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2007年9月30日 (日)

数ヶ月間存在した同盟

Photo同居人への誕生日祝いに、ユンカーマン監督のDVDを贈るという感覚は、たしかにどうにかしている。だが、この作品はわたし自身も観ておきたかったのだ。ちなみに、わたしは憲法についてだれかと話す機会はほとんどない。職場の同僚やご近所、気のおけない友だちとの語らいの中で憲法が登場することはほとんどない。なぜだろう。

ジャン・ユンカーマン監督『映画 日本国憲法』(2005、シグロ)

憲法を話題するだけで「護憲なの?改憲論者なの?」などという踏み絵を迫られたり、「ここで政治の話かよ、ちょっとは空気よめよ」みたいな感じになりがちなのは、なにもわたしに限ったことではないだろう。いったいいつから憲法のタブー化が進んできたのだろう。ふしぎだ。

その一方で、憲法を変えようという動きは活発に見える。2004年には日本最大の発行部数を誇る読売新聞社が改正試案を発表した。いわゆる「憲法改正読売試案」である。また、ベストセラー『美しい国』の著者でもある安倍晋三代議士は「戦後レジームからの脱却」を掲げ、自民党総裁&内閣総理大臣時代に、憲法改正に向けた活動を果敢に展開した。その成果は、2007年5月14日に参議院本会議で自民・公明が強行採決して成立した国民投票法である。憲法改正には国民投票が必要なのだが、なぜかくも「改正」への動きが活発なのか、よくわからない。

Photo_2さて、ユンカーマンの『映画 日本国憲法』だが、面白い視点がいくつもあった。この映画はインタビューを中心に構成されていて、『敗北を抱きしめて』のジョン・ダワーや『ベアテの贈り物』のベアテ・シロタ・ゴードン、日高六郎、ノーム・チョムスキーなど12人が登場する。なかでも、政治学者で元津田塾大学教授のC・ダグラス・ラミスの見解は面白い。

そもそも優れた憲法は民衆が政府に強制したものです。日本国憲法を政府に押しつけたのは、数ヶ月の間だけ存在した一種の同盟でした。占領軍と日本国民による短期同盟です。政府の権力を制限するこの憲法を彼らが日本政府にのませたのです。政府の側は権限を制約されたと今でも感じているでしょう。

ラミスによると、終戦直後の日本民衆のなかには、政府縛るべし、再軍備防ぐべし、という声があり、それは決して小さくなかった。そうした声と、日本の旧体制を骨抜きにすべしというマッカーサーらの意思が偶然シンクロした。これが「数ヶ月間存在した同盟」ということらしい。宮沢俊義の「八月革命説」なみに意外な主張だが、沖縄駐留の海兵隊員を除隊して日本でアカデミズムの世界に飛び込み、そのまま日本に居着いて政治学者になってしまったという経歴の持ち主らしい主張だなあと思う。

ラミスを好意的に評価すると「ははーん、コイツもサヨだな」と指さす人がいるかも知れないが、そういうさもしい議論はこの際どうでもいい。アカデミズムとジャーナリズムと社会運動は分かちがたいのだから。

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