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2008年2月16日 (土)

世の中、費用対効果?

「極論を言っちゃえば、すべて世の中、費用対効果だ!みたいな価値観を、僕は持っているので」という若い人のセリフに触れ、少なからず当惑した。発言の一部分だけを抜き出すだけではなんのことかわからないと思うが、記事全文を読めば、まんざら露悪的に振る舞っているわけではないことが分かる。発言の主は「23歳男性。2007年に慶応大学を卒業し、広告会社に入社。細身で長身。大学時代から知り合いのBさんによると、『かなりモテる』そう」というAさん。発言の場は朝日新聞社の月刊『論座』3月号「当事者座談会-ポスト世代ですが、何か?」である。

「当事者座談会-ポスト世代ですが、何か?」 『論座』 朝日新聞社、2008年3月号、pp.190-203

座談会は鈴木謙介・国際大学 GLOCOM 研究員が司会。参加者は「ポスト・ロストジェネレーション」の4人。ちなみに「ポスト世代」とは、バブル崩壊後に社会にほうりだされたロストジェネレーションの後から世に出てきた世代を指す。『論座』では、2007年1月号に赤木智弘さんが書いた「『丸山眞男』をひっぱたきたい」を起点として、この問題を特集している。赤木さんがロスト世代を代表し、座談会に登場した4人がポスト世代を代表しているのかどうかは、さておく。

ポスト世代として参加した4人のうち2人が慶大卒のイケてる“エリート”で、残り2人がNGO職員とアルバイトで食べているという独立独歩の人たち。いずれも能動的でポテンシャリティの高い若者に思える。ただ、おやっ思ったのは、慶応卒の2人の世界観。他人様のが価値観を否定するつもりは毛頭ないのだけれど、社会や政治をあえて見ない、あえて距離を取ることで成立する世界観に当惑した。

鈴木から、アメリカ的な競争型の格差社会と、ヨーロッパ型の高福祉高負担型の社会のどちらがいいいと思うかと訊ねられた、もうひとりの慶応卒・Bさんは以下のように答えている。(ちなみにBさんは「23歳女性。07年に慶応大学を卒業し、Aさんとは別の広告会社に入社。トレンドを意識したファッションとメークで、とても華やかな雰囲気」と紹介されている)

わかんない。社会とか言われても「誰?」とか思っちゃうんだけど。何か問題がある、誰か困った人いる、という時、私は常に、自分はその問題の中のどこを解決するために何をするのか、を考えるべきだと思っているんです。だって問題って、まとめちゃうとわからなくなるじゃないですか。どんな問題も「社会が悪い」と言っちゃえば言えなくもないけど(後略)

続いて、Aさんが、アメリカ型の社会を「なんとなくいいかなと思います」と受けて、こう話す。

結局、どこに効用を見出すかということなんじゃないでしょうか。持っている価値観の軸はみんなバラバラで、社会問題に対しても、コミットしている個所が違うのかなとしか、僕は思っていないので。「こうあるべきだ」という話がパっと自分の感覚では理解できないんですよ。

この直後に、冒頭に記した「費用対効果」のセリフが登場する。そこには自分たちがいま生きる社会を支える〈正/不正〉〈善/不善〉などの普遍的な価値や、持てる者/持たざる者のどちらに自分が位置づけられるのかという自らの立ち位置は見いだせない。生まれ落ちた時期と場所、そして自分を育んでくれた親の資産の違いで、かくも世界は違って見えるのか。

しかし、あとからじっくり考えると、こうした2人の世界観は、突然ふってわいた「ポスト世代」特有のものではなく、じつは昔からあって、30代、40代、50代になっても、相変わらずAさんやBさんと同じ世界を生きている人たちは少なからずいる。・・・ロスト/ポストの二項対立的な世代論にはちょっと無理がないか?

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コメント

書くこと決まってるのに座談会するのがあくどい。

投稿: | 2008年2月17日 (日) 17時32分

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