新千年紀のラジカルヒーロー
Y先生の研究室主宰のトークセッションに参加して、すてきなカレンダーを買った。トークセッションのタイトルは「グローバリゼーションと対抗メディアの現在 オートノメディアのジム・フレミング氏との対話」。Autonomedia という出版社も、Jim Fleming という方も存じ上げなかったが、とても面白かった。なんでも、フレミングさんは「G8対抗国際フォーラム」のために来日されており、7/6(日)から札幌で「オルタナティブサミット」で活動し、7/9(水)にはサミットが開催される洞爺湖に乗り込むようだ。ミーハーなわたしは、セッション終了後、フレミングさんが持参したカレンダー "2008 Autonomedia Calendar of Jubilee Saints: Radical Heros for the New Millennium" をドネーション込みの価格で譲っていただいた。世界中どこを探しても、こんなカレンダーはない。
Autonomedia http://www.autonomedia.org/
フレミング氏はNYの独立系出版社オートノメディア(Autonomedia)を28年間運営している編集長。新宿の模索舎や京都のオデッサ書房みたいな活動をグローバルにしている人のようだ。G8対抗国際フォーラムのウェブサイトによれば「崩れ行くナショナリズムよりもグローバル資本の統合が危険」と考えているようで、日本を代表する帝国大学のY先生とどのような関係なのか存じ上げないが、Y先生の研究領域を考えれば、つながっていても不思議ではない。だいたい帝国大学は市場競争を気にしないでもよい恵まれた場だし、良くも悪くも異空間なのだから。
さてカレンダー。365日すべてにラジカルなヒーローの写真と簡単な説明が書かれている。たとえば7月1日はバクーニン。アナキストでマルクスのライバル。神を暗殺した男と紹介されている。25日はプーラン・デヴィ。インドの盗賊女王。レイプ被害者にして復讐のフェミニスト。8月23日はサッコとバンゼッティ。8月30日はメアリー・シェリー。小説『フランケンシュタイン』の作者とは紹介されず、ただたんに英アナキストの娘、妻、母とのみ書かれている。9月5日はクレイジーホース。米先住民とは書かず、新世界の反帝国主義戦士のヒーローと明記されている。ちなみに、日本からも大杉栄(9月16日)、幸徳秋水(1月24日)、菅野スガ(1月25日)、辻潤(10月4日)、YAMAGA Taiji (12・6)などが Jubilee Saints として祭られている。
ちなみに、Autonomedia が販売するほとんどの本は Anti - Copyright を宣言している。どこかでだれかが Copyleft を謳っていたのと共振する。フレミング氏によれば、Autonomediaから発売した本の中でベストセラーといっても4500部程度だそうが、十数カ国で翻訳されるので、影響力はたんに部数という指標で計ることはできないという。思想や言説の社会空間を形成する力こそ評価されるべきというのは正論だ。
| 固定リンク
「journalism」カテゴリの記事
- 大学の序列と書き手の属性(2023.03.30)
- 2020年に観た映画とドラマ(備忘録)(2020.12.29)
- 議論を誘発する『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』(2020.08.20)
- 捜査幹部から賭けマージャンの誘いを受けたら 連載「ジャーナリズムの道徳的ジレンマ」第23回(2020.06.13)
- 取材源の秘匿について-産経新聞「主張」を批判する(2020.05.22)
「publishing」カテゴリの記事
- 『沖縄で新聞記者になる』トークライブ@那覇(2020.03.23)
- 3・19 那覇で新刊トークイベント(2020.02.21)
- 『ジャーナリズムの道徳的ジレンマ』重版出来!(2019.11.29)
- ジャーナリズムに地域主義を(2018.04.09)
- 『地域ジャーナリズム』 よろしくお願いします(2014.12.22)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント