上海の IPTV
上海の街角でマッサージ店に入った。足つぼ+全身モミモミという1時間余りのコース。中国では男性客に対しては女性スタッフが、女性客に対しては男性スタッフがサービスするのが普通らしい。脱衣場でパジャマに着替えて、という大げさなことはしない。コートやジャケットなどの上着と靴下を脱ぐだけで、あとは椅子に座って全面的におまかせ。室内には大型液晶テレビが置かれていて、スタッフがモミモミの合間にボタン操作をしていくつもの番組を見せてくれた。これがウワサのIPTVだった。
IPTVとは Internet Protocol Television の略で、xDSLなどのブロードバンドを利用してテレビ番組やデータ放送を送受信する仕組みのこと。テレビ受像器にセットトップボックス(STB)をつなぐだけで、デジタル・デバイドが頭を悩ますパソコン操作は必要ない。日本ではいくつもの理由で普及しなかったが、ヨーロッパではイタリアで普及しており、アジア太平洋地域でも広がっている。中国では上海の SMG (Shanghai Media Group) が2005年、中国初の IPTV 事業者の免許を取得した。
IPTVを利用するには1ヶ月100元が必要で、一般家庭ではすこし高いかもしれないが、SMGが放送するほとんどすべての番組をリアルタイムで見られるほか、過去3日間の番組を自在に呼び出したり、映画などのビデオ・オン・デマンド、天気や株価などのデータ放送、ハイビジョン放送がある。コンテンツはストリーミングのためHDDなどに蓄積できないそうだが、見逃した番組を後から呼び出せるだけでもうらやましい。
日本の家庭に普及しているHDD内蔵TVやHDDレコーダーには、二度と再生されない番組が膨大に死蔵されていると言われる。隣の芝生は青く見えるという諺があるが、IPTVの手軽さに魅力を感じた。ただし、SMG は上海の電波・電子メディアを独占していることを考えると、批判的に読み解くリテラシーは重要になる。いくら民営とはいえ、独占的なメディアであることには違いないのだから。
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コメント
ご無沙汰しています。書き出しから察して、「本場」上海のマッサージがよかったかどうか、知りたかったのですが。不真面目ですいません。長い間、ご無沙汰していながら、またまた勝手な提案ですが、たまには相互訪問をしましょうね。最近、会社のコラムで、マーケットイン(顧客の視点を大事にする立場、考え)とデジタル・ディバイドについて書きました。デジタル機器の「トリセツ」があまりにも分厚くなったことを、初老の一人として嘆いたものです。
投稿: 元京野菜 | 2008年3月24日 (月) 17時58分
>元京野菜さん
ごぶさたしています。相互訪問は望むところです。今後ともよろしくお願いします。
ただ一点だけ注文。元京野菜さんの映画評は(浜村淳さんに似て)ストーリーが分かってしまうのが、ちょっと怖いです。
投稿: 畑仲哲雄 | 2008年3月26日 (水) 12時43分