« 2008年11月 | トップページ | 2009年1月 »

2008年12月31日 (水)

くい込み/ラポール(備忘録3)

Sakuraiatushiこの本でハッとする体験をさせてもらったのは、92頁以降の「「フィールドワークの道具」としての自己」の部分である。同じような質問をしても、調査者がどのような人物かによって得られる回答が異なることがよくあり、調査者自身が「道具」となっているということ。ヌード・ビーチ参加者に対する聞き取りの例が示される。男のヌーディストは女の質問者に対し(女のヌーディストは男の質問者に対し)、「自然崇拝と自由」と話すが、質問者が同性の場合は「セクシャルな関心を抱いていた」と“本音”めいたことを回答する傾向があったという。当たり前のことだが、ヌード・ビーチ参加者に限らず、だれだって相手を見て話しているわけだ。

桜井厚 (2002=2005) 『インタビューの社会学―ライフストーリーの聞き方』せりか書房

続きを読む "くい込み/ラポール(備忘録3)"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年12月30日 (火)

くい込み/ラポール(備忘録2)

Sakuraiatushi視点を調査される側に変えてみる。被調査者からすれば、調査にやってきた人は環境への侵入者であり、干渉者と映る。「あんた何しに来たの?」「なんで私らのこと聞くの?」という思う。なにか大切なことを調べているという説明をしているが、それが信用できるかどうか分からない。熱心に調査/取材させてと懇願されるが、「協力しないといけないの?」「協力したことが自分たちが不利にならないの」という別次元の疑問が生じる。ここからラポール関係を築けるかどうかが、調査者の腕の見せどころとなる。

桜井厚 (2002=2005) 『インタビューの社会学―ライフストーリーの聞き方』せりか書房

続きを読む "くい込み/ラポール(備忘録2)"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年12月29日 (月)

くい込み/ラポール(備忘録1)

Sakuraiatushi社会学者の中には自分たちの調査のことを「取材」と言う人が少なくない。ジャーナリストのなかには「おまえらのは『学術調査』で取材じゃない」という人もいるようだが、良くも悪くも両者は似たような営みをしているといえる。社会学のインタビュー作法の教科書を読んでいると必ず登場するのが「ラポール」をめぐる議論や、似田貝-中野論争である。これがジャーナリズムの世界で意識されないのは、ジャーナリストはグズグズ考える前に足腰が動いてしまうからだろう。

桜井厚 (2002=2005) 『インタビューの社会学―ライフストーリーの聞き方』せりか書房

続きを読む "くい込み/ラポール(備忘録1)"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年12月27日 (土)

二項対立ふたたび(備忘録)

Cainkillshisbrotherabel大学でよく勉強した新人記者たちは、デスクから「論文みたいな記事を書くな!」と怒鳴られる。一方、取材現場が長かった中年大学院生は「ジャーナリスティックな記述は要らない。仮説と分析と結論を簡潔に」と叱責される。マスメディア・システムと学システムとの間には共約可能な言葉はなかなかに見出せない。両者をまたいで活躍しているごく一部の著名人であれば、その権威性ゆえに尊重されるのだが、ヒヨっこたちは異なるシステム内で、むしろ蔑まれる。こうした問題に足下をすくわれそうになっているのが最近のわたしである。

続きを読む "二項対立ふたたび(備忘録)"

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2008年12月24日 (水)

『リダクテッド』と疑似環境

PublicopinionRedactedposter07デ・パルマ監督の『リダクテッド 真実の価値』を観て、W.リップマンが『世論』で提起した「疑似環境 pseudo-environment 」という単語を思い出した。マスメディアを通じて得られるわたしたちの認識は誤解や無理解、ステレオタイプに満ちているという古典的な理論である。イラクで繰り広げられている数々の事件や犯罪から政策や戦略の決定まで、すべてを正確に把握し理解しているのは神のみ。人間ひとりの視野には限界もあれば盲点もあり、それぞれが置かれた立場によって、異なる像が見えている。この映画は、そうした戦争への認識論やプロパガンダ、マスメディアの効果などを考えるうえで示唆に富む。

ブライアン・デ・デパルマ監督 『リダクテッド 真実の価値』 (原題: Reducted, 2007、米・カナダ)
W.リップマン 『世論〈上〉』 掛川 トミ子訳、岩波文庫

続きを読む "『リダクテッド』と疑似環境"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年12月22日 (月)

研究対象と研究手法(備忘録)

Mediapura1D3目前だというのに研究法がわからなくなってきた。「今ごろ言ってんの」と失笑を買いそうだが、そのことに自覚的で〈ある/ない〉が、アカデミズム/ジャーナリズムの差異といえるかもしれない。いま生きている人々の営為を対象にする研究者は「はーい、客観的に取材してきました」では済まされない。そんなことを、今さらながらジメジメ考えているのです。

水越伸 (2003) 「メディア・プラクティスの地平」 『メディア・プラクティス』 せりか書房、20-50頁

続きを読む "研究対象と研究手法(備忘録)"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年12月17日 (水)

