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2009年6月12日 (金)

ここのところみた映画

同居人が一段落したこともあり、このところ映画を見る機会がふえた。映画の好みは微妙に違うし、評価も異なる。それでもまあ、同じ映画を同時に観るという共通体験を重ね、議論をすることで、触発されることも少なくない。議論を誘発してくれる映画は、基本的によい映画だと思う。

以下に最近観た映画一覧と寸評を記す。

ロバート・アルトマン監督『M★A★S★H マッシュ』(原題:M*A*S*H、1970、米)
半死半生の兵士たちが次から次へと担ぎ込まれるという絶望的な状況下における若い医師たちのコメディ。戦争の惨状から逃げることなく、いたずらを通じて権威を笑い飛ばし、「生」を肯定する。アルトマンの代表作。ちなみに、mashとは、mobile army surgical hospitalの頭文字。 [わたしの評価A/同居人の評価A+]
ジョン・シュレシンジャー監督『真夜中のカーボーイ』(原題:Midnight Cowboy、1969、米)
テキサスからNYに出てきた若者が、カウボーイを売り物にして夜の街を生きる。教養小説のように主人公が成長しないところが切ない。D・ホフマン演じるネズ公は、テレビシリーズ「傷だらけの天使」で水谷豊が演じた役柄に共通点多し。アメリカン・ニュー・シネマの代表作。 [わたしの評価A+/同居人の評価A]
伊丹十三監督『お葬式』(1984)
葬儀はだれもが経験するありきたりな儀式。だが、葬儀を営む側にとってみれば、人生でそれほどたびたびあるわけではない飛びきりの非日常的儀式。高瀬春菜演じる苛立たしい愛人の演技がおかしい。伊丹監督の最期を思うと、主演女優の宮本信子さんが痛ましく思えてくる。 [A/B-]
ウォルター・サレス監督『モーターサイクル・ダイヤリーズ』(英題:The Motorcycle Diaries、原題:Diarios De Motocicleta、2004、英、米)
革命の英雄になる前の、ひょろひょろした青年エルネストが、大学の先輩と南米大陸をバイクで旅して、ときに迷惑を振りまきながら、一人前になる物語。放浪への衝動。いたずら。恋愛。そして、資本主義が作り出す貧困や、先住民たちに対する抑圧という現実。さらに、ハンセン病施設……。旅は人を成長させる典型的な教養小説的作品。 [A/C+]
ジョエル・シューマカー監督『依頼人』(原題:The Client、1994、米)
裁判員制度をきっかけに、近くのレンタルDVD屋さんが、裁判映画をひとつの棚に集めた。そこにあった1本。リベラル俳優ばかりが登場するが、ただのオハナシに終わっている。 [C/C]
スティーヴン・ソダーバーグ監督『トラフィック』(原題:Traffic、2001、米)
麻薬の生産・流通、闇市場での販売、取り締まり、そして薬物依存からの脱出というそれぞれの現場に生きる人々を描いた傑作。タイトルは、麻薬と金と人のトラフィックから取ったのか。NAFTAの影響が麻薬市場にもある。ソダーバーグ監督では、過去にジュリア・ロバーツ主演の『エリン・ブロコビッチ』というストレートな作品を観たが、それに比べると、複雑。ロースクールの映画研究会で観賞。東大生にローの映研がお勧め。毎回のように達夫先生のコメントを拝聴できる。 [A/A]
ミシェル・ゴンドリー監督『僕らの未来へ逆回転』(原題:Be Kind Rewind、2008、米)
ジャック・ブラック主演のオバカ系コメディ。数々のハリウッド映画に対するオマージュが満載。ジャック・ブラック主演の映画には『スクール・オブ・ロック』(2003)、『愛しのローズマリー』(2001)、『ナチョリブレ』(2006) などがあるので、ちょっと評価が厳しくなる。 [C+/B+]
ダニー・ボイル監督『スラムドッグ$ミリオネア』(原題:Slumdog Millionaire、2008、英、米)
ダニー・ボイルといえば『トレイン・スポッティング』の監督だったんだ――ということがよく分かる作品。評価が高かったのはよくわかる。スラムの悪ガキは、たびたび映画や小説で描かれてきた。古いところではディケンズ原作『オリバー・ツィスト』。最近ではブラジル映画『シティ・オブ・ゴッド』で、この作為品で子供の暴力性は頂点を極めた。『スラムドッグ』のストーリーは、できすぎの感があるが、許容範囲。物乞い少年少女を組織するヤクザが、子供を誘拐し、目を潰し、手足を切り落とす。それもまた「インドの現実なんです!」なのだろう。 [A+/B]
コーエン兄弟監督『バーン・アフター・リーディング』(原題:Burn After Reading、2008、米)
ながらく共産主義と闘ってきたCIAの存在理由もなくなり、いまや半径500メートルくらいの世界としか対峙しなくなった現代アメリカ人を嗤うコメディ。風が吹けば桶屋がもうかる的な、小さな物語の連鎖が引きつった笑いを誘う。 [B/B+]
ジョン・ヒューストン監督『許されざる者』(原題:The Unforgiven、1960、米)
今日的な文脈で観ると論外の内容。ただし、歴史的な作品を観賞するとき、当時の社会を知り、当時の人々にどのようなインパクトを与えたかも含めて観なければフェアじゃない。だが、もしかすると、この作品は公開時において、すでにアメリカ先住民を屈辱していた可能性も。そうした事情をも含めて、アメリカを知る作品かも。 [C-/C-]
ドン・シーゲル監督『ダーティーハリー』(原題:Dirty Harry、1971、米)
アメリカン・ニュー・シネマなのかどうかわからないが、「殺人鬼」とされるスコルピオと同様、刑事のハリー・キャラハンも「キラー」と呼ばれている。裁判という場で「悪」を立証するより、捜査段階で「悪」を殺す。法に先行する神的なルールをもつ刑事がいたら、そんなやつこそ裁かれるべき。だが、よく考えると、物語自体は、官僚的な統治機構を風刺した「必殺仕置人」と共通する。 [A-/C]

同居人の評価はこちら → ◇備忘録・ここのところみた映画

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コメント

Dirty Harry を一度おさえて、Clint Eastwood監督最新作、「Gran Torino」を見ると結構おもしろいとこあると思います。あと、Dirty Harryは b movie的(もともとb movieだったっけ?)におもしろくて、もうクラシックになったシーンとフレーズが続々出てきます。

"Do I feel lucky? Well, do ya, punk? " (笑)

投稿: Fukuda | 2009年6月12日 (金) 22時59分

>Fukudaさん
 Gran Trino に Dirty Harry のセリフが出てくるのは、シーゲル監督へのオマージュでしょうね。
 b movie って、日本語の「B級映画」とは違うようですね(笑)。

投稿: 畑仲哲雄 | 2009年6月13日 (土) 21時24分

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