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2009年8月 1日 (土)

ここのところみた名作

Cat_on_a_hot_tin_roofA_streetcar_named_desire最近、同居人と古典とされる名作を鑑賞するようになっている。いつか観ようとおもっていて、まだ手が出ていなかった古典はとてもたくさんある。映画が撮られた社会的な状況を踏まえてあれこれ考えると、なんとなく勉強しているような気分になれるから不思議だ。もちろん、たんなる気分にすぎない。ほんとうは、研究からの現実逃避なのですよ。

エリア・カザン監督 『欲望という名の電車』 (原題: A Streetcar Named Desire, 1951年, 米)
リチャード・ブルックス監督 『熱いトタン屋根の猫』 (原題: Cat on a Hot Tin Roof, 1958年, 米)
黒澤明監督 『隠し砦の三悪人』 (1958年, 東宝)
レニ・リーフェンシュタール監督 『民族の祭典』 (原題: Olympia, 1938年, ドイツ)

OlympiaKakushi_toride『欲望という名の電車』はわたしが生まれる10年前に公開された作品。舞台は南部ニューオーリンズの貧しい街区。つつましい夫婦生活を送る妹ステラを頼ってやってきた元高校教員ブランチを、あのヴィヴィアン・リーが演じる。第二波フェミニズムの影響を受けてこなかった南部の良家のお嬢さまが、妹の夫スタンリー(マーロン・ブランド)に罵倒され、過去を暴かれ、堕ちていく。そんな物語自体には共感できるものはなかった。一点だけメモしておくとすれば、ブランチが放った「ポラック(Polack)」というポーランド系移民への差別語に対し、スタンリーが「オレはアメリカ市民だ」と猛抗議し、彼女にだまされていた職場の同僚を「戦場で苦楽を共にした親友」として守ろうとする姿に、アメリカってやっぱり特殊だなあ、と思った。もうひとつ挙げれば、この作品が撮られたのは、すでにマッカーシズムの嵐が吹き荒れている時期で、カザンは映画界の友を次々と裏切っていた。せつない。

『熱いトタン屋根の猫』は、エリザベス・テーラーとポール・ニューマンが不仲の夫婦役。『バージニア・ウルフなんかこわくない』で40代の中年女性を演じたテーラー(当時34代)だが、この映画では勝ち気な若妻として登場(当時26歳)。7歳年上のはずのニューマンがのほうが若く見えるから不思議だ。ニューマンは、成り金一家の次男坊でいつも不機嫌なブリック役を演じているが、同性愛者であることがほのめかされている。原作ではゲイであることはきちんと明記されているようだけど、1958年の映画界では、まだタブーだったのだろうか。

ちなみに、『欲望という~』、『熱いトタン~』はともにテネシー・ウィリアムズの原作。2作とも、虚飾で塗り固められた世界/嘘偽りのない人間本来のあるべき世界、というダイコトミーが基調テーマのようだ。『熱いトタン~』に出てくる成り金パパは、自らの父がホーボー(貨物列車にただ乗りして移動する浮浪者)だったけれど幸せな生涯を送ったのに比べ、一財産を築いたじぶんが愛のない家族に囲まれていることを悟る。この場面が泣かせる。

『隠し砦の三悪人』は噂に聞いていたが、ほとんどスターウォーズだった。山名家と秋月家は「帝国」と「銀河共和国」。秋月家の雪姫はレイア姫。真壁六郎太(三船敏郎)がルーク・スカイウォーカー。田所兵衛(藤田進)がハン・ソロ。太平(千秋実)と又七(藤原釜足)がC3POとR2D2である。兵衛は、親友の六郎太と雪姫の身柄を一時的に拘束するのが、突如、「裏切り御免!」と仲間を裏切って姫と友を助ける。その理由は………兵衛のなかで眠っていた「ジェダイの騎士」精神が目覚めたから(爆笑)。見どころは三船の乗馬シーン。ちなみに、この映画が公開されたのは、日本の高度経済成長(1955~73)が始まったばかりのころ。六郎太は、企業戦士のモーレツ・サラリーマンの鑑かもしれない。そんなふうに考えると、スターウォーズも企業間競争に思えてくる。

『民族の祭典』は、ナチズム高揚に多大な影響を与えた作品。監督レニ・リーフェンシュタールは、言わずと知れたヒトラーの愛人。いろんな意味で考えさせられる。メディア史のみならず、映像表現について学ぶ者は観ておくべき傑作。


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