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2009年11月28日 (土)

映画『レスラー』とプロレスラーの死因

The_wrestler_posterサラリーマンたちのサボリ場とも言われる新橋文化(映画館)で、今さらながら『レスラー』を観た。ブルース・スプリングスティーンのエンディング曲が流れてきたとき、そこかしこで鼻水をすする音がした。客はおっさんばかりの小屋で、こんな経験をしたのは初めてだった。鼻風邪の人も混じっていたと思うけど、ひっしに涙をこらえていたおっさんもいたはず。第65回ヴェネツィア国際映画祭での金獅子賞受賞と第66回ゴールデングローブ賞主演男優賞 (ドラマ部門)受賞は「なるほど」と納得できた。

ダーレン・アロノフスキー監督『レスラー』(原題: The Wrestler, 2008, 米)
村西とおる日記:漁師と海猿、そしてまたもや酒井法子さまと剛竜馬のことなど・・・

この映画が話題になった理由は、主役のミッキー・ロークの役者復活と、役柄のプロレスラーがミッキー・ロークの人生に重なること。さらに挙げるとすれば、陳腐な表現かもしれないが、プロレスラーという、社会的にあまり尊敬されにくい「下流」の、不器用な者たちに対する温かい眼差しが、わかりやすく表現されていたからだろう。

プロレスラーとはまったく奇妙な職業である。主人公のランディというプロレスラーは架空の人物だが、似たり寄ったりの人生を歩み若くして死んでいったプロレスラーは少なくない。以下は,ネットでざっと調べただけのもので、不正確なデータも混在しているかもしれない。誤りがあればご指摘いただきたい。

【50代】
金髪の重戦車:バディ・ローズ(自宅で急死、56歳)
カナダの荒熊:ジョー・ルダック(訪問先のホテルのシャワー室で転倒、肺がん、54歳)
極道水夫:セーラー・ホワイト(交通事故で入院した翌年、病院で死亡、54歳)
花の若武者:剛竜馬(自宅で病死。敗血症とみられる、53歳)
黒い鳥人:バードマン ココ・B・ウェア(不明、52歳)
鋼鉄の熊:大熊元司(急性腎不全、51歳)

【40代】
狂犬:ディック・マードック(心臓麻痺、49歳)
魔女:シェリー・マーテル(過失による薬物過剰摂取、49歳)
若大将:ジャンボ鶴田(肝臓移植手術中にショック症状、49歳)
伝説の豪雄:レイ・フェルナンデス(心臓病療養中に自宅で死亡、47歳)
人間起重機:ビッグ・ジョン・スタッド(がん、47歳)
人間山脈:アンドレ・ザ・ジャイアント(急性心不全、46歳)
エルボーの貴公子:三沢光晴(試合中に首を骨折、46歳)
殺刃戦士:マイケル・ヘグストランド(心臓発作、46歳)
黒い猛犬:ジャンクヤード・ドッグ(交通事故、45歳)
刺青獣:クラッシャー・バンバン・ビガロ(自宅で死去、薬物説、45歳)刺青獣
ブライアン・アダムス(自宅で原因不明の死、44歳)
ミスター・パーフェクト、獅子王二世:カート・ヘニング(旅先のホテルで急死、薬物説、44歳)
巻投げ一閃:ロッキー羽田(がん、43歳)
カナディアン・ストロンゲスト・マン:ディノ・ブラボー(マフィアによる射殺、43歳)
ザ・グラジエーター、別名マイク・オーサム(首つり、42歳)
地震男:ビッグ・ジョン・テンタ=琴天山(膀胱がん、42歳)
理不尽大王:冬木弘道(大腸ガン、42歳)
超獣:ブルーザー・ブロディ(興行先のロッカー室で刺される、42歳)
凶獣:クリス・ベノワ(妻ナンシー、息子とともに一家心中、クリス40歳)
破壊王:橋本真也(脳幹出血、40歳)
人間魚雷、元祖パワーボム:テリー・ゴディ(心不全、40歳)
120キロの怪物:モンスター・リッパー(不明、40歳)

【30代】
ジョニー・グランジ(睡眠時無呼吸症候群、39歳)
ラティーノ・ヒート:エディ・ゲレロ=2代目ブラック・タイガー(旅先のホテルで急死、38歳)
アレックス・ダイナモ、別名アビスモ・ネグロ(川で変死、37歳)
ベルリンの壁:ジェリー・トゥーティ(日本滞在中にホテルで倒れる、36歳)
ロドニー・アノアイ、別名グレート・コキーナ(滞在先のロンドンで急死、狭心症説、34歳)
暴走狼、ゴールデン・ボーイ:アドリアン・アドニス(交通事故、34歳)
ザ・パニッシャー:アンドリュー・マーチン(自宅で変死、33歳)
ハル薗田(南アで飛行機事故、31歳)
スネーク奄美(脳腫瘍、30歳)
ジャイアント落合(練習中の事故、30歳)

