくて学際的に研究できるこの学校に入りました。入学して9ヶ月、若い優秀な頭脳に揉まれさらに、実践的な学問世界で活躍されている先生に鍛えられる(苦しみと)充実感を味わっています。

という訳で、私はハタさんよりゆるやかなくくりの「社会人」ですが仕事、家庭、犬の世話とそれなりに大変です。でも学問のスキルアップ、精神のブラッシュアップに満足しています。(長くなってスミマセン)

投稿: Ami | 2007年1月19日 (金) 22時10分

Amiさん、こんばんは(^^)
「仕事、家庭、犬の世話」たいへんですね。ぼく自身べつに厳しい環境にいる社会人ではないです。ちょっと大げさに書いちゃった(苦)。
 社会人というくくりではなく、大学院にオトナが増えるのは、悪いことではないような気がします。先生たちはやりにくいかもしれないけれど。

投稿: 畑仲哲雄 | 2007年1月19日 (金) 23時47分

>先生たちはやりにくいかもしれないけれど
・・・そうですね~。(その状況は、私も一応大学で教えているのでよ~く判ります)先生方の度量が試されるっていうか・・・でも私は居心地良いので、先生方は大物揃いだと思っています。

投稿: Ami | 2007年1月20日 (土) 11時24分

Amiさん、なんだ、大学の先生をされてるんですか! おたかさんと一緒ですね。そりゃ先生たちも怖いでしょうね(笑)。

投稿: 畑仲哲雄 | 2007年1月20日 (土) 14時07分

非常勤で、しかも専門は違いますから、さほど怖くはないと思いマス(笑)。
おたかさんってハタさんのマイミクさんですか?よろしくお願いします。

投稿: Ami | 2007年1月20日 (土) 21時44分

蛇足ですが、私の専門は1月14日の日記「学問に身を奉げて―KT先生」をご一読いただくと、わかっていただけるかと。

投稿: Ami | 2007年1月20日 (土) 21時52分

Amiさん、こんばんは。
 ご専門を知り驚きました。その道のプロが修士課程で研究しているという学環って、やっぱりすごいですね。先生たちも大変ですよ。
 おたかさんはマイミクです。一緒にルーマン先生の本を読んだ戦友です。でもご本人を前に「おたかさーん!」などと気安く呼んだことはありません(汗)

投稿: 畑仲哲雄 | 2007年1月21日 (日) 17時25分

ご訪問いただいたんですね。有難うございます。
社会学そしてその他の分野を学際的に基礎から学ぶことができ、本当に良かったと思ってます。ずっと実証的に研究してきたので、理論や概念をどう取り扱ったらいいか、まだまだ模索中です。だからご指導に当って下さる先生方は違った意味で「大変」だと思います(笑)

ところで、ずーっと以前お話していた「犬」とメディア、そして「犬」をとりまく「公共圏」について、最近また少し考えはじめましたので、機会があればご教授いただければ幸いです。

投稿: Ami | 2007年1月21日 (日) 20時08分

Amiさん、メディアとしての「犬」、そして「公共圏」ですか! うろ覚えで恐縮ですが、公共圏の要件として花田先生は〈言説の公開制〉や〈他者との共同性〉などを挙げておられました。いま流行りのドッグランって公共圏かもしれませんね(笑) 余談ですが、犬を連れて近所を歩くと、犬を媒介とした社会関係が構築されていくのを実感します。

投稿: 畑仲哲雄 | 2007年1月22日 (月) 00時05分

 ここにも足跡をば。
こころない新聞関係者の声は、いかにもありそうであり、本当に頭にきます。直接言われたりした日にゃ・・・省略
 犬と公共圏のお話は興味深げです。
近隣の大きな公園では、犬の散歩のさせ方が問題になっています。私は犬やネコ、そのほかペットは人間同様の権利主体にもなりえると考えているので、できる限り制限的でない生活をとおもうのです。
 公園での扱いは 行政といういわゆる公共と市民社会におけるペットの位置と共同性など、考えたい視点があったりします。
 

投稿: JOHNY | 2007年1月22日 (月) 03時32分

ハタさん&ご友人?のJOHNYさん
「犬メディア論」そして「犬公共圏」ご興味を持っていただいて嬉しいです。昨夏興味を持った時点で、とりあえずハーバーマスと花田先生の本を購入。今積読(笑&汗)状態です。
>犬や猫そのものが権利主体
同感です。それらの認識は東京都の動物愛護条例にも表れていますよね。でも実は、私が住んでいる杉並区でドッグランなど「犬」の問題を考える時、個人的には「犬を飼っている人間」を主眼にしたアプローチでなければ行政は動かないと考えています。つまり「お犬様」のためにはお金は使えないからです。・・・・この話をし始めると熱くなって、中立ではなくなり「犬メディア論」や「犬公共圏」を語る資格をなくすので(笑)、今日はこの辺で。

投稿: Ami | 2007年1月23日 (火) 23時32分

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