『國民の創生』からオバマ政権へ
この作品は「淀川長治のクラシック名作映画」シリーズの1本である。むろん、淀川さんもKKKに批判的である。DVD内の解説で、こんなふうに語っている。
この映画で凄かった事は、何が凄かったかいうと、アメリカのこの歴史ですね、いかに、いかに、北軍が南部の黒人達を憎んだか、いうことが、見事に出てるんですね。
というのは、グリフィス自身が北軍の人なんです、北軍びいきなんですね。
それで、黒人を随分、随分、苛めたんですね。
だから、この映画に始めて、K.K.K.というのが出て来るんですね。
クー・クラックス・クランとか言うんですね。
これは、顔をかくして、白い、白い服を着て、馬に乗って、何か、木の棒を持って、ずーっと廻り歩いて、黒人見たら殺すんですね、怖い、怖い、連中、K.K.K.、今でもこのK.K.K.、アメリカにいるんですね。
という訳で、黒人はみんな、みんな、殴り殺すんですね、黒人の家を焼くんですね、なぜそんなことをするんだろう、いや、黒人はいやなやつだ、黒人は悪いやつだ、顔がブラックでいやだ、そういうような時代があったんですね。
映画の原作はトマス・ディクスンの小説『ザ・クランズマン』。クランズマンは、Ku Klux Klan の構成員を意味する。Ku Kluxは、ギリシア語のキュクロス kyklos (輪) 、クランはゲール語のクラン clan (子孫) から転化した言葉で、映画で説明されているとおり、南北戦争後の南部白人たちを動員して組織された。原動力はとなったのは、南北戦争で両軍が和解・講和して作った連邦ではなく、ネーションなるものへの帰属のようだ(nationは日本の国体とは違う)。
戦いに敗れた南部は連邦軍の占領下におかれる。連邦は、南部の白人たちを支配層からパージして、旧黒人奴隷に投票権を与える。その票が連邦を支配する共和党に流れた。南部の白人たちは台頭する黒人に反発し、恐怖した。そこで、連邦による正統性を欠くものの、ネーションの正統性をもつ暴力装置としてK.K.K.が勢力を支持を広げ、勢力を増す。連邦は法によってクランを取締り対象としたが、第1次大戦後のいわゆる「反動の時代」に再び猛威を振るう。すなわち、「白人とプロテスタント優越主義」が、外国的なものや白人カトリック文化からみて不道徳とされるものへの憎悪の時代。これが1920年代のアメリカではネーションの「正義」とされ、1924年には会員が全国に400万いた。クランたちの活動は幾度かの消長を経て、今日でも活動に参加しないまでも一定の理解を示す人たちもいると言われる。・・・という事柄をあらためて考えさせてくれるのが『The Birth of a Nation』である。
ネーションとは何かについて、大きく二種類の考え方がある。ひとつは近代の産物であるというもの。近代のはじまりのころ、中心的な西欧諸国にいた人々が市場や資源を求めて周辺諸国に版図を広げた。対する周辺諸国のエリートたちが同じ言語や文化を共有する民衆を動員し、想像した共同体。もう一つはネーションとは近代国家 (state) に先行して歴史的に存在していた(エトニ)という考え方。原初主義とか歴史主義とされる(その違いはいずれあらためて)。この映画にそって考えると、ネーションとしてのアメリカは、内戦と他者(有色人種)の排斥によって生み出されたことになる。(バットマンが守ろうとしているゴッサムシティは単なる都市ではなく、ネーションのアナロジーと考えられる)。

この映画がクラシック名画とされるのは、グリフィスの映画技法が卓越していたためだ。わたしは映画の門外漢なのでよくわからないが、映画評論の世界では、この作品こそ、アメリカ映画の始まりとされている。ルネ・クレールが「映画芸術は、グリフィス以後なんらの本質的なものを付け加えていない」と述べたのは、クローズアップ、カット・バック、フラッシュバック、パン、移動、俯瞰、双眼鏡ショットのマスキング、フェイド、アイリス、ソフトフォーカス、……など今日ふつうに用いられている技法のほとんどをグリフィスが開発したからだ。(おかげでリリアン・ギッシュも美しい!)
ポリティカル・コレクトネスによって表に出づらくなった作品だが、思想面で批判的しながらも技巧面で学べる問題作として再評価した淀川さんはえらい(解説で淀川さんが言っている「北軍」というのは「南軍」の間違いではないかとも思うが)。
淀川さんは解説の最後に北軍の行進曲について興味深い逸話を残している。
そのころ日本に、北軍の唄が流れて来たんですね、“ダンダンダダンダダンダ........”と流れて来たんですね。
はー、私は幼稚園の頃、その頃、日本に流れて来たんですね、で、日本の唄になったんですね、“アナタノアーイノ、ツユウケテ、キーノウハージメテ、ワラッテヨ”まあ、そんな唄になったんですね。
よく考えたら、「あなたの愛の露受けて、昨日始めて笑ってよ」、いやらしい唄ですね、というような事で、その時分に、もうすでに北軍の行進曲が、日本に入ったいうこと、それもおもしろいですけど、『國民の創生』は、その時代の話ですよ。
この曲は『リパブリック讃歌』。『おたまじゃくしはかえるの子』や『ごんべさんの赤ちゃんが風邪ひいた』、さらにヨドバシカメラで流れる「まあるい緑の山手線、まん中とおるは中央線」などに改作されている。
▽参考サイト
・IVC 淀川長治のクラシック名作映画「國民の創生」
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