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2010年1月13日 (水)

「ああ解放の旗高く」は一高寮歌から

Levelers_ching_dongソウル・フラワー・モノノケ・サミット(SFMS)のアルバム『レヴェラーズ・チンドン』に収録されている曲のなかで、みょうに耳についてしまった歌がある。買ってしばらく経つが、きのうライナーノーツを初めて読み、その歌が、東京帝大の前身・旧制第一高等学校の寮歌の替え歌であったことを知った。SFMSが歌っているのは「水平歌~農民歌~革命歌」である。

ソウル・フラワー・モノノケ・サミット『レヴェラーズ・チンドン』(リスペクトレコード、1999)
労働歌・解放歌・革命歌・水平歌・農民歌・壮士演歌 website
嗚呼玉杯に花うけて (MIDIカラオケおやじの唄 website)
水平歌 ああ、千年の昔より 作詞:西光万吉 (みんなちがって みんないい website)

旧一高の寮歌は『嗚呼玉杯』。「嗚呼(ああ)玉杯に花受けて~」で始まるこの歌は、各地の大学寮歌のなかで最も普及したとされる。誰もが知っているこのメロディをちゃっかり借用した人は多く、たくさんの替え歌が作られ、大いに歌われた。(昭和に入って「嗚呼玉杯」をめぐり出版社が著作権侵害で賠償請求される事件が法廷で争われたが、国家の構築期ともいえる明治時代は牧歌的だったのでしょう)

ウィキペディアによると、有名な替え歌は以下の通り。


『仰げば巍々たる』 (陸軍士官学校。明治35年。作詞者不詳)
『嗚呼革命は近づけり』 (革命歌。明治41年。築比地仲助 作詞)
『ああ解放の旗高く』 (水平歌 (解放歌)。大正11年。柴田啓蔵 作詞)
『きけイエス君の』 (救世軍歌 319番。山室軍平 作詞)

陸軍士官学校の歌は、“本家”の寮歌が第12回紀念祭で発表されたのと同じ明治35年と記されているから驚きである。革命歌はマルクス主義者の歌であり、水平歌は部落解放の歌であり、救世軍歌は社会運動の歌である。SFMSは、農民歌も含めてメドレーにしているが、国を背負わんとするエリートたちも、差別や抑圧からの解放などをめざすマイノリティも、同じメロディに乗せて歌っていたという史実はなんとも不思議である。

そういえば、「わからない節」も、マルクス主義の「富の鎖」と同じく、日本海軍の歌のメロディを借用した抵抗歌だった。 http://hatanaka.txt-nifty.com/ronda/2008/02/post_9d53.html 現在ほど知的財産がやかましく主張されていなかった時代だからこそ花開いたフリー・カルチャーだったのだろうか。

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コメント

いくつ替え歌があるかわからない代表としては、John Brown's bodyとBattle Hymn of the US Republicなんていうのもあるかもしれません。もう、180°方向が^^;。

http://www.youtube.com/watch?v=NdRVGM4FG54

http://www.youtube.com/watch?v=7cMxJBenigY

投稿: Sakino | 2010年1月13日 (水) 20時57分

SFMS!ということで、ついつい「がんばろう」を大音響で再生したら、センター試験直前で問題を解いてみている次女から悲鳴が^^;。『ああ解放の旗高く』 は、個人的にはあまり歌いませんでしたが(だって、もと寮歌って心情的に歌いにくい^^;)、まわりではよく歌っていましたよ。

ただ、寮歌って、替え歌も含め、歌いつがれてナンボだと思います。三高寮歌は、介護で歌いまくりました。それなりの才能が集まっているだけあり、寮歌には、いいうたがいっぱりあって、要するに、戦前までは、勝手に歌をつくってみんなで歌うという文化があったのだということだと思います。そういう文化が本土でついえたのと、ラジオ・テレビ・著作権といったことがらには、たぶん関係があるというのが、介護中多少寮歌を歌ってみての感想です。

投稿: | 2010年1月13日 (水) 21時12分

>Sakinoさん
あーっ、「ゴンベさんの赤ちゃん」ですね(^^)。
たしかに、めちゃくちゃたくさんあるでしょうね。

>monoさん?かな
「がんばろう」を大音響で再生!(爆)
歌い継がれてナンボ、改作されてナンボ、というのはよくわかります。
洟も引っかけられないような作品でも、人類に希望をもたらした大作と同じく
作家の死後ウン十年も保護されるというのは、市場の要請なんでしょうね。
いずれにしても、ガンバレ次女!

投稿: 畑仲哲雄 | 2010年1月13日 (水) 22時45分

モノノケ・サミットといえば「インターナショナル」ですね。

古い友人が5月5日「世界の国歌をロックで」というイベントを都内のライブハウスで計画しています。モノノケ・サミットではなく、鈴木茂や鈴木慶一が出演するようですが、なぜか「インター」もプログラムに。「反国歌=世界国歌」という発想なんですかね。

投稿: meitei | 2010年1月21日 (木) 14時32分

>meiteiさん
 鈴木茂さんと鈴木慶一さんは存じ上げないのですが、いいですね、国家をロックで!
 幼いころの記憶ですが、君が代をジャズ風に演奏して懲罰?を受けた音楽教師の新聞記事を読んだことがありますが、歌は国家であれ労働歌であれ、歌われてナンボですね。

投稿: 畑仲哲雄 | 2010年1月25日 (月) 22時06分

モノノケサミットのこのアルバム懐かしいです!
おお!こういうのも聞くんですね〜。
なぜか昔、まだCD-Rがなかったころ、
なぜかうちには「戦後歌謡曲集」なるものがずら〜〜っとダビングされてありました。
もちろん私のですが、なかなか楽しかったですよ。
友達と話は合いませんでしたが‥‥‥。(;^_^A

投稿: mine | 2010年1月26日 (火) 17時42分

>鈴木茂さんと鈴木慶一さんは存じ上げないのですが

おやおや、そうでしたか。
何だか世代の違いを意識しますねえ。
ちなみに、鈴木茂は元はっぴいえんどのギタリスト、去年、いや一昨年でしたか、マリファナ所持で逮捕されましたね。
鈴木慶一は元はちみつぱい、ムーンライダースのリーダー。北野たけしの映画『座頭市』の音楽も担当しています。ま、会えば、ただの飲んべえですが。

頭の中で音をめぐらせると、国歌は、ロックには合わず、やはりマーチング・バンド風の演奏に似合う気がします。
国歌はもちろん元来不要なものですが、そういう言い方をすると、なに、音楽だって本来いらねえじゃねえか…などという声が聞こえてきそうです。
岡大介君のかんから三線で歌えば、また違うかも。

投稿: meitei | 2010年1月26日 (火) 23時11分

>鈴木茂さんと鈴木慶一さんは存じ上げないのですが

 畑仲さんより4つ年下の私が、当然のように「鈴木慶一って、ムーンライダースの人だよ!」というと、「ムーンライダースって?」と返ってくるので、世代の問題ではないですね。
 彼は日本のポップス系に今も昔も、じつは、きわめて弱いんです。>meiteiさん
 教育不行届き、あいすみません。

投稿: クニエ | 2010年1月27日 (水) 19時50分

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