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2008年7月31日 (木)

「弱者」探しが止まらない?

「左翼」が今日的な社会的弱者である非典型労働者から頼りにされない理由について、大澤真幸さんが「中日(東京)新聞」の論壇時評(2008年7月29日)のなかで、古くて新しい視座を提示している。大澤さんは、具体的な「左翼」の名称を挙げているわけではないが、左翼が弱者に同情することに自己陶酔しがちな傾向は、なにもロスジェネ問題に始まった現象ではなく、つねに問われ続けてきたはずである。その「問い」から目を閉ざした欺瞞的な左翼もいるし、「問い」を問いとして受け止める能力を持たなかった左翼がいるのも事実だ。

大澤真幸 「左翼はなぜ勝てないのか (上) 自己陶酔に映る弱者への 「同情」 」 『東京新聞』2007年7月29日付 夕刊 第9面

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2008年7月28日 (月)

今さらリナザウ

Zaurus_dic_080728_1659_2アップルのiPhoneが爆発的にヒットするなか、シャープの Zaurus SL-C3200 をあえて買った。理由は、OS に Linux を採用し、6GBのHDDを搭載していることに加え、標準の辞書アプリ「マルチメディア辞書」で EPWING の辞書が検索できることだ。もともと入っている広辞苑やジーニアス英和・和英に加えて、すでにパソコンのDDWINで使っている電子辞書たちを串刺し検索できる。(平凡社世界大百科、研究社リーダース+プラスV2、NEW斎藤和英、ケンブリッジ世界人名辞典、岩波日本史事典、英辞郎・和英辞郎・音辞郎・略語郎、辞典現代のアメリカ、CIA FactBookなど)

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2008年7月25日 (金)

これも郷愁系か『告発のとき』

Inthevalleyofelahposter役者の名演技に引きずられそうになるが、あらためて内容を再検討すると「うーむ」という感じ。P.ハギス監督『告発のとき』である。原題は "In the Valley of Elah" 、直訳すれば「エラの谷にて」。エラの谷とは、旧約聖書で少年ダビデが巨人ゴリアテを倒す場所。宗教について明るくないのでなんともいえないが、今日の若い米兵をダビデにだぶらせつつも、必ずしもダビデのようになれない“実像”が描かれているわけだけど、ネタバレになるのでこれ以上は書かない。

ポール・ハギス監督 『告発のとき』 (原題:"In the Valley of Elah" 、米、2007)

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2008年7月21日 (月)

『市民ケーン』とハースト創業者

Citizenkaneアメリカ映画に登場する新聞社オーナーのなかで最強最悪の人物は『市民ケーン』主人公チャールズ・フォスター・ケーン Charles Foster Kane だろう。ケーンを表象するキーワードは、権力欲、金銭欲、名誉欲、色欲、そして紙面の私物化といったところか。ケーンが経営する新聞社と新聞紙のキーワードとしては、センセーショナリズム、スキャンダリズム、コマーシャリズム・・・。いずれにしても民主主義や市民社会にとって害悪でしかない。キャプラの『スミス都へ行く』に登場する鼻持ちならない新聞社オーナーは架空の小悪党だったが、ケーンのモデルとされる人物は、米メディア・コングロマリットのひとつハースト Hearst Corporate の創業者ウィリアム・ランドルフ・ハースト William Randolph Hearst! ウェールズは、ハチのムサシのように、どえらいオヤジと闘ったのである。

オーソン・ウェールズ監督 『市民ケーン』 (原題:"Citizen Kane"、1925、米)

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2008年7月18日 (金)

裏切り者の 『紳士協定』

Gentlemansagreement01プロ野球選手と情報番組キャスターの例を持ち出すまでもなく、公的な場で活動する人物は仕事だけで評価されるのではなく、仕事と直接関係のない行為においても厳しく評価される。エリア・カザンの作品『紳士協定』を観て感じたのは、いい映画だということ。だからこそ、彼がとった行動を許さない人が多いということもまた納得できる。

エリア・カザン監督 『紳士協定』 (原題:"Gentleman's Agreement"、原作:Laura Z. Hobson,米、1947)

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2008年7月14日 (月)

釜山港じゃなくトクヴィルへ帰れ(備忘録)

