官房機密費:田原総一朗氏以外みな灰色?
複数の報道によると、野中氏は首相に月々1千万円を配っていたほか、自民党国対委員長や参院幹事長に各500万円程度を配っていたほか、野党議員や政治評論家にも配っていたと暴露した。その額は、「毎月5000千万円から7000万円」であったと述べた。引っかかるののは、機密費の額ではない。
いうまでもなく、機密費は税金から支出されている。税がどのように使われているかは、納税者に明らかにされなければならない。その都度公表すれば、目の前の内政や外交に支障をきたすこともある。だが、一定期間を経たのちに開示することは、民主主義の理念にかなう。これは、たんに税の使途というカネの問題ではない。リベラル・デモクラシー体制のためには、主権者が政治過程を知る必要があるということだ。
野中発言のなかでもっとも由々しき問題は、機密費の使途がこれまで明らかにされてこなかったことだが、それに負けず劣らず問題だと思われるのは、機密費が「政治評論家」に配られたことである。
野中氏がいう「政治評論家」の概念は明らかではないが、マスメディアを舞台に言論活動を行う民間人であることは容易に想像できれる。野中氏は「持っていって返してきたのはジャーナリストの田原総一朗氏だけだった」と述べており、「政治評論家」のなかには、「ジャーナリスト」が含まれていること含意されている。もし、統治権力から血税を受け取っていた「言論人」がいるのだとすれば、論外である。
野中氏の発言を信じる限り、唯一の潔白である田原総一朗氏を除くと、すべての「政治評論家」や「ジャーナリスト」が全員、灰色になってしまう。「もしかして、わたしの投票に影響を与えたあの評論家も、ら金を受け取っていたのだろうか」「あの立派なジャーナリストは、お金をくれた政府に有利になるよう世論を誘導していたのだろうか」・・・・。こうした疑心暗鬼から脱するためには、事実を明らかにすることから始めねばならない。「公開の場で、真実と虚偽を組み討ちさせよ」というミルトンの箴言を思い起こしてほしい。
2010/05/10追記
歴代内閣官房長官(wikipedia を参考にしました)
20090916 ~ 平野博文
20080924 ~ 20090916 河村建夫
20070926 ~ 20080924 町村信孝
20070827 ~ 20070926 与謝野馨
20060926 ~ 20070827 塩崎恭久
20051031 ~ 20060926 安倍晋三
20040507 ~ 20050921 細田博之
20001027 ~ 20040507 福田康夫
20000704 ~ 20001027 中川秀直
19991005 ~ 20000704 青木幹雄
19980730 ~ 19991005 野中広務←
19970911 ~ 19980730 村岡兼造
19960111 ~ 19970911 梶山静六
19950808 ~ 19960111 野坂浩賢
19940630 ~ 19950808 五十嵐広三
19940428 ~ 19940630 熊谷 弘
19930809 ~ 19940428 武村正義
19921212 ~ 19930809 河野洋平
19911105 ~ 19921212 加藤紘一
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コメント
>「毎月5000千万円から7000万円」
これ、ソースからですか?
投稿: @ | 2010年5月 7日 (金) 14時38分
田原から野中にはいくら渡ってるんだろう。
ていうか、メディアの偉い人に渡したほうが効果的じゃないですか?
投稿: @ | 2010年5月 7日 (金) 14時45分
>@さん
いつも的確なご指摘と難解なご質問をありがとうございます。
投稿: 畑仲哲雄 | 2010年5月 7日 (金) 18時04分