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2014年11月13日 (木)

インタビューの上手と下