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2010年10月 3日 (日)

たばこ値上げに思う

10月1日からたばこが値上げされた。たしか、鳩山首相時代に政府税調が増税を決定したため。禁煙する人が増えれば国民の健康増進にも寄与するという「健康目的」が増税の大儀だった。だが、これはまったくフェアではない。本当に国民の健康増進を考えるのなら、増税分を禁煙治療のために再配分すべき。今回の値上げを機に禁煙に挑戦している人たちの支援をするべき。今回の増税は多数者の専制といってよい。

もし「健康目的税」というような打ち出の小槌のような税が許されるのなら、自動車のドライバーからも、酒飲みたちからも、好きなときに好きなだけ徴税できるようになる。車の排ガスは呼吸器系の病気の原因だし、車の台数が減れば交通事故数も減り、人々の寿命が長くなる。アルコールはとてもたちが悪い。悲惨な薬物中毒や飲酒運転の悲劇を確実に生み続けている。

たばこ増税は、数のうえでも少数の者に過分な負担を強いるが、車や酒を含めて、薄く広く徴税したほうが公平性が上がり、財政問題の解決に大きく寄与できたはず。

しかし、車の恩恵を受けている人は数多くいる。酒もしかり。少数者ではなく多数者に対し「健康目的」のために増税したいと説得できる政治家は皆無だろう。つまり、「健康目的」というのは徴税のための方便にすぎず、今回も、取りやすいところから取っただけにすぎない。そして、その欺瞞を、多数者の側も知っているけれど、じぶんはたばこを吸わないという理由で、知らん顔をしているように思える。

健康、環境、平和などの「大義」は、諸個人の権利や自由をやすやすと規制する政治的道具として使われやすい。たばこ問題でわたしが心を痛めたのは、多数者である非喫煙者が少数者である喫煙者を「社会のお荷物」として扱ってしまったことである。少数者にターゲットを絞った増税は、恥ずべき政治的決定だった。

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コメント

社会全体のコスト・ベネフィットで考えると、タバコによる税収を上回る損失(疾病および火災等)があることが知られております。少々値上げしたところで、その損失が埋まるものではありません。財務省としては天下り先を確保しつつ、財政も考えるという難しい綱渡りをしています。
ご存知かと思いますが、タバコの値段を上げることは、現在の喫煙者を減らすことより、若年層が喫煙を開始することを阻止する効果、が高いことが最大のメリットです。アルコールも確かに問題でしょう。しかし、アルコールを飲用する人間のうち中毒(=依存)はわずかですが、喫煙者はほぼ100%ニコチン中毒です。
少数への課税は問題、とのことですが、少数であっても「代表」をもつぶんマシでしょう。我々の子供たちは赤字国債という代表なき課税を年々とかぶせられています。

投稿: 信州人 | 2010年10月 3日 (日) 19時52分

信州人さん、
コストーベネフィットという軸で考えれば、タバコ増税を正当化できますね。でも、それは、どこまでいっても功利主義。多数者の専制を正当化してしまう。
すこしトリッキーな立論ですが、合法ドラッグ中毒者を大量に生んでおいて、不公平な税を収奪した後に、喫煙者という少数者を絶滅させようとすることは、(最近はやりの)正義にかなわないのではないでしょうか。

投稿: 畑仲哲雄 | 2010年10月 3日 (日) 21時23分

畑仲さま
社会全体がタバコにより損失を被っているということは、喫煙者は社会から収奪している(健康保険が最も顕著だと思いますが)、という論も成立します。不公平な税を納めている、ではなく、不公平な給付を受けている、ということになりますから、イーブンになるまで税を増やすことは公平原則にかなうのではないでしょうか。

投稿: 信州人 | 2010年10月 4日 (月) 22時19分

信州人さん、

おっしゃっているのは、わたしたちの社会の利益を損なっている喫煙者に、被害弁済させるというような懲罰的な税負担ですね。

好みの問題ですが、わたしはそういう社会に暮らしたくないです(^^;被害者としての多数者が、加害者としての少数者を「構築」するようになると、際限がなくなってしまうのではないでしょうか。喫煙者を“撲滅”したあかつきには、次はどういう人がターゲットになるでしょう。喫煙者以外にも「社会から収奪している」人はいます。病人とか、障害者とか。・・・・わたしには、優性思想と地続きに映ります。

視点を変えましょう。そもそも喫煙を合法化してきた政府の責任や、たばこ販売で巨額の利益を上げてきた日本たばこ産業の行為はどうなりますか。喫煙者は「結果」であって、彼らこそが社会の利益を損なってきた「原因」なのではないですか。

投稿: 畑仲哲雄 | 2010年10月 4日 (月) 23時39分

畑仲さま
2点、反論致します。
①今回の値上げにより最も期待できる効果は「新たな喫煙者を増やさない」ことです。喫煙者を増やさないことが社会にとり有用であることは同意頂けるものと思いますが、いかがでしょうか。

②喫煙者が「結果」であることには同意致します。しかも「ニコチン中毒」という薬物依存患者であることも確かです。そして、その依存から離脱することに対して健康保険が適応され、公費が投入されます。つまり、喫煙が害悪であると認識し、離脱を試みるものに対して社会はサポートをしております。それを蹴って、なお喫煙を続け社会から収奪を続ける者たちが、病人や障害を持つ方と同一であるとは、私は決して同意できません。

