男を壊すのは人事政策?
東京都の女性相談窓口に勤務していた金子さんは、「セクハラ男」たちの虚言や妄言がどのように発せられたのかについて、淡々と記述するよう努めているように見える。男たちは平然と嘘をつき、勝手な妄想をふくらませ、金子さんに「同じ男として分かるでしょう」とすり寄り、追いつめられれば逃げ回って部下まかせにする。そんな「セクハラ男」たちの群像がつづられている。
じっさいに面談に訪れた何人もの男たちを目の当たりにした金子さんは、「盗っ人猛々しいとはこのことだ」(p.116)などと素直に心情を吐露する記述も散見される。そうした言葉に、セクハラ男を憎み、自らは決してセクハラしないであろう男性の本音がぼんやり見える。くっきりではない。おぼろげながら、である。
筆者の金子さん自身、多数の「セクハラ男」たちを見て、自身の内面がどのように変化していったのか(あるいは、変わらなかったのか)などついては、よく分からない。半透明な存在なのだ。新書の企画からすれば、金子さんの個人的な思いは不要だったのかもしれない。ただ、セクハラ男たちと次々と面談をするという仕事を通して、さぞや徒労感、脱力感をお感じになられたであろうと心中をお察し申し上げる。そうした徒労感や脱力感を追体験させていただいた。そして金子さんの〈方法〉がすこし気になりました(それは修論後のわたしの内的変化であり、じぶん自身を反省した結果なのです)。
■関連図書
伊藤公雄『<男らしさ>のゆくえ:男性文化の文化社会学』新潮社、1993年
小浜逸郎『「男」という不安』PHP研究所、2001年
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