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2011年5月18日 (水)

『NPO PRESS』にエッセー寄稿

NPOが編集する新聞にエッセーを寄稿しました。寄稿先は『NPO PRESS』で、新潟県上越市の「くびき野NPOサポートセンター」が12年にわたって責任編集している週刊紙です。この新聞は、日刊地域紙の『上越タイムス』の月曜版に埋め込まれているもので、約2万人の読者のもとに届けられています。上越地域でNPOなどの市民活動に関わっている人にも、一般の新聞読者にも、文章が届けられたわけですが、なんとも面はゆいものがあります。これからも、機会があれば、今後も寄稿していきたいと思います。

「NPO PRESS時評 あなたのNPOは第何世代ですか?」, 『NPO PRESS』, 『上越タイムス』朝刊5面、2011年5月9日

わたし自身はNPOで活動をしているわけではなく、NPO研究の専門家でもありません。研究対象はマスメディアとジャーナリズムです。こういう書き方をすると、「おやっ」と思う方がおられるかもしれませんが、マスメディアとジャーナリズムは別物です。マスメディアではあるがジャーナリズムではない例もあるし、ジャーナリズムではあるがマスメディアではない例もある、と考えています。わたしの最大の関心は、マスメディアという器に盛られたジャーナリズムのもつイデオロギーです。

マスメディア・ジャーナリズムには、いくつも問題があり、多くの人がその“処方箋”を書いたり、“治療”を試みてきました。しかし、現実のマスメディアはそれほど単純ではありません。倫理や規範からのアプローチにも限界があるでしょうし、現状の社会構造のなかでニッチもサッチもいかなくなっている部分も少なくありません。そんななかで、わたし自身が思いも寄らない試みが行われていることを知りました。それは、新聞社がNPOに紙面を開放するという営みです。両者は対等な立場で、NPOには独立した編集権限が与えられています。その媒体が、寄稿先の『NPO PRESS』です。(もう少し詳しく知りたい人は小論を参照してください)

マスメディア・ジャーナリズム研究をするうえで、NPOはストライクゾーンに収まりません。NPOはむしろ市民メディアや地域情報化政策、さらには市民社会をめぐる諸研究のなかで参照されることが多く、「ジャーナリズム」とは親和性が高くありません。すこし乱暴な表現ですが、NPOは社会に対して影響力(社会を好くするための効果)を及ぼそうとする社会変革のための組織ですが、現在のマスメディア・ジャーナリズムは社会の「客観的」な観察者・報告者であり、大衆を扇動してしまうことを厳しく戒めています。

この、新聞社とNPOという、目的も方法も異にする二者が協力し合ってプロジェクトを展開することで、互いに批判し合い、学び合い、高めあい、信頼し合う・・・そんなことが期待できるとすれば、マスメディア・ジャーナリズムにとっても、NPOにとっても、悪いことではないでしょう。もちろん、この取り組みには課題や問題もあり、一部には批判する人もいるようです。ただ、わたしとしては、この珍しい試みを、もう少し注意深く慎重に見つめてみたいと考えています。なぜなら、この試みは、メディアとNPOという二者だけ問題ではなく、「地域民主主義」を刺激する可能性を秘めているように思えるからです。

いうまでもありませんが、研究対象と研究者の距離の取り方には注意が必要です。調査者が対象に影響を及ぼし、操作してしまうことは厳に慎むべきでしょう。しかし、わたし自身がNPOの勉強するなかで知り得た、ごく一般的な事象や理論を、調査対象である『NPO PRESS』のエッセーで紹介すること自体は、どう考えても研究者倫理から逸脱するものではありません。それに、調査者と調査対象が影響を及ぼし合うのは当たり前のことです。わたし自身が彼ら彼女らから聞き取り調査をするなかで、たくさんのことを学びました。そうした「学び」が、研究にフィードバックされることは自然なことです。社会を研究するということは、ビーカーやフラスコのなかで何度でも同じ結果を再現できる実験をするのとはわけが違います。研究者自身が社会の中に在るのだという自覚を忘れず、そのことをを包み隠さず記述しながら研究しなければならないと思うのです。

「そんなちっぽけな新聞をいくら研究しても、俺たち“一流”新聞社に、なんの利益ももたらさないんだよ」というような悪口も聞こえてきそうですが、わたしは大手新聞社の利益に与するために研究をしているわけではありませんし、ジャーナリズム研究の価値は、対象とする新聞の規模の大小で決まるわけではありません。大きな新聞社を対象とする研究には大きな価値があると考えている人がいるとすれば、その人は、世界一の発行部数を誇る読売新聞だけを研究するべきですね。

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