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2009年7月 2日 (木)

『4ヶ月、3週と2日』と『やわらかい手』を観た

Yawaraka432_movie2作品とも、社会的な禁忌をおかして、たくましく生き抜く女性を描いている。『4ヶ月、3週と2日』は1987年のルーマニアで、女子大生オティリアが、ルームメイトの堕胎を手助けするため奔走する物語。『やわらかい手』は難病の孫の医療費を稼ぐためロンドン郊外の歓楽街で働き、なぜだか売れっ子になってしまうマギーの物語。2作品に共通するのは、抑圧や疎外に対する闘いに思えた。作品紹介などで語られる、勇気と優しさの物語といった説明は、ちょっとピントはずれな気がする。

クリスティアン・ムンジウ監督『4ヶ月、3週と2日』(原題:4 luni, 3 saptamâni si 2 zile、英題:4 Months, 3 Weeks and 2 Days、2007、ルーマニア)
サム・ガルバルスキ監督『やわらかい手』(原題:Irina Palm、2007、英・仏・ベルギー・独)

『4ヶ月、3週と2日』は2007年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したルーマニア映画のニューウェーブ。1980年代前半にソ連を旅したわたしには、街の情景描写が目に沁みた。(モノとカネがあればいいというものではないけど)

チャウシェスク政権末期で生活物資が窮乏するなか、学生寮では留学生経由で闇のタバコや石鹸などが細々と流通する。しかし、堕胎は法律で厳しく禁じられおり、避妊具も手に入らない。なので、望まない妊娠をした女性はヤミ医師を頼ることになる。妊娠したルームメイトのガビツァは、わがままで、自立心がなく、自分を助けてくれているオティリアにまで数々の嘘をつき、感謝の気持ちひとつ表そうとしない。しかし、いや、だからというべきか、オティリアは自己犠牲を顧みず危ない橋を渡りつづける。その行為は、女の友情と勇気といった美談ではなく、公私の別なき激しい抑圧と疎外、そして腐敗に対する憤りに対する落とし前の付け方のように映った。

『やわらかい手』は、2007年ベルリン国際映画祭で金熊賞のノミネートされたR指定コメディ。マギーには、難病の孫がいて、海外渡航で治療するために莫大な費用がかかる。しかし息子の稼ぎは良くない。マギーにも収入がないし、社会経験もない。お金をかせぐ手っ取り早い方法はフーゾクだった。

彼女が仕事を得た店は、俗に「ラッキーホール」と呼ばれる日本で生まれのサービス。客たちは、壁の向こうにいる人間がおばあちゃんとは分からず、マギーは店一番の売れっ子となり、「神の手」と賞されるようになる。が、定石通り、仕事の内容が家族にも近所にもバレる。マギーは近所の茶飲み仲間から蔑まれ、息子からも「かあさんは売春婦だ!」とひどく罵られるが、これ以上はネタバレになるのでやめておく。この作品における息子や茶飲み仲間たちは、共同体の制裁におびえる小心翼々たる差別者を表しているといえば、ちょっと大袈裟か。



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コメント

「やわらかい手」私もギンレイで見ました。
「ラッキーホール」って日本が発祥なんですか?
なるほどねー、欧米って合理的(ドライ)だなあ、と
思いながら見ていたので、意外でした。
でも考えてみれば、日本人だって結構合理的な考え方を
していますよね。ただプロセスが欧米と違うので
なかなか、そう思われないということはありますが。

投稿: pinoko | 2009年7月 2日 (木) 10時26分

>Pinokoさま
 日本が発祥のようですよ。映画の中でもミキ氏が「日本式だ」というようなことを話していましたよね。
 でも、あれって「合理的」なのでしょうか。。。。どちらかというと「効率的」ではないでしょうか(苦)

投稿: 畑仲哲雄 | 2009年7月 2日 (木) 14時50分

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