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2010年2月22日 (月)

査読者とデスク

Researchmindマスメディアのニュースルームには(国や地域によって違いはあるが)「デスク」と呼ばれる人たちがいて、リポーターが書き殴った原稿を編集している。彼ら彼女らはニュース価値を判断し、論理的整合性や文法的な誤りをチェックし、ときに若いリポーターたちを指揮・指導する。学術誌も研究者が投稿した論文に対する査読(Peer Review)が行われる。デスクに相当する査読者(referee)は通常、匿名のため遠慮仮借のないコメントとともに突き返されることは珍しくない。わたしは2度レジェクトされ、先日ようやく再々提出にこぎつけた。(掲載は夏以降の予定です。新聞社とNPOに関心のある方は、読んでくださいね)

藤本隆宏・新宅純二郎・粕谷誠・高橋伸夫・阿部誠 (2005) 『リサーチ・マインド 経営学研究法』有斐閣アルマ

主要な学会誌・学術誌は査読を非公開・匿名で行う。投稿者の論文をコキ下ろしているレフェリーが誰なのかがわからない。なので、面と向かってなら言えないようなことも、遠慮なく批判される。海外の学会誌に投稿する場合は、日々、査読者と顔を合わせることもないが、キャンパスですれ違ってニコニコ挨拶する諸先輩・諸先生のなかに、どきりとするようなコメントをする人がいると思うと、すこし複雑だ。

でもまあ、厳しい審査でしっかり叩かれておくと、論文の弱点や欠点は大幅に改善され、外の人からの批判に対してガードの堅い作品に仕上がるはず。なので、きついコメントも「愛の鞭」と受け止めるべきなのだろう。こういう納得の仕方は、駆け出し記者が鬼デスクに叱られながら育っていく過程に多くみられるし、体育会のシゴキを受容していく新入生の心理変化とも通底する。教育や育成とは、非対称な権力関係のなかでしか作動しないのだろうか。

リジェクトとコメントに悔しい思いをしているとき、社会人院生の先輩から面白い本を教えてもらった。研究領域は違うが、投稿や査読についての面白い話が載っていて、たびたびニンマリさせられた。リジェクトされたり無駄に酷評されたりするとヘコむのですよ、という気弱な学生さんにはおすすめ。以下、一部引用する。

穴探しに狂うタイプには,視野がまだ狭窄したままの若い研究者が多いのだが、こうした経験不足の若いレフェリーを起用する場合には、エディターは責任を持って、レフェリー・レポートの書き方を教えたり、著者に送る前にレポートの内容の修正を促したりすべきだろう。/逆に年配の人ほど「私は嫌いだ」とか「こんなデータはありえない」などと書く傾向がある。このような人は、いさぎよくジャーナルの編集から引退すべきだ。ジャーナルの読者が欲しているのは、新事実や新理論が与えてくれる知的ワクワク感だからである。 (高橋信夫 (2005) 「英語論文のすすめ」,『リサーチ・マインド 経営学研究法』 有斐閣アルマ, p.282)

ちなみに、拙稿を審査してくださったレフェリーは、みなさん尊敬すべき先輩で、わたしは果報者だなあと思っています。くれぐれも誤解のないように。

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コメント

お疲れでした。

ハタさまも、恐らくデスクの立場。
日々、若手どもの原稿をバッサリやっておられることと推察いたします。

でもきっと、学者頭と、記者頭、っていうのが構造が大きく違うので、論理構築の仕方にご苦労なさったことでしょうね。

でも、論文の選択の時にも、「ジャーナル」って言葉を使うものなのですね。

投稿: ママサン | 2010年2月22日 (月) 12時46分

論文のレフェリーって、サッカーとかフィギュアスケートの
レフェリーと同じと言っていいんでしょうか、どうなんでしょう。
ときどき、変な人いますよね。まったく的外れな人とか^^;
特にあっち(どっち?)の分野に。

投稿: pinoko | 2010年2月22日 (月) 22時22分

>ママサン様
ご推察のとおり「学者頭」と「記者頭」の違いはありますよ。学者から「キミの論文はジャーナリスティックだね」と言われたら、貶されているのだそうです。いろんな意味で、近親憎悪だと思うのですが。。。

>pinoko様
スポーツ競技のレフェリーは、プレーヤー同士の間を裁くヒトですけど、
あの世界のレフェリーは、プレーヤー(投稿者)の対戦相手みたいな気が(笑)

投稿: 畑仲哲雄 | 2010年2月23日 (火) 00時16分

投稿論文の英文校正なら値段的にも質的にも
http://www.uni-edit.net/
がよかったです。
何回か再校正もお願いしたのですが無料で見てくれ、親身になってくれて気持ちよくやり取りができましたよ。

投稿: M | 2010年10月11日 (月) 00時24分

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