Tatuo2003Democracy_in_americajpgその昔、チョー・ヨンピルは「釜山港へ帰れ」を歌ってくれたが、I先生は講義で「トクヴィルに帰れ」と話した。マスメディアの功罪のうち罪が目立つようになったときの対応策を考えるとき、一度は原点に立ち返ろう――原点といえば、やはりトクヴィル。I先生は、毒をもって毒を制するというようなことを話されていたが、ようするに小さな毒を吐くメディアの数が膨大にあれば、強烈な毒を吐く少数のメディアの存在感が薄まるということだ。

トクヴィル (2005) 『アメリカのデモクラシー 第一巻 (下) 』 松本礼二訳、岩波文庫
井上達夫 (2003) 『法という企て』 東京大学出版会

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2008年7月12日 (土)

政治映画としての『赤線地帯』

Akasen_poster溝口健二監督の遺作『赤線地帯』はみごとな政治映画だと思った。若尾文子、京マチ子、木暮実千代など豪華スターが共演しているというだけの理由で手に取ったDVDだが、よく見ると作品公開は売春防止法公布と同じ1956年。当時の国民的課題と同時進行で企画・制作されていたのだ。この作品が人々の熟議(討議)deliberationにどれほど影響を与えたのか知らないが、貧困にある人が生きることと〈政治〉を考えるうえで意義深い作品である。

溝口健二監督 『赤線地帯』 (英題:Street of Shame、1956、大映)

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2008年7月 7日 (月)

「みんなでネット鹿児島」にありがとう

Npo_kagoshima02「みんなでネット鹿児島」というサイトがこのほど閉鎖された。このサイトは、2004年5月に廃刊した「鹿児島新報」のOBたちが2005年に手弁当で開設したもので、新報OBと市民記者が身近なできごとをつづっていた。OBは「NPO鹿児島新報」というグループをつくり、新報でが培った取材・執筆などの技術を社会に還元する出前講座もおこなっていたと聞く。わたしが聞き取り調査をした2006年時点で、NPO法人の申請はなされていなかったが、定款に載せるべき文章はすでに練られていた。新聞社が破綻したあと、じぶんたちが地域にどのような貢献ができるかを真摯に考え続けていた。じぶんたちが地域に必要とされる理由--〈新聞〉の存在理由について模索していた。そのことは関係者インタビューで痛いほど感じた。……URL(http://www.npo-shinpo.com/)を入力しても何も表示されないディスプレーを見つめているうちに涙がこぼれそうになった。

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2008年7月 4日 (金)

新千年紀のラジカルヒーロー

2008autonocals400Y先生の研究室主宰のトークセッションに参加して、すてきなカレンダーを買った。トークセッションのタイトルは「グローバリゼーションと対抗メディアの現在 オートノメディアのジム・フレミング氏との対話」。Autonomedia という出版社も、Jim Fleming という方も存じ上げなかったが、とても面白かった。なんでも、フレミングさんは「G8対抗国際フォーラム」のために来日されており、7/6(日)から札幌で「オルタナティブサミット」で活動し、7/9(水)にはサミットが開催される洞爺湖に乗り込むようだ。ミーハーなわたしは、セッション終了後、フレミングさんが持参したカレンダー "2008 Autonomedia Calendar of Jubilee Saints: Radical Heros for the New Millennium" をドネーション込みの価格で譲っていただいた。世界中どこを探しても、こんなカレンダーはない。

Autonomedia http://www.autonomedia.org/

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2008年7月 1日 (火)

『アパートの鍵貸します』にみる都市生活

PhotoVidor_the_crowdJacklemmonshirleymaclaineapartment1960年のアカデミー賞6部門を獲得したビリー・ワイルダー監督の『アパートの鍵貸します』は、申し分のない名作である。骨太なプロットのなかに、ロマンス、不倫、疑惑、裏切り、アクション、涙、笑い、孤独、隣人愛、歌、踊り…あらゆる要素が盛り込まれている。一言でいえば、お見事。ただ、2000年代に同じ映画を作るとすれば、大幅な改稿が必要になるはずだ。

ビリー・ワイルダー監督 『アパートの鍵貸します』 (原題 "The Apartment"、米、1960)
キング・ヴィダー監督 『群衆』 (原題 "The Crowd"、米、1928)
リースマン,デイヴィッド (1964) 『孤独な群衆』 加藤秀俊訳、みすず書房
タルド,ガブリエル (1964) 『世論と群集』 稲葉三千男訳、未来社

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