投稿: 信州人 | 2010年10月 9日 (土) 10時26分

信州人さん、
2点の反論をありがとうございます。では、それに対する応答をさせていただきます。

>今回の値上げにより最も期待できる効果は「新たな喫煙者を増やさない」ことです

とありますが、「期待」は人によってさまざまではないでしょうか。信州人さんのように「喫煙者を増やさないこと」を期待する方もおられると思いますが、税収を真っ先に上げる人もいるでしょうし、政治的な何かを期待していた人もいるのではないでしょうか。それどころか、むしろ、喫煙者が中途半端に温存されることを願っていた人だっているかもしれないですよ。

>それを蹴って、なお喫煙を続け社会から収奪を続ける者たちが、病人や障害を持つ方と同一であるとは、私は決して同意できません

わたしも「同一」などという言葉は使っていませんので、誤解なきようお願いしますね(^^)
わたしが言いたかったのは、人間みな持ちつ持たれつで生きているということで、どのような少数者も「社会から収奪している」などと思いたくないのです。たばこを吸っている人だけが社会から収奪していて、その他の少数者は社会から収奪していないなどと、だれが認定するのでしょう。わたしが怖いのは、この種の論理は際限がなくなってしまうことです。多数者による専制の恐怖です。
「蹴って」という表現もちょっと強烈ですね(^^;「タバコ止めて」といったら「はい、止めます」と止められる人は中毒でも何でもないです。簡単に止められないからこそ依存症であって、それを「蹴って」と言うのは、議論が堂々巡りします。蹴るのではなく、素直に受けいられれないくらい煙草が好きになってしまった(させられてしまった)、ということでは?

まあ、遠くにいる政治家や官僚や企業経営者よりも、さしあたり近くで煙を吐き出す人が迷惑だなあと思われているのなら、それは、わたしにもよく理解できます。ただ、ほんとうに喫煙者をゼロにしたいのならば税率を中途半端に高くするだけでは不十分、というか逆効果ではないでしょうか。どうせなら、一挙に1箱1000円くらいにしないと、信州人さんの「期待」には添えないように思います。じわじわ上げるからこそ罪深い、とわたしには感じられます。

なんか、話がそれてしまいますが、喫煙率がとても高かった日本が、長寿国になれたのはなぜなんだろう、というのがわたしの素朴な疑問なのです。お医者さんががんばったから? もし日本に喫煙習慣がなかったら、もっともっと長寿国になっていたのでしょうか。65歳以上人口が全人口の50~80%とかになっていたら、、、、ちょっと怖いですね。

投稿: 畑仲哲雄 | 2010年10月 9日 (土) 12時08分

畑仲さま
お付き合い頂いて大変恐縮です
日頃狭い世界で生きているため、異業種・異年齢の方と議論できのは大変楽しいのですが、もし畑仲さまにはご迷惑であれば、ストップを明示して下さい

さて、まず「期待」に関してですが、私が期待していることではなく、禁煙治療に関する介入研究の結果として、タバコの価格を上げるという介入がもたらす効果が、現在吸っている方を禁煙に導くことはできないものの、新たに喫煙を開始しようとしている若年層への障壁となることが分かっている、という論旨でした。誤解を招いたようで申し訳ありません。但し、この価格については畑仲さまご指摘の通り、1000円程度にするときわめて有効であるとされています。尚、現在吸っている方を禁煙に導く介入として、N.Y市が行った禁煙パッチの無料配布、は有効であったことが報告されています。

>喫煙率が高かった日本が、長寿国に
何ゆえなんでしょうね(笑い)
同様に、虐げられていたはずの明治の女性が長寿であるのは何ゆえなんだ?と某ラディカルフェミニストに尋ねたことがあります

投稿: 信州人 | 2010年10月11日 (月) 01時55分

>増税分を・・・・
もしかしてたばこの値上げにより税収が増える事を前提に書かれた文章のようですが、
今回の値上げにより間違いなくたばこ税は減収となります。
http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_pol_zeisei-tabaco20101001j-04-w390&rel=y&g=tha
 日本たばこ産業(JT)は値上げから1年間の販売数量を前年同期比25%減と想定。
 財務省は10年度のたばこ税収を、前年度当初予算比5.1%減の1兆9734億円とみている。

>今回の値上げを機に禁煙に挑戦している人たちの支援をするべき。
既に厚生労働省が禁煙外来で健康保険が使えるよう支援しています。
たばこ吸わない人にとっては、保険料を禁煙治療に使われるのは不快な事です。
(別にイイですが)

インターネットは不特定多数の人が閲覧できます。
もっと色々な事を勉強してこんな無知な文章は書かないほうがよいですよ。

投稿: 一般人 | 2010年10月11日 (月) 02時13分

信州人様、
こちらこそ、ありがとうございます。
この間のやりとりは、きっと私のボケ防止に役立っていると思います。そういう意味で信州人さんには感謝しています。す。

「期待」問題についての補足読み、新規の喫煙者にとってのハードルを上げることにつながったことはよく理解できました。

非合法薬物なら、粗悪品が廉価で販売される危険性もありますが、たばこは一応合法なので、そういう危険もなく、喫煙生活の入り口を「狭き門」とした「功績」はあるでしょうね。あと、NY市の禁煙パッチ無料配布は、HIV予防のために行われるコンドーム配布と同様、公衆衛生上の措置としては意義深いものがありますね。こういうところに税を投入することには私は賛成です。

>虐げられていたはずの明治の女性が長寿であるのは何ゆえなんだ?と某ラディカルフェミニストに尋ねたことがあります

おおお。それは興味深い質問ですね(笑)

投稿: 畑仲哲雄 | 2010年10月11日 (月) 15時33分

一般人さん、貴重なご意見をありがとうございました。IPアドレスにご注意ください(笑)

投稿: 畑仲哲雄 | 2010年10月11日 (月) 15時39分

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