論駄な日々

　「剽窃」とか「盗作」のつもりで「無断引用」という言葉を使ったのだろうと思われるが、こうした用法はあきらかに誤りである。引用の通俗的な意味は「自分の説のよりどころとして他の文章や事例または古人の語を引くこと」（広辞苑第五版）である。もしも引用に許諾が必要だとすれば、わたしたちは故人の言葉を引けなくなる。「春はあけぼの」という表現を引用するとき、イタコにお願いして霊界の清少納言にお願いをしなければならない。国会の論戦を、社説で引用するさい、いちいち安倍首相に「あたなの表現を使わせてください」と許諾を求める論説委員はいまい。

　ちなみに、この共同通信の記事ときわめて酷似した記事がニッカンスポーツのウェブサイトに掲載されているのを発見した。

小保方さんら執筆ＳＴＡＰ論文無断引用か 　理化学研究所の小保方晴子・研究ユニットリーダーらが英科学誌に発表した新たな万能細胞「ＳＴＡＰ細胞」の論文で、２００５年に米科学誌に掲載された論文と酷似した記述があり、無断で引用した疑いがあることが２月２８日、判明した。理研は「記述が似ているとの指摘があることは把握している」と述べ、不自然な画像データとともに、調査を進めているもようだ。 （http://www.nikkansports.com/general/news/p-gn-tp0-20140301-1264180.html 取得2014年3月18日）

　このほか、産経新聞のウェブサイトにも酷似した記事がある。

別論文の記述と酷似　理研も調査か 　理化学研究所の研究者が英科学誌に発表した新たな万能細胞「ＳＴＡＰ細胞」の論文で、２００５（平成１７）年に米科学誌に掲載された論文と酷似した記述があり、無断で引用した疑いがあることが２８日判明した。理研は「記述が似ているとの指摘があることは把握している」と述べ、不自然な画像データとともに調査を進めているもようだ。 （http://sankei.jp.msn.com/science/news/140228/scn14022819230006-n1.htm 取得2014年3月18日）

　さらに、日経新聞のウェブサイトにもよく似た記事があったが、記事の末尾には［共同］というクレジットがある。クレジットというのは、媒体社が通信社の原稿を使ったという符丁で、共同通信の配信記事であることが明記されていた。

別の論文と記述が酷似　ＳＴＡＰ細胞の論文
　理化学研究所の研究者が英科学誌に発表した新たな万能細胞「ＳＴＡＰ細胞」の論文で、2005年に米科学誌に掲載された論文と酷似した記述があり、無断で引用した疑いがあることが28日判明した。理研は「記述が似ているとの指摘があることは把握している」と述べ、不自然な画像データとともに、調査を進めているもようだ。［･･･］〔共同〕
（http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2805D_Y4A220C1CR8000/ 取得2014年3月18日）

　剽窃を扱うニュース記事自体に、剽窃の疑いがもたれるのはかなりなさけないと思うのですが、いかがでしょう。