辞典と写真でボケ・ツッコミ
掟破りの本と出会った。20-21日に本郷キャンパス福武ホールで開催された「メル・エキスポ2009」会場の三省堂ブースで紹介されていた『コンサイス アルバム ディクショナリー』である。『うめ版 新明解国語辞典×梅佳代』 (2007) を一般向けにしたもの、と言ってピンとこない人のために説明すると、右ページには『新明解国語辞典』から抜粋した語句説明があり、左ページは自分が撮影した写真を貼り付けるための空白にしてある半完成品というか、アルバムである。
公式サイト http://www.sanseido-publ.co.jp/publ/albumdictionary/
『コンサイスアルバムディクショナリー新明解国語辞典編 くろ版』
『コンサイスアルバムディクショナリー新明解国語辞典編 しろ版』
『コンサイスアルバムディクショナリー四字熟語辞典編 一期一会』
『コンサイスアルバムディクショナリー年中行事事典編 いちねん』
『うめ版』はプロ写真家の梅佳代さんの微笑ましい写真の数々と、国語辞典の硬派なテキストが絶妙な組み合わせになった完成品。これをヒントに作られた『コンサイス アルバム ディクショナリー』は自分で写真を貼り付ける辞書……というかアルバム。ラインナップは4種類で、『新明解国語辞典』から夢のある言葉をよりすぐった『しろ版』、ダークな言葉を抽出した『くろ版』、四字熟語の『一期一会』、年中行事の『いちねん』。わたしは迷わず『くろ版』を買った。
じっくり読むと、赤瀬川原平さんに『新解さんの謎』 (文春文庫) を書かせただけのことがあり、語句説明が良い。たとえば30頁の「ぐれる」は「ふとした事から自暴自棄になって、悪の道へそれる。堕落する」という説明があるのだが、その左頁に貼り付けるべき写真は、人によっては赤ちゃんだったり、ペットだったり、経営の悪化する会社の建物だったり……。左右のページの緊張感がつくる意味空間は、コミュニケーションを連鎖させていきそうだ。
メル・エキスポのブースにいた三省堂の社員さんと話をして思ったのは、こういう本をどう売るか。意欲のある書店は面白がって、実例を見せたりして紹介してくれると思うが、凡庸な書店員はアルバムコーナー? 辞典コーナー? デジカメ関連本コーナー? 実用書コーナー? いったいどこへ置けばいいのか途方に暮れるだろう。ふふふ。
ちなみに、『コンサイス アルバム ディクショナリー』利用者のアルバム内容をウェブで大募集している。
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コメント
自己レスです。
5月3日付の朝日の書評欄で紹介されました。よかったね!
投稿: 畑仲哲雄 | 2009年5月 3日 (日) 23時55分