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2008年6月 6日 (金)

休暇を取ってでも見たい『休暇』

Dsc01511宿直勤務を終え仮眠も取らずに本郷壁際ロースクールの映研に飛び入り参加したら、ゴルゴ姉さんに遭遇して1度目の驚き。さらに、試写上映の種を蒔いた功労者がゴルゴ姉さんだったと知り2度目の驚き。交友の幅も広く、いつも何かをやらかしてくれるあたり、ゴルゴ姉さんらしい。3度目の驚きは映画『休暇』のおもしろさ。原作は吉村昭の短編。死刑を考える上で非常に示唆に富む。上映後の質疑応答も別の意味で示唆に富んでいた。

門井肇監督 『休暇』 (原作:吉村昭「休暇」=中公文庫『蛍』所載、日本、2008)

感想を一言でいえば、(わたしがこういう表現をするのは初めてだが)ルーマン的世界に思えた。闘うべき強大な悪もなければ、ビッグブラザーのような抑圧的監視者もいない。あるのはシステムのみ。だれも他のシステムの住人にネゴシエートできず、ただ環境として立ち現れるだけ。処刑される青年を包むシステムと、看守たちが生きるシステム、そして看守の結婚相手と連れ子を取り囲むシステム。分節化された各システムの住人が「抱きしめる」という身体性を通して交差する瞬間が、せつない。

ネタバレになるので内容には触れないが、この映画は、死刑を論じる際にじゃまになるものを思いっ切り捨象している点もよい。たとえば、被害者ではない人々が主張する「被害者感情」の感情的な快復など、みじんも出てこない。宮台さんは刑罰の意味について刑罰の意味?について (1) 社会的意志の貫徹 (2) 被害者の感情的快復 (3) 抑止――の3つに整理できると「丸激」で話していたが、そういうのを削ぎ落としたうえで、この問題に正面から向き合いましょうというのが制作者の意図だとしたら、とても納得できる。

あと、とても興味深かったのは、質疑応答で、法律解釈を勉強しているロー生たちの質問の数々だ。あの場面の××はどういう意味があるんですか? 登場人物△△のあの振る舞いをどのように解釈すればいいのですか? 声が意図的に小さくなっていた場面がありましたが、何を話していたのですか? 後半で□□の露出頻度が低かったのは、どういう意図があったのですか? ……そういうのを聞きながら、わたしは不意にガバっと抱きしめてやりたくなったのでした。

追記

この作品は、山梨日日新聞創刊135年、山梨放送開局55周年記念作品で、帰宅後ネットで検索していたら、「47BLOG・山梨」で、山日の坂本さんらが映画を少しだけ紹介していた。もっと大きく宣伝してよ、坂本さん。

■関連サイト
「休暇」の全国公開へ試写会 小林薫さんら都内で舞台あいさつ【山梨日日新聞Web版】2008/05/11
山梨日日新聞社とYBS山梨放送の紹介サイト

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コメント

いやー昨日はお世話になりました。
生きること・死ぬことを考えさせられ(というありきたりな表現ではとても済ませたくない)、静か~に心にしみいる、とても沈黙が印象的な映画でした。
素晴らしい作品なので、ぜひ若い人にこそ(若いというのは10代とか)観てほしい映画だな、と思ったので、昨日のような機会がうまれ、本当にうれしかったです。

投稿: みとゴルゴ | 2008年6月 7日 (土) 00時25分

>みとゴルゴさま
いい映画を観せてくれてありがとうございました!!!
たしかに若い人に観てもらいたいです。でも、お年を召した方にも観てもらいたい。

投稿: 畑仲哲雄 | 2008年6月 8日 (日) 00時41分

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