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2007年11月23日 (金)

ナポレオンはスターリン

Animalfarm「事実」としてつづられたエッセーやコラムには重要な真実が隠されたり捨象されたりしているが、虚構と銘打たれた「小説」には本当のことが書かれていることが多い--とは、タレント本の書評家でインタビューアーでもある吉田豪さんの名言である。これは芸能人の世界に限ったことではなく一般論としても十分通じる。嘘話ですというエクスキューズができるからこそ本当のことが書けるものだし、うそ偽りはありませんと約束すると書けないことだらけになるというパラドックスが生まれる。オーウェルの『動物農場』を読んでいて、そんなことを思い出した。

ジョージ・オーウェル『動物農場』高畠文夫訳 、角川文庫、1995(原題:Animal Farm, 1946)

物語は、農園主を放逐した動物たちが、夢の国づくりをするというもので、子供向け作品として読んだことがある人は少なくないだろう。だが、大人向けの作品としては読めば、この作品がロシア革命後のソ連を意味していることに気づく。農場の主役は人間から動物に移行し、「荘園農場」という名前は「動物農園」と改められる。

革命を提唱したのはヤギで、ヤギなき後に指導的役割に立ったのはブタ。当初、ブタは2匹いて、結果的に1匹が放逐されるのであるが、ヤギはレーニンを、2匹のブタはスターリンとトロツキーを指していることが分かる。スターリン役のブタは作中で「ナポレオン」という名前で登場する。働き者の馬や猫やカラスたちにも、モデルがあるはずだ。笑ったりゲンナリしたりしながら楽しく通読したが、共産主義革命の理想と現実をここまで冷徹に捉えていたオーウェルの洞察力に舌を巻くほかない。

これが実名だらけの評論や論説で書かれていたら、こじんまりしたアジテーションにしかならなかっただろう。ジョナサン・スゥイフトの『ガリバー旅行記』も個別具体的なモデルがあるのだろう。なければあんなもの書けない。小説家たちの、なんとジャーナリスティックなことか。そういえば、むかしの日本のジャーナリストたちも小説をよく書いていたなあ。いったいいつからフィクション/ノンフィクションの二項対立が生まれたのだろう。

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コメント

小説家転向の予感

投稿: 仲間由紀恵@6年計画 | 2007年11月25日 (日) 11時30分

>仲間先輩
 予感じゃなくて悪寒ですよ、きっと。

投稿: 畑仲哲雄 | 2007年11月26日 (月) 01時03分

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