『新聞再生 コミュニティからの挑戦』よろしくお願いします

Revitalization_of_newspaper_sphere『新聞再生―コミュニティからの挑戦』 (平凡社新書、2008) が、ようやく各地の書店に並び始めました。「本屋さんで見かけたよ」「読んだよ」という便りがちらほら届いています。具体的な意見をご自身のブログ等で評していただいたり、amazon、bk1などの書評に投稿していただけるとうれしいです。讃辞だけではなく、批判も歓迎です。わたしと違う筋道で「再生」の処方箋を示してくれる方がいれば、さらにありがたい。「破綻だ」「崩壊だ」などと訳知り顔で騒ぐよりも、わたしは地道な議論のほうを大切に思います。わたしへのアクセスは mha01655★nifty.com までお願いします。(←コピペする場合は★を@に変更してください)

以下、ネットで見つけた『新聞再生』関連ページ(随時追記します)

続きを読む "『新聞再生 コミュニティからの挑戦』よろしくお願いします"

| | コメント (5) | トラックバック (0)

2008年12月16日 (火)

スタートレックと社会科学

Nasatrek40年以上にわたりアメリカを中心に多くのファンを釘付けにしてきた『スタートレック』シリーズについて、これまでいくつかの「学術的」な考察がなされており、邦訳もので以下のような本がある。
フェミニズム:『NASA/トレック―女が宇宙を書きかえる』(コンスタンス・ペンリー、工作舎、1998.10)
生物学 :『スタートレック生物学序説』(スーザン&ロバート・ジェンキンズ[他]、同文書院、1998.12)
科学全般:『スタートレック科学読本』(アシーナ・アンドレアディス、徳間書店、1999.4)
脳科学 :『スタートレック脳科学大全』(ロバート・セクラー,ランドルフ・ブレーク、扶桑社、1999.6)
ビジネス:『スタートレック指揮官の条件』(ウェス・ロバーツ,ビル・ロス[他]、ダイヤモンド社、2003.3)
個人的には、法律学、政治学、経済学など堅めの社会科学系がもっともっと充実すればいいのにと思っている。ただし、中途半端なトレッキーのわたしなどには到底できない。それに、40数年間の世界の状況を見据えながら、すべてのエピソードを分析していると、ほかになにもできなくなる。熱烈なトレッキーで、かつ学問的知見の持ち主でないと……

続きを読む "スタートレックと社会科学"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年12月11日 (木)

近刊 『新聞再生』 (平凡社新書)

Photoわたしが修士論文で書いた内容をコンパクトにまとめた本が、近く、全国の書店に並びます。タイトルは『新聞再生』。「コミュニティからの挑戦」というサブタイトルがつきました。帯の「ジャーナリズムには必ず未来がある!」という文章は出版社の方で考えてくれました。税別760円。ジャーナリスト志望の学生や現役記者や営業マン、メディア研究者はもちろんのこと、新聞に関心をお持ちの人々に読んでもらいたいと思っています。12月15日配本なので、年内にはお近くの書店に入ると思います。どうかよろしくお願いします。私的なPRですみません。(ペコリ)

畑仲哲雄 (2008) 『新聞再生 コミュニティからの挑戦』 平凡社新書 446、 ISBN:978-4-582-85446-6

続きを読む "近刊 『新聞再生』 (平凡社新書)"

| | コメント (11) | トラックバック (0)

2008年12月 8日 (月)

『ファイト・クラブ』から10年

Fightclub3ブラッド・ピットが出演する映画の多くは、彼を愛でるファン向けに作られていると思っていたが、映画『ファイト・クラブ』はカルト作家チャック・パラニュークの原作がよかったのだと思う。いま観ると、約10年ほど前のアメリカ下流に覆っていた鬱屈が想像できる。「これでみんな平等になる」などというセリフが出て、ウォールストリートとおぼしき金融街の巨大高層ビルが爆破され崩壊する場面がある。これって、9・11事件やサブプライムローンをめぐる金融メルトダウンと妙にシンクロする。

デヴィッド・フィンチャー監督 『ファイト・クラブ』 (原題: Fight Club、1999、米)

続きを読む "『ファイト・クラブ』から10年"

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2008年12月 4日 (木)

完治!HALの10円ハゲ

Non_hage涙の日々から1ヶ月あまり。HALの10円ハゲがほとんど完治した。当初は獣医さんで皮膚の成分を検査してもらったり、抗生物質をもらったりしたが、愛犬家の先輩方からのアドバイスにしたがい安心できそうなフードに変えてみたところ、少しずつ毛ツヤがもどった。ミニピンは、アンダーコートのない短毛種なので、10円ハゲは見るに忍びなかったが、どうにか一安心。みなさまありがとうございました。

続きを読む "完治!HALの10円ハゲ"

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2008年12月 1日 (月)

罪と『隠された秘密』

Cache子供のころにアルジェリアの少年の人生を台無しにしたフランスの中年男。彼のもとにあるビデオテープが送られてきたことで、抑圧していた罪悪感と復讐されるかもしれないという恐怖心がよみがえる。送り主はじぶんを恨んでいるアルジェリア人の男なのか、それとも息子の悪ふざけなのか…… ミステリの形式だが、哲学的な内容。単純だが明快ではない。他人に絶対に触れられたくないものを想起させる--これがハネケ監督の真骨頂なのだろう。

ミヒャエル・ハネケ監督『隠された記憶』(仏題:Cache,英題:Hidden, 2005, 仏、墺、伊)

続きを読む "罪と『隠された秘密』"

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2008年11月 | トップページ | 2009年1月 »