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2009年1月31日 (土)

『グレート・ギャツビー』の機能と構造

Gatsby小説を機能面と構造面から考えると、読み手感情や思考を揺さぶるストーリーの力が機能で、物語の状況設定や読者に示す世界観が構造ということになる。たとえば『グレート・ギャツビー』の場合、水呑百姓の小倅が危ない橋を渡りながらも富を築き、憧れの女性に求愛するというドキドキする描写が機能。そして貧民層と富裕層の差別ゆえに社会階層を超えた結婚が困難という世界像の設定が構造ということになろう。……むろん暴論ですけど。

F・スコット・フィッツジェラルド、野崎孝訳 『グレート・ギャツビー』 新潮文庫、1989
F・スコット・フィッツジェラルド、村上春樹訳 『グレート・ギャツビー』 中央公論新社、2006

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2009年1月29日 (木)

『タブロイド』とビジランティズム

Cronicas法治国家はリンチ(私刑)を許さない。だが、現実はそうした暴力ほど人を高揚させ、慰撫するものはないのかもしれない。それは戦場という特異な場だけで起こっていることではなくて、平和なコミュニティでもふつうに起きていることを映画『タブロイド』は突きつける。日本とエクアドルとではマスメディアやジャーナリストのあり方がいくぶん異なっているが、そういうことを抜きにして、この恐怖は普遍的だと思う。

セバスチャン・コルデロ監督 『タブロイド』 (原題:Crónicas 英題:Tabloid 、メキシコ・エクアドル、2006)

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2009年1月26日 (月)

臨床報道/臨床哲学

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2009年1月21日に大学院で開催した「メディア研究のつどい」で寺島英弥さんの話をうかがいながら、わたしは「臨床哲学」を思い出していた。臨床哲学。それは阪大総長の鷲田清一先生が提唱されたもので、わたしは『「聴く」ことの力 ― 臨床哲学試論』を水越先生のゼミで読み、その一端に触れた。鷲田さんはフランクルの「ホモ・パティエンス」を引用しながら、受難(passion)や苦しみ(Leidewesen)というものを個別具体的にみていくという「臨床」を通して、じつは、じぶん自身を内省しようとしているようにわたしには思えた。内容的には異なるが、寺島さんが試みる「つながるジャーナリズム」を「臨床報道」と呼びたくなった。

寺島英弥 (2005) 『シビック・ジャーナリズムの挑戦 ― コミュニティとつながる米国の地方紙』 日本評論社
鷲田清一 (1999) 『「聴く」ことの力―臨床哲学試論』 阪急コミュニケーションズ

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2009年1月24日 (土)

今週のいただきもの『隷属への道』

Hayek恥ずかしながら、ハイエクはまだ読んだことがなく、断片的な知識しか持ち合わせていない。 a spontaneous order (自生的秩序) として市場がもつ公共性を強調し、M.フリードマン以降の新自由主義の源流となったというような俗説しか知らなかった。むろん、そんな単純ではなく、ハイエクは誤解されている。自由とデモクラシーを考えるうえで避けて通ることができない巨人であることは疑いようもない。春休みを機会ととらえ読んでみたい。パラパラ眺めただけだが、もともとハイエクの原著が平明な文章なのか読みやすそう。(冬学期に読んだハーバーマス『事実性と妥当性』に比べれば、どんな本でもすらすら読める自信が持てる)。ちなみに、この本は大学院の後輩が全集を編集していて献本してくれました。ありがとう、いい薬です(ただしアタマの)。

F.A.ハイエク (2008) 西山千明訳 『隷属への道 ハイエク全集 I-別巻 新版 新装版』 春秋社

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2009年1月21日 (水)

今宵、メディア研究のつどい

Poster 今夜(21日)午後6時から、東京大学本郷キャンパスの大学院情報学環本館2階で、「メディア研究のつどい」を開催します。メディア研究のつどいは、情報学環の林香里准教授とゼミ生が自主的に開催している研究会で、今回も前回に引き続き、学外からの参加を歓迎します。