【20代】
サンボ姫:プラム麻里子(試合中に頭部を痛打、29歳)
ハンサム・ハーフ・ブリード:ジノ・ヘルナンデス(変死、薬物過剰摂取説、28歳)
福田雅一(試合中の事故、27歳)
デビッド・フォン・エリック(日本で客死、薬物説、25歳)
ケリー・フォン・エリック(銃による自殺、25歳)
マイク・フォン・エリック(薬物による自殺、23歳)
クリス・フォン・エリック(銃による自殺、21歳)
門恵美子(試合中に後頭部を痛打、23歳)
未来(自宅で事故死、22歳)

もちろん、プロレスラー以外の人にも労災は発生するし、「一流」とされるオリンピックや大リーグなどでも薬物汚染は蔓延していることを、すでに私たちは知っている。ただ、どう考えても、プロレスラーたちは、それが度を超している。映画『レスラー』でも克明に描かれていたが、プロレスラーの多くは痛み止め薬なしに生きていけないほど傷ついている。薬物はメンタル面への影響もあれば、犯罪との関係も生じやすい。このためか、レスラーの死亡理由には、自殺や謎の不審死が多い。

上記、夭折レスラーを眺めていて、もっとも心が痛んだのは、冷酷ぶりが売り物だったドイツ系の人気レスラー、フリッツ・フォン・エリックの息子たちが、次々と薬物や銃で亡くなっていることだ。長生きをした父は、どんな気持ちで息子たちを送ったことだろう。

合掌。

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コメント

三沢さんのときは本当にショックでした。
エディとベノワは新日ジュニア華やかなりし頃よく観ていたので、訃報を聞いたときは寂しかったですね。

一人分の人生しか送れないことに納得が行かないわがままな人たちのために、レスラーはこの世のあらゆることを引き受けてくれるんだと信じています。
プロレスを必要としている限り、僕はいつまでも弱くて卑怯な人間です。

投稿: いずもり | 2009年11月29日 (日) 01時53分

>いずもり様
わたしも三沢さんの急死には驚きましたが、むしろ剛竜馬さんの死のほうに胸をしめ付けられました。なんてせつない!
>一人分の人生しか送れないことに納得が行かないわがままな人たちのために
まったくその通りですね。

投稿: 畑仲哲雄 | 2009年11月29日 (日) 13時06分

はじめまして 畑中さん

すごいですね・・・今は故人となったレスラーの年齢と死因をしらべあげるとは・・・ブルーザー・ブロディが刺し殺されたニュースは印象に残ってましたよ。当時ボク12歳でしたが プロレスファンに衝撃が走ったはず。

ジャンボ鶴田、橋本真也、そして三沢の事故死。 レスラーは強靭な肉体を持っていても不死身じゃない、ケガをすれば病気だってする。突然ガンになって亡くなるケースだってある。いい教訓になるデータです

>この映画が話題になった理由は、主役のミッキー・ロークの役者復活と、役柄のプロレスラーがミッキー・ロークの人生に重なること。
 同感です。80年代にセクシー俳優として一世を風靡しながら、ボクサーに転向し、そのあげく、もはや伝説の猫パンチを披露して、ファンにソッポを向かれたローク。テッペンからどん底まで、辛酸を舐めてきたであろう彼の姿と、年老いたランディの姿が、どうしても重なりますね。

セクシー俳優として80年代は全盛期だったのに ボクシングのために自分から全盛期を捨てちゃって・・・半ばバカだと思いましたよ。
 実際ロークは'88年に「ホームボーイ」というアメリカを渡り歩く流れ者のボクサーのジョニーを演じています。ランディとはまた違った不器用さをジョニーには あります。ボクシングはスクリーンの中だけにしておけばよかったんだと思いますがいかがでしょうか

ただ、「レスラー」と「ホーム・ボーイ」 ふたつの作品を比べて見るのも悪くないですよ。畑中さん。

投稿: zebra | 2011年11月 5日 (土) 20時06分

zebraさん、
コメントと、映画「ホーム・ボーイ」のご紹介をありがとうございます。
ボクシングを映画だけにしておけばよかったかどうか、正直、わたしには判断がつきません。
人生を金銭的な損得勘定だけで評価すれば、ボクシングなんてしなければよかったかも。
でも、本当はボクシングをやりたかったんだよ、などと愚痴りながら俳優を続けるよりも、やりたいようにやるほうが、僕は好きです。自分の意志で選んだ行為なのだから。周囲からみれば愚かな行為に映ったとしても、愚かさゆえに尊い、と思いたいです。
おすすめの「ホーム・ボーイ」は見てみます。ありがとう。

投稿: 畑仲哲雄 | 2011年11月 5日 (土) 20時56分

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投稿: 誕生日プレゼント | 2020年5月19日 (火) 18時43分

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