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2009年1月16日 (金)

郷土のコモンズ戦国武将

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NHK大河ドラマを誘致するため、官民挙げた息の長い運動が各地で繰り広げられている。舞台が巨大都市ならいざ知らず、過疎地にドラマがやってきたら、それもう一大事である。たとえ脇役でも、人気芸能人が地元にやってくるだけで、その効果は絶大。たとえば2007年の『風林火山』の主人公は武田信玄の軍師で主な舞台は山梨だったと思うのだが、信玄の宿敵・謙信を演じたGacktさんがロケなどで幾度も訪れた新潟県上越市は沸きに沸いた。地元紙によると、8月の謙信公祭は2日間で過去最多の20万3100人の観客を記録! その数は上越市の全人口をあっさり超えていた。

外川淳『直江兼続 戦国史上最強のナンバー2』 アスキー新書、2008
ガクト旋風、タイムスにも 早々と新聞売り切れ(上越タイムス - 2007年9月10日)
ガクト謙信、大きな経済効果 「一過性で終わらないよう」(上越タイムス - 2007年9月28日)
Gackt動画 http://cgi2.nhk.or.jp/paphooo/result/search_result.cgi?action=detail&file_no=1999

だが、よく考えてみれば、謙信が生きていた時代と今日とでは、日本における上越地域の存在感は大きく異なる。裏切りや陰謀がうずまく戦国時代にあって武将たちが重視したのは大勢の家来を養うためコメを確保すること。穀倉地帯の新潟に強大な武将が存在し、全国の武将たちがその動向にいつも注目していたことは想像に難くない。かつて戦国ヒーローが活躍した大地に、いまは過疎と高齢化の寒たい風が吹きすさぶ。そんな上越に暮らす人々が、昔に思いをはせることは、固有の伝統や文化といったものをあらためて噛みしめ、地域を再発見していく郷土愛高揚の営みともいえる。

視点を過疎地に移して、今日の社会を俯瞰すると、いまはモノ・カネ・ヒトが、いびつなまでに特定の地に奪われたように見える。東京、大阪、名古屋への集中ぶりは異様だ。札幌、仙台、広島、福岡といった都市も肥大化がすぎている。むろん戦乱の世で、庶民たちは暮らしやすさを感じていたとは思えない。でも、限界集落をいくつもかかえる今日の中山間地や過疎地域にとって、どちらの時代が自分に誇りを持てるだろう。大河ドラマの誘致は、お金がどれだけ落ちたかといった外形的な数字にとどまらない、郷土への愛や感情的な回復など数値化できない価値がある。

ちなみに、上越地域はことしも大河ドラマで沸き返りそうである。「天地人」の主人公は謙信亡き後の上杉家に仕えた直江兼続で、妻夫木聡さんが、「愛の武将」として上越などを舞台に活躍している。外川淳さんの本で、兼続ドラマ誘致運動のことが紹介されていたが、歴史はその土地のシンボル(象徴)であり、有形無形の価値を創造する共有財産、コモンズみたいなものだなあとつくづく思う。

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