 今回のテーマは「つながるジャーナリズムの必要」。話し手は『シビック・ジャーナリズムの挑戦』(日本評論社)の 著者・寺島英弥さんで、仙台市に本社がある河北新報社の生活文化 部長です。

 「シビック・ジャーナリズム」は「パブリック・ジャーナリズ ム」とも呼ばれ、1990年代の全米で一大旋風を巻き起こした地方紙とコミュニティを改革する運動として知られています。寺島氏は米国滞在時に、この運動に関わった新聞記者や研究者たちを精力的に取材しています。その成果を寺島氏は上述の著書で 披露したうえで、日本の新聞業界に取り入れる筋道を探る先駆的な活動をしています。

 寺島さんは、日本版のシビック・ジャーナリ ズムを「つながりのジャーナリズム」と表現しており、その実践と可能性についてご本人から話をうかがい、会場との質疑を通じて議論を深めます。

 参加費無料、事前登録なしで、どなたでも参加可能です。奮って ご参加ください。

本日の「つどい」告知ページ
「つどい」のポスター(A4、pdf)
メディア研究のつどいについての説明
最寄り駅と地図(きょうの会場は情報学環本館2階)

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2009年1月19日 (月)

レツゴー [政治哲学] 三匹(備忘録)

Letsgosanbikiわたしが子供のころから大好きな漫才トリオ・レツゴー三匹さんになぞらえて、リベラル論争を整理しておく。漫才台本のような形式ではあるが。それはわたしの頭の中を整理するための形式にすぎない。70年代から90年代にかけてのロールズ、ノージック、サンデルの論争を知らない人や、そういうことに興味を持たない人にはまったく意味がないので無視してください。あくまでも個人的な備忘録です。ごめんなさい。

ノージック ロバートで~~す!
サンデル マイケルで~~す!
ロールズ みなみは……フランク・シナトラでございます。
(ノージックとサンデルの両方から頬をドツかれ、ロールズのメガネがズレる)
ロールズ キミら2人、ぼくの正義論にケチつけてくれてるみたいやけど、どういうことや?

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2009年1月16日 (金)

郷土のコモンズ戦国武将

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NHK大河ドラマを誘致するため、官民挙げた息の長い運動が各地で繰り広げられている。舞台が巨大都市ならいざ知らず、過疎地にドラマがやってきたら、それもう一大事である。たとえ脇役でも、人気芸能人が地元にやってくるだけで、その効果は絶大。たとえば2007年の『風林火山』の主人公は武田信玄の軍師で主な舞台は山梨だったと思うのだが、信玄の宿敵・謙信を演じたGacktさんがロケなどで幾度も訪れた新潟県上越市は沸きに沸いた。地元紙によると、8月の謙信公祭は2日間で過去最多の20万3100人の観客を記録! その数は上越市の全人口をあっさり超えていた。

外川淳『直江兼続 戦国史上最強のナンバー2』 アスキー新書、2008
ガクト旋風、タイムスにも 早々と新聞売り切れ(上越タイムス - 2007年9月10日)
ガクト謙信、大きな経済効果 「一過性で終わらないよう」(上越タイムス - 2007年9月28日)
Gackt動画 http://cgi2.nhk.or.jp/paphooo/result/search_result.cgi?action=detail&file_no=1999

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2009年1月14日 (水)

読まない学生に教える新聞

新聞記者から大学教授に転身をする先輩からメールをいただき、あれこれと考えさせられた。わたしが尊敬するその先輩は在職中から私大でマスメディアに関する講義していて教育者としてのキャリアも積んでいる。堅実な学芸記者としての経験と誰からも愛される温和で朗らかな人柄、達意の文章力、そして近年培った教え授けるスキル。なんとも申し分ない存在なのだが、彼の悩みは学生のほとんどが新聞紙を読んでいないという冷徹な事実なのだ。

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2009年1月12日 (月)

いちおう正解、議員力検定

松浦大悟の公式サイト」で「議員力検定」が紹介されていた。必ずしも国会議員を対象としたものではなく、地方議会の議員はもちろん、なによりも有権者も知っておいて損はない。ウェブに出されていたのは「一般3級の練習問題」。問1は「住んでいるまちに不満があります。次の記述で法律的に間違った行動を、一つ選択しなさい。(1) 自分が首長、議員に立候補して、よりよいまちをつくるよう努力をする (2) 自分の考えに近い人を、選挙で選ぶ (3) あきらめて、ほかのまちへ引っ越す (4) 地方税の支払いを拒否する --

議員力検定・一般3級の練習問題 10問に挑戦してみましょう

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2009年1月10日 (土)

『こわれゆく女』をフーコーで読み解く(!)

A_woman_under_the_influence_3Photo_2何げなくテレビを点けたとき、思わぬ傑作と出合うことがある。ジョン・カサヴェテス監督『こわれゆく女』も、わたしにとってそんな作品であった。夫と3人の子供がいる冴えない中年の女性(ジーナ・ローランズ)が終始異様なテンションで周囲を困らせ続け、141 分があっという間に過ぎた。観終わったあと、脳内で電球が光り、『狂気の歴史』がおぼろげに浮かび上がった。「おぼろげ」の理由は後述する。

ジョン・カサヴェテス監督 『こわれゆく女』 (原題: A Woman Under the Influence , 1974, 米)
M.フーコー (1975) 『狂気の歴史』 田村俶訳, 新潮社

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2009年1月 8日 (木)

地域デモクラシーと共同経済

Jinno地域経済の活性化を考えるとき、大企業の生産拠点を誘致したり、地元産品を大都会で売ったりすることがすぐに頭に浮かぶ。これは市場を通じて大きな都市や企業から富を引っ張ってくる筋道だけど、ビジネスしか目に入らなくなるのは考えもの。財政--みんなで持ち寄ったお金(税)をどうのように使うか、NPOたちの営為をどう位置づけるか。そのことを神野直彦先生の本に教えられた。

神野直彦 (2002) 『地域再生の経済学―豊かさを問い直す』 中公新書

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2009年1月 5日 (月)

『國民の創生』からオバマ政権へ

144351Birthofanationpostercolorあの映画から90年あまりで、黒い肌の男性が大統領に就任するとは、映画の父グリフィスも想像できなかっただろう。あの映画とは、南北戦争からリンカーン暗殺、K.K.K.の創設までを描いた『國民の創生』(1915)である。K.K.K.を英雄として礼賛したことから、「アメリカの恥」とも言われた作品であるが、だからこそ2009年1月にあえて振り返ってみる価値がある。アメリカというネーションがいかにして想像 (or 捏造) され、今日に至るのか。

G.W.グリフィス監督 『國民の創生』 ( 原題: The Birth Of A Nation、1915、米 )

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中学生が新聞ニュースを語る番組

こういう発見があるからネットはおもしろい。新聞をほぼ毎日読んでいるという中学の女の子が気になるニュースについてしゃべるポッドキャスト番組を知った。番組は毎週火曜日に配信されている。番組名は「新聞って面白い?中学生さくらのポッドキャスト」。2008年9月14日にスタート。「さくらちゃん」は経済や事件に興味があるといい、「ジェシカさん」という女性と楽しいトークをしている。

@さくらじお 「新聞って面白い?中学生さくらのポッドキャスト」 [PODCAST/RSS]

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2009年1月 1日 (木)

【告知】1月の公開研究会

Media_studies_biggifあけましておめでとうございます。唐突ですが、1月の公開研究会を2件告知します。

1件目は、東京大学大学院情報学環林研究室主宰「メディア研究のつどい」
日時は2009年1月21日(水)18:00-20:30、場所は東京大学本郷キャンパス 情報学環本館建物2階演習室。講師は、『シビック・ジャーナリズムの挑戦』(日本評論社)の著者・寺島英弥さん。仙台市に本社がある河北新報社の生活文化部長です。

「シビック・ジャーナリズム」は「パブリック・ジャーナリズム」とも呼ばれ、1990年代の全米で一大旋風を巻き起こした地方紙とコミュニティを改革する運動として知られています。寺島氏は米国滞在時に、この運動に関わった新聞記者や研究者たちを精力的に取材しています。その成果を寺島氏は上述の著書で披露したうえで、日本の新聞業界に取り入れる筋道を探る先駆的な活動をしています。

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