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2013年11月 2日 (土)

内側にいるから見えない?

現場をかけ回っている前線のジャーナリストたちは、取材対象について膨大な情報や知識を有している。「サツ回り」と呼ばれる事件記者は、刑法の知識はいうまでもなく、過去の未解決事件、警察組織の成立や現在の課題などは一通り頭に入っているし、警察官僚の行動原理や思想的傾向を理解し、内部人事などに通じている場合もある。岡目八目とはよくいったもので警察内部にいる職員より、ベテランのサツ記者のほうが警察に詳しい。しかし、そんな記者たちも、じぶんが帰属している集団についてけっして詳しいわけではない。

以下は、大学内部からの評価を気にせずに目を通した/ている本や記事(50音順)
朝日新聞連載「大学変貌」(2013.4.5~)
石渡嶺司・山内太地『アホ大学のバカ学生―グローバル人材と就活迷子のあいだ』(光文社, 2012.1)
川成洋『大学崩壊』(宝島社, 2000.6)
櫻田大造『大学教員採用・人事のカラクリ』(中央公論新社, 2011.11)
櫻田大造『大学入試担当教員のぶっちゃけ話』(中央公論新社, 2013.9)
常見陽平『就活の神さま―自信のなかったボクを「納得内定」に導いた22の教え』(WAVE出版, 2011.10)
毎日新聞教育取材班『大学に「明日」はあるか』(毎日新聞社, 1998.11)
宮台真司『宮台教授の就活原論』(太田出版, 2011.10)

ジャーナリズムやマスコミュニケーションの授業で教えられるであろう基礎的な理論・仮説・論争などを、現場の記者たちは知らない。すくなくとも過去のわたしは無知であった。記者はじぶんに関心のある事象や人物を対象にしているのであり、じぶんたちを対象にすることに慣れていない。「客観的」かつ「中立的」かつ「偏りのない」報道を心懸ければ、じぶんを無色透明で公正な伝達者としがちだ。老練なサツ記者が平凡な警察官よりも警察に詳しいのと同じく、老練な研究者のほうがジャーナリストよりも詳しい。

かつてジャーナリストとして業界にどっぷり浸かっていたわたしは、9年間の修行期間を経て学術的な道具を使うようになり、過去のじぶんたちを対象化しはじめた。むろん、業界内部の方からは「部外者は黙っていろ」と叱られるかもしれない。だが、業界内に居続ければ存在すら知らなかったであろう"モノサシ"をいくつか手にした。そんな気がしているだけかもしれないが、、、

ただ、いまのわたしにもよく見えない対象がある。今春から帰属しはじめた大学という組織やその制度についてである。ほんの短い期間、京大の記者クラブに短期間いたことはあるが、いくつかの学会を取材したにすぎない。大学について真正面から向き合った経験もなければ、興味もなかった。そんな状態で大学教員の仲間入りをしてしまったいまのわたしに、有益な視点を与えてくれるのではないかと思えるのは、広い意味で大学を取材・調査対象にしている言論人である。彼・彼女らが大学をどのように評価しているか教えてもらうしか、わたしには術がない(second order observation に頼ります)。

むろん、内部にいながら、じぶんの足元(帰属している共同体)を批判的に見つめようという心構えは、ないよりあるほうがいいでしょう。なにもジャーナリストや大学教員だけではなく、さまざまなギルトや利益集団にいるすべての人にいえると思います。法曹も、医者も、お坊さんも、最近はやりの就活評論家たちも、例外ではないと思います。

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