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2007年12月 9日 (日)

社会人と大学院(2)

わたしは大学院がどのようなところなのか、さっぱり知らずに試験を受けたわけであるが、わたしと同じく働きながら大学院に通ってみたいなあと考えている人のために、極私的なノウハウ(おそまつな失敗談を含む)を記しておこうと思う。なぜなら、大学院で研究をする社会人が増えることは、けっして悪くないと思うからだ。

第一に、大学院における学生のミッションは論文を書くことだと認識しておくこと。修士課程なら修士論文(M論)。博士課程なら博士論文(D論)。今だから言うが、入学時のわたしは、論文など書くつもりは毛頭なかった。すこし難易度の高いカルチャーセンターに通うような気持ちで、気に入ったゼミや講義にだけ出て、さっさと退学するつもりでいた。しっかりした研究が続けられるとは思っていなかったし、アカデミズムの世界をすこしナメていた。いや、腰が引けていたのかもしれない。結果としてわたしは学問の面白さに引きずり込まれ、夢中になり、なかば意地になって論文を書き、運良く博士課程への進学を許された(強運でした、ホンマに)。これから大学院を受けようと考えている人は、最初から論文を書くつもりでいるほうがいい。いいに決まっている。

第二に、大学院に入学後、指導教員をすぐに決めなければいけないということをわきまえておくことだ。そういう基本的なことを知らなかったわたしは、入学直後に学務係から「指導教員届」を出せと言われて当惑した。「ここはひとつ、一年目は指導教員なしでどうでしょう」と申し出たが、認められなかった。実をいえば、わたしは入学前から指導教員となってくれたH先生の著書に目を通し、幅の広さと奥の深さに圧倒されていた。できれば指導を仰ぎたいと思っていた。でも人間、目移りはするもので、いろんな先生の研究も知りたかったのだが、「○日までに提出しないと履修登録させぬ」と通告され、大急ぎでH研究室のドアをノックした。むろん正解だった。進学を考えている人は、事前に「この人だ!」という教員に会って、できれば事前に相談してみるべきだ。

第三に、前項とも関連するが、研究テーマを決めておくことだ。テーマをうまく言語化できなければ、どんな問題意識を持っているのかを、じぶんの言葉でいいから記しておくこと。たんに「歴史に興味がある」とか「手先が器用だから」とか「ちょっと賢くなりたいだけ」とか「生涯学習なんだよね」というのでは、話にならない。かくいうわたしは、面接時に「なんのために大学院を受けたのですか」と訊ねられ「はい、生涯学習のためです」と答えてしまったが、それでも入学を許されたのはマグレとしか言いようがない。「研究者になるつもりはありますか?」という問いに対して、「まさか、まさか」と笑って答えた。いま振り返ると、冷や汗ものである。

第四に、事前に試験慣れしておくこと。実社会でいくらビジネスの経験を積んでいても、限られた時間にセカセカ鉛筆を走らせるテストに強くなっているとは限らない。受験生にとってのテストは、歓楽街における極道の喧嘩や暴走青年たちのカマ切りと同じで、慣れていないとハッタリも利かない。ヘタをすればケガもする。わたしは同居人のアドバイスもあって、TOEFLを何度か受けてみた。だが、このごろのTOEFLはCBT(コンピューター試験)になっていて、鉛筆で小論文を書く院試には不向きである。字の汚いわたしはペン習字のテキストにもお世話になったことを告白しておく。ペンをキーボードに持ち替えて何年にもなると、汚い字はいっそう汚くなっているし、そもそも漢字をわすれている。これって意外と怖いです。

第五に、ふだんから勉強をしておくこと。専門領域の小難しい論文を一人で読みこなすことは難しいかも知れないけど、じぶんが研究したいと思っている領域の著名な研究者の名前と著作くらいは知っておくべきだ。学問に興味のない人に、大学院は何ももたらしてくれないと思う。まあ、世の中には、学問はきらいだけど、学位がほしくてたまらないオッサンと、教育には興味がないがお金は好きという困った学者がいたりして、ときおり事件になる。あと、定年退職後に大学教員になった元マスコミ関係者の中には、学問的にはどうかな、という人もいるので注意が必要だ(むろん素晴らしい研究者に成長できた人もいる)。でも、やっぱり学問が好きじゃないと続かないんじゃないかな。

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