6月3日「大震災下のネット報道」公開研究会やります
東日本大震災から3ヶ月を目前にした6月3日(金)夕~夜、東京大学本郷キャンパスで、公開研究会「メディア研究のつどい」を開催します。今回のテーマは、「大震災下のネット報道-被災地の新聞社が取り組んだこと」。仙台に本社がある河北新報社の佐藤和文メディア局長をお招きし、講演と議論の夕べを開催します。佐藤さんは河北新報社のデジタル部門を統括する責任者で、このたびの大震災では、ブログ、SNS、ツイッターなどをフル活用した「ネット報道」を指揮してこられました。体験に基づいた貴重な話が聞けるのではないかと期待します。入場無料、参加自由です。事前登録の必要はありません。
公開研究会「大震災下のネット報道-被災地の新聞社が取り組んだこと」のご案内
http://www.hayashik.iii.u-tokyo.ac.jp/jp_news/media_kenkyu_tsudoi_311_internet/
研究会の場所:本郷キャンパス工学部2号館の地図
今回の大震災で、わたしが驚いたのは、犠牲者の多さと被災地の広さです。心のもやもやは、論理的に整理できても、感情はロジックではないので、いまだに得も言われぬ思いに胸を締め付けられることもあります。被災地の復旧復興がまだ始まったばかりの段階で、こんなことを書くのは気が引けますが、被災地支援のかたわら真剣に考えなければならないのは、地元が被災したらどうするか、ということです。
3・11の夜、わたしは大学院と自宅を何度か往復しました。その夜の本郷通り(旧中山道)は、埼玉方面に歩いて帰宅する人でごった返していました。大学院にいた学生たちの多くは、そのままキャンパス内で夜を明かしましたが、親類と連絡がとれなくなっていた院生の一人が、帰りたいというので、車を出しましいた。でも、道路がまったく動かない状況で、あえなくUターンして大学に戻りました。コンビニやスーパーからが食料品や水が消え、非日常のなかに放り出され、じぶんの無力さを思い知った次第です。
いま振り返れば、あのとき、マスメディアやジャーナリズムを研究している教員や学生にできたことはたくさんあると思います。それは「研究を通じて社会に寄与する」という、カッコつきのものではなく、目の前にいる帰宅難民や、恐怖に包まれた街の人々に向けての活動です。観念的で思弁的な論文を読んだり書いたりするアカデミックな能力は、わたしたちに必要ですが、同時に自分は特別な存在ではなく common man なのだという意識が必要ですし、civic virtue を頭で理解するのではなく、行動を通して自己陶冶していく必要があると思いました。
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