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2010年7月23日 (金)

講義で採り上げた映画(1)

ことし春から都内の大学で非常勤講師を勤めさせていただいた。講義はマスメディアとジャーナリズムに関わる総合的な入門講座だが、わたしの下手なしゃべりと配付資料や参考図書だけで、鍵概念や理論を実感を伴って理解してもらうのは容易ではない。できることなら、学生たちに楽しみながら考えてほしいと思い、関連する映画を紹介した。以下は作品の一部と、講義と関連する論点や視点など。

▽メディアの戦場化と戦争のメディア化

ブライアン・デパルマ監督・脚本 『リダクテッド 真実の価値』(原題:Redacted, 2007, 米)
 積極的に公開される映像と検閲され公開されない映像がある。これまで、戦争の悲惨さを伝えるのは戦場ジャーナリストの仕事、あるいは使命であったが、だれもがメディア機器を操作しコミュニケートできる今日、メディア戦場と化し、戦場がメディアとなっている。

▽移りゆく新聞社の表象

ビリー・ワイルダー監督 『フロント・ページ』 (原題:The Front Page , 1974, 米)
ロン・ハワード監督 『ザ・ペーパー』 (原題:The Paper ,1994, 米)
ケビン・マクドナルド監督 『消されたヘッドライン』 (原題:State of Play, 2009, 米)
 『フロント・ページ』は1900年代初頭の米国で中心的メディアだった新聞紙、新聞社、新聞記者が描かれる。これに対し、『ザ・ペーパー』はテレビなどの電波メディアと競争・共存している新聞社が描かれる。さらに『消されたヘッドライン』では、インターネット時代の新聞社の苦境が描かれる。一貫しているのは、新聞記者がジャーナリズムの実践者の代表格として描かれているということ。

▽プロパガンダの恐怖

テリー・ジョージ監督 『ホテル・ルワンダ』 (原題:Hotel Rwanda , 2004, 米)
ジョージ・クルーニー監督 『グッドナイト&グッドラック』 (原題:Good night, and Good luck , 2005, 米)
 『ホテル・ルワンダ』は、1990年から90年半ば、アフリカ中部のルワンダで起こった紛争時に、外資系ホテル支配人が大勢の人を救った実話に基づく作品。この紛争で100万人近くが虐殺された。見どころは、当時のラジオ放送が、憎悪をかきたてる放送をくりかえしていること。これぞプロパガンダ。
『グッドナイト&グッドラック』は、冷戦に突入したアメリカを覆ったマッカーシズム(赤狩り)に抵抗したCBSのニュースキャスター、エド・マーローの闘いを描いた実話に基づく作品。マッカーシズムとは、1950年に上院議員ジョセフ・マッカーシーがおこなった「国務省のなかに205人の共産党員がいる」という演説に端を発する反共プロパガンダ。マッカーシーは当初、国民的な支持を集めた。

▽ジェンダーとマイノリティ

ジョージ・スティーブンス監督『女性No.1』(原題:Woman of the Year, 1942, 米)
ジョエル・シューマカー監督『ヴェロニカ・ゲリン』(原題:Veronica Guerin , 2003, 米)
フェルナンド・メイレレス監督『シティ・オブ・ゴッド』(英題:City of God , 2002, ブラジル)
 『女性No.1』は、全米で最も優れたジャーナリストと評価された女性ジャーナリストが、野球記者をしているマザコンのマッチョ男から求婚され、輝かしいキャリアを捨てて専業主婦になることを美化したバカ映画。『ヴェロニカ・ゲリン』は、アイルランドで起こった新聞記者殺害事件をもとにした作品。麻薬組織から命を狙われながらも、暴力に屈することがなかったゲリン記者は『女性No.1』の主人公と正反対。『シティ・オブ・ゴッド』は、ブラジルのスラムで麻薬や暴力に囲まれて生きるひとりの少年が、スラムの外にある新聞社でアルバイトをし、ジャーナリストとして育っていく話。社会階層や少数者とマスメディア、地域メディアの関係を考えさせられる。

▽未来予測の陥穽

リドリー・スコット監督 『ブレードランナー』 (原題: Blade Runner, 1982, 米)
 作品が問い掛けているのは生命倫理や人間/非人間の曖昧さなどをめぐる哲学的な内容。だが、それはさておき、2019年のロサンゼルスには、空飛ぶ自動車や立体撮影カメラがあるのに、インターネットや携帯電話やICタグがない。主人公が公衆電話ボックスを利用する場面があるのがかなり意外。

(つづく)

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