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2008年3月30日 (日)

完食! どぜう鍋

Dozeu_finish先日、生まれて初めて「どぜう鍋」を食べた。泥鰌料理といえば卵でとじた「柳川鍋」のほうが一般に知られているが、今回は江戸の庶民の流儀にのとって、まる鍋をいだくことにした。わたしが初どぜう体験の機会に恵まれたのは、神田生まれの先輩が、京の食通をもてなすにあたり、「おまえも付き合え」と呼び出されたためだ。こんな機会でもなければ、この江戸庶民の伝統料理をいただく機会もなかっただろう。江戸っ子の先輩と京の食通に大いなる感謝の意を表したい。ただ、いまだから告白するが、この日は朝からすこし気が重かった。

駒形どぜう http://www.dozeu.com/
江戸っ子ヒロ 「うまいよ!  ど・ぜ・う」 on 47NEWS | ニッポンのGOHAN
「どぜう鍋」:アクアクララ会員誌アクアクララスタイルのWebマガジン版

私が生まれ育った大阪には、見た目が悪いが味は絶品というものは少ないように思う。たとえばホルモン焼きのお肉にしても、焼く前は少しグロテスクだけど、焼けばおいしそうに見える。織田作之助の『夫婦善哉』には「どじょう汁」が登場するが、おつゆの具ならどうということはない。見た目が悪いが、覚悟して食べてみたら意外とうまかったものもある。わたしの場合はイナゴ、蜂の子、鮨のシャコなどがそうだ。だが今回は、どぜう鍋である。心理的なハードルはかなり高い。

駒形どぜうのどぜう鍋は、小ぶりの丸鍋に割り下を入れて泥鰌を煮込む。客の前に運ばれた泥鰌も、あらかじめ厨房で酒で煮込まれていて臭みはないそうだ。運ばれてきた泥鰌をネギやゴボウと一緒にさっと煮て、七味や山椒の風味でいただく。頭骨も背骨もついているが、江戸っ子の先輩によると、柔らかくてまったく気にならないという。

Dozeu_start_2「ほな、いただきま!」と箸を延ばしたものの、わたしは内心ビビっていた。小さめの泥鰌を多めのネギで隠すようにして小皿に移し、入念に唐辛子と山椒をふりかけ、ゆるゆると口に運ぶ。隣に座った京の食通も泥鰌は初めてだというが、このオッサン(失礼!)は「おお!こら、いけるで! うまいがな」と舌鼓。その声に背中を押されて、わたしも泥鰌を口の中にでロレロレロレロレしたあと、じんわり噛みしめてみた。

予想していた泥土の臭みはもちろん、骨のジャリジャリした食感もない。まるで白魚(しらうお)のように舌の上でとろけるではないか。ひと言でいうと、イケルのである。鍋を幾度かおかわりするうちに、わたしもすこし増長して、薬味なしでドジョウを食べても大丈夫になった。実をいうと10年以上も前、山谷を取材した帰りにカメラマンと柳川鍋を食べたことがある。このときの泥鰌はゴリゴリした骨の感覚と泥臭さが舌に残った。下ごしらえと素材選びが差を生むのだろう。

京からの食通は、当初から平然とした素振りをしていたが、「ぼくもな、怖かってんけどな、あんたがビビってるのを見て、安心してたんや」と笑ってくれた。江戸っ子も浪花っ子もどこか単純だけど、京都の食通というのは侮れない。この食通氏は、鮒鮨が大好物というくらいだから、関西でもただ者ではないのだけど。

機会があれば、ゼミの留学生たちを連れていきたい。

泥鰌まめ知識:
▽日本人は古くからドジョウを食べてきたが、「美味」と称されるようになったのは江戸時代以降。泥鰌の「なれ鮨」は狂言の『末広がり』にも出てくる。西鶴の『好色一代男』では、強精効果がある魚として描かれている。
▽泥鰌といえば、日本各地の田んぼにウヨウヨしているものだが、稲作に農薬が使われるようになり、天然物がほとんどいなくなった。当然、天然物より養殖のほうが食べやすいそうだ。江戸時代の人々が食べていた泥鰌と今日の泥鰌とでは、風味や味がずいぶん違うだろう。
▽泥鰌はコイ目ドジョウ科の淡水魚。アメリカ,カナダでは Oriental weatherfish 。嵐が近づくとバシャバシャ騒ぐため「東洋のお天気魚」と命名されたという逸話がある。一方、イギリスでは loach と呼ばれている。 loach という単語には、あほ、脳たりん、すかたん、ぼけ、うつけもの、かす、間抜け、ぬけ作、愚かもの、能なし、あんぽんたん・・・・などの意味がある。調子に乗って書いていたら、「共食いかい!」とツッコまれそうだ。

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「gourmet」カテゴリの記事

コメント

どぜうは飯田屋もおすすめです。まる鍋より柳川が食べやすいです。わたしはだーいすきです。

投稿: brary | 2008年3月30日 (日) 21時28分

>braryさん
 まだマンハッタンですか?それとも帰国されたのでしょうか。
 こんど、おとな院生のつどいを飯田屋でやりますか!?

投稿: 畑仲哲雄 | 2008年3月30日 (日) 22時19分

うわぁ!まだ未経験です。
調理済みが出てくるのであれば、見た目の恐さもさほどではない気がしました。
私は大丈夫そう!えっへん(笑)
いいな、いいな。いつか絶対食べたいと思います。
でも、私の知ってるイメージは、煮立ったお湯、出汁?に泥鰌を流し込み、
熱くてオタオタしている泥鰌の中に冷えた豆腐を入れ、冷たい豆腐に泥鰌が逃げ込み
そのまま茹で上がる‥‥という恐い代物でした。
これは夢だったのかな〜〜???

投稿: mine | 2008年3月31日 (月) 17時17分

>mineさん
 うはは。すごいでしょ。東京に来られる際は、ぜひご一報を。喜んで案内いたします。
 冷たいお豆腐に逃げ込んだドジョウを、さらにグツグツ煮込んで・・・という料理のウワサはわたしも聞いたことがあります。なんか、残酷な天使のテーゼですね。

投稿: 畑仲哲雄 | 2008年3月31日 (月) 18時38分

畑中様

 トラックバックの貼り付け有難うございました。
管理の仕方が悪くて承認が遅れてしまいました。申し訳ございませんでした。
日々楽しそうでうらやましいです。

投稿: GO!LEAFS!GO! | 2008年5月15日 (木) 23時52分

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青い暖簾をさっとくぐる。 「おやじ、鍋やっとくれ。それにお酒もだ。・・・おや、源さんも一杯やってるね。随分とご機嫌じゃないか。」 な〜んて小芝居が映える店を紹介しておこうかな。 浅草の「駒形どぜう」だ。 会社でイニシャルF氏が、「この間行って美味かった」と絶賛しパンフレットまでもらったので、機会があれば行ってみようと思っていた。 どじょうですな。 都営浅草駅をでるとすぐのところにあんるんだけど、ここだけ妙に江戸時代。 それもそのはず、創業享和元(1801)年。徳川家斉の時代ってか。 中に... [続きを読む]

受信: 2008年3月30日 (日) 21時50分

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