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2008年7月25日 (金)

これも郷愁系か『告発のとき』

Inthevalleyofelahposter役者の名演技に引きずられそうになるが、あらためて内容を再検討すると「うーむ」という感じ。P.ハギス監督『告発のとき』である。原題は "In the Valley of Elah" 、直訳すれば「エラの谷にて」。エラの谷とは、旧約聖書で少年ダビデが巨人ゴリアテを倒す場所。宗教について明るくないのでなんともいえないが、今日の若い米兵をダビデにだぶらせつつも、必ずしもダビデのようになれない“実像”が描かれているわけだけど、ネタバレになるのでこれ以上は書かない。

ポール・ハギス監督 『告発のとき』 (原題:"In the Valley of Elah" 、米、2007)

ハギス監督といえば、2004年に『ミリオンダラー・ベイビー (Million Dollar Baby) 』の脚本、『クラッシュ (Crash) 』を監督、2006年に『父親たちの星条旗 (The Flags of Our Fathers) 』の脚本と『硫黄島からの手紙 (Letters from Iwo Jima) 』の製作総指揮を務めた社会派。出口のない、どうしようもなさを、過剰に感情に訴えかけるように描くので、映画ファンの間でも好き嫌いが分かれるだろう。

"In the Valley of Elah" では、巨人ゴリアテは描かれていないし、エラの谷であるはずの戦場も不鮮明な映像で部分的に(効果的に)しか見えなくしている。そんなものはどうでもよくて、監督がが訴えたかったのは、ベトナム戦争世代のオヤジ(Tommy Lee Jones)と湾岸-イラク戦争世代の息子との間で、アメリカという国家が180度変わってしまったことであり、アメリカの喪失感そのものではないだろうか。そう考えると、この作品も郷愁系のひとつに分類される。むろん“エラの谷”に生まれたイラクの子供たちにとって、そんなアメリカ人の郷愁など知ったこっちゃないし、ベトナムに行った兵士が主人公演じるヴェテランのように高潔だったとも思えない。

セクハラ男たちの差別発言の数々に耐えるシングルマザーの刑事(Charlize Theron)の重苦しい演技がよかった。

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