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2008年10月12日 (日)

オジキに感謝

Bantuma
オジキの三回忌のため大阪・堺へ行きとんぼ帰り。このオジキは親戚の中でもめずらしい趣味人で、子供時分のわたしにとって「憧れ」とはちょっと違うけれど、大好きな人であった。法要後の会食で話題になったのは趣味の話。彼は大の「バンツマ」ファンで、本物の活動弁士(活弁)がスクリーン横で語るイベントに、小学生のわたしを連れて行ってくれたことがある。場所は、新世界の小屋だったような気がするが、さだかではない。「走る,走る、走る、安兵衛、走る…」。スクリーンの横で活弁が語りたおす、ライブ感にあふれた映画を幼い日に体験させてもらったのは、本当によい思い出である。合掌。

阪東妻三郎主演 『決闘高田馬場』 (1938年)
阪東妻三郎主演 『血煙高田馬場』 (1938年)
山根貞男 (2002) 『阪妻―スターが魅せる日本映画黄金時代』 太田出版
杉狂児・美ち奴『うちの女房にゃ髭がある』(1936年)

映画のタイトルはまったく記憶にないが、おそらく『決闘高田馬場』か、『血煙高田馬場』か、そんなタイトルだった。作品自体が無声だったのか、わざと音を消して活弁に語らせたのか、よくわかない。目に焼き付いているのが尻からげの安兵衛(バンツマ)が刀を腰に差して、土手の道を全速力で疾走する姿。決闘の場面は記憶にないが、とにかく活弁の語りが、紙芝居の超豪華版のようで、とても引き込まれた。もっとも印象深いのが走る場面であった。

走る直前の安兵衛は、昼間から酒をあおってグダグダしているような、だらしない男だったが、決闘の直前、みょうに格好いい姿に“変身”してしまう。なんだか『素浪人 月影兵庫』や『素浪人 花山大吉』のような感じである。あるいは、初期のころの『あぶさん』もそんな感じだった。

ちなみに、決闘を助太刀するため「タカダのババ」というところへすっとんでいくのだけど、この「ババ」という表現が関西ではなんともいえない臭気を放つもので、あとから「うんことちゃうで。場所のことやで」とオジキに諭されたけれど、スクリーンに夢中になっているときは、高田さんがひりだしたものが物語に関係するのではないかという予期もあり、とにかくドキドキしていた。映画のあとは新世界で立ち食いの串カツ。酒がすきだったオジキは酔うときまって「バンツマは男が惚れる男やな」などと言っていたが、こどもの私に男の色気などわかろうはずもない。

オジキの家に遊びにいくと古いめずらしいものがいくつもあった。わたしのお気に入りは蓄音機。ハンドルを回すとターンテーブルが一定の回転数で回りはじめるあれである。オジキは蓄音機用の針を何本ももっていて(どこかでまとめ買いしていたのだろう)、昔のレコードをよく聞かせてくれた。そのうちの1枚が『うちの女房にゃ髭がある』。歌詞に込められた男と女の権力関係の妙など、ガキのわたしには理解できるものではなかったけど、ハンドル操作と古びた木箱から流れる古びた歌声がかっこいいのに、「パピプペ、パピプペ、パピプペポ」というまぬけな歌詞が妙におかしかった。

いくつものむかしのメディアに触れさせてもらえたことは、何十冊の専門書を読むよりも貴重であったことはいうまでもない。あらためて、オジキにありがとうございましたを伝えたい。

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コメント

活弁つきの『決闘高田馬場』私も見ました。
田舎の映画館がなくなる時のイベントだったと思います。
大学出た頃だったので、当時でもかなり珍しかった。
にぎやかな伴奏に弁士のはつらつとした声。
あれはワクワクしますね。

走る走る走る!

阪妻がすそのみだれも気にせず疾走してましたね〜。
また見てみたいな。

私たちも次に世代に、なんかおもろいもん残せたらええねぇ^^

投稿: かのう | 2008年10月12日 (日) 18時56分

>かのうさん
 おおお、観てましたか!
 そうです、そうです。
 阪妻さん、ふんどしヒラヒラさせながら走ってましたよね。
 われらの世代が残せるものといえば、ヲタ系文化でしょうかね。

投稿: 畑仲哲雄 | 2008年10月12日 (日) 20時19分

活弁は残念ながらリアルライムではないのですが、
そんな活弁を愛する山田広野さんのなら何度か‥‥。
彼の活動もすてきですよ。
今後、お見逃しなく!
http://katsuben.net/

投稿: mine | 2008年10月12日 (日) 20時34分

>mineさん
 山田広野さんのご紹介をありがとうございます。なかなか才人のようですね。
 http://jp.youtube.com/watch?v=pRd1GXhvIlc

投稿: 畑仲哲雄 | 2008年10月13日 (月) 08時30分

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