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2009年5月30日 (土)

映画『スター・トレック』は意外と濃い

New_startrekTVシリーズ初放送から43年目にして、役者が代替わりした映画『スター・トレック』は、なかなか良かった。いつまでもW.シャトナー(カーク船長)とL.ニモイ(スポック副長)に頼るわけにはいかない。TOS→TNG→DS9→VOY→ENTと、時代が一巡してしまったので、リメイクしか残されていなかったわけだが、オリジナルシリーズへのオマージュもちりばめられていて楽しく見せてもらった。

J.J. エイブラムス監督 『スター・トレック』 ( 原題:STAR TREK , 2009, 米)

まず、カークだが、初代カークも情熱的で、直感や感情に揺れることが多かったが、まあ、大人として成熟していた。しかし、今回クリス・パインが演じた新カークは生意気盛りの若者時代という設定でもあり、度を超した無軌道ぶりだった。アメリカン・マッチョの典型。ただ、ピカードも若かりし頃は4人のナウシカ人(=ノーシカン)と素手で大立ち回りをする荒くれだったのだから、まあ、これくらいはありかもしれない。

スポックは、初代のニモイも出演していたが、2代目のザカリー・クイントは、ちょっとぽちゃぽちゃ感がいなめないが、無表情ぶりは予想外に良かった。「おもしろい」とポツリとつぶやく場面があるが、お約束通りやってくれた。

冴えていたのは、ヒカル・スールー(別名ミスター・カトー)のジョン・チョウが過去に経験した近接戦闘を訊ねられて「フェンシング」と答えた場面だ。TOSではジョージ・タケイがフェンシングのサーベルを振り回して暴れ回るという奇っ怪なエピソードがあったのだが、知る人ぞ知る濃いシーンやセリフはほかにもたくさんあるはずだ。

そういえば、チェコフのロシア語なまりも絶妙だった。役柄の軽さは、2代目アントン・イェルチンは、初代のウォルター・ケーニッグに負けず劣らず愛すべき存在で、おそらくもっとも可愛い。米ソ冷戦期にスタートしたTOSでは「ロシア人も一員かよ」という存在だったが、現在ではたんなる方言人間の象徴かもしれない。異星人との会話を可能にするユニバーサル・トランスレーターがある時代なのに、チェコフの発音をコンピューターが聴き取れないというのは大いに笑える。

通信士官のウフラは大幅なイメチェン。初代のニシェル・ニコルズは黒人代表という印象が強かったが、2代目のゾーエ・ソルダナはスポックにベタ惚れの勝ち気で情熱的な通信士官。お色気担当かも。彼女のファーストネームはなんだったかな。

マッコイ(愛称ボーンズ)が艦隊に入った理由は、妻に愛想を尽かされて家を放り出され自暴自棄になっていた。初代ディフォレスト・ケリーのときに語られていただろうか。たぶん、そうなのだろう。カール・アーバン演じる2代目は、他のクルーに比べてオヤジくさくて味わい深いキャラになるはず。

もっとも笑ったのは、サイモン・ペグのスコット役だ。根っからの技術職人の印象が濃かったジェームズ・ドゥーハンに比べ、ペグは奇人変人の天才エンジニアになっていた。ペグは「ショーン・オブ・ザ・デッド」の印象がつよく、お笑い担当には最適かも。

映画のストーリーはTOS前史。つまり、カークが船長になるまでのおはなし。何をすればいいのかを見出せず、バイクとケンカに明け暮れていた札付きの不良青年カークが、自分の父親を知る艦隊士官から「悲運の船長だった父を超えろ」みたいなクサイ説得を受け、アカデミーに入り、実戦で大活躍して船長になるという、すべてお約束通りの内容。新メンバー紹介という意味合いがつよい。

いずれにしても、2代目カークをマット・デイモンがやる話があったそうだが、無名のクリス・パインで良かったと思う。次回作に期待したい。

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