日式スパゲティの原点
かつて私の語彙に「パスタ」などという言葉はなかった。子供時分のスパゲティといえば、粉末ソースの「マ・マースパゲティ」しか指さなかった。それ単体で食べることはあまりなく、多くの場合つけ合わせであった。大学に通うようになり、生意気にも純喫茶でスパゲティを注文する機会が増えた。このときのスパゲティが赤いナポリタン(大阪では「イタリアン」と呼んでいた)。具には、ビートルズの髪型の原形であるマッシュルームが入っていて、ちょっとオシャレだった。
だが、いつしかわたしも「pasta」などという言葉を使うようになり、「アルデンテでお願いします」だの、「この店のカッペリーニ、うまいよ」だの、「イタリアではペペロンチーノは素うどんみたいなものでね、レストランでは食べないんだ」だの、トラック三週遅れのプチ・クリスタルなオトナになっていた。新橋駅前ビル1号館1階の「カフェテラス ポンヌフ」の前を通り過ぎたとき、独特のソースのにおいをかいだ瞬間、「アマトリチャーナでも食うか」などと考えていた、内なる転びバテレン的性向が恥ずかしくなったのです。
いまも下町や場末の喫茶店では、ナポリタンはミートソースとともに定番メニューだが、超高層ビル群の周辺でたいへん貴重で、こういう店が繁盛していることに、どこか励まされた。ネットで調べていると、ナポリタンを食いまくっている人のブログ「ナポリタン×ナポリタン」を発見。「no more aldente !」というキャッチコピーに目を奪われました。
■関連サイト
・ナポリタン×ナポリタン--喫茶店・洋食屋からコンビニまで。私、食べました。
・カフェテラス ポンヌフ(新橋)〜嗚呼、喫茶店のナポリタン・スパゲティ - ライフスタイル - nikkei BPnet
・ナポリタン - Wikipedia
・イタリアンスパゲッティ - Wikipedia
ちなみに、「カフェテラス」は、自由国民社「外来語年鑑」[2003年〕によると、喫茶店などで、路上など屋外に張り出して客席を設けたところ、の意。ようするに、歩道に面した野天の喫茶店、街頭喫茶店などを指すわけで、雑居ビルの1階にある「カフェテラス ポンヌフ」はカフェテラスではない。ただし、「ポンヌフ」は、研究社『リーダーズ英和辞典』(第2版)によると、「①パリ Cite 島の西端 Seine 川にかかる橋; ②「新橋」の意; ③ Henry 3 世によって 1578 年最初の礎石が置かれ, 1606 年完成したパリで最初の石の橋》という。サラリーマンの街・新橋は「ポンヌフ」なのだ。
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コメント
新橋駅銀座口にある立ち食い蕎麦も店名が「ポン・ヌフ」ですなぁ。
以前『ポン・ヌフの恋人』というフランス映画がありまして、その映画の公開後に気付き、1人ふふふと内心笑った覚えがあります。
投稿: 道草 | 2007年10月14日 (日) 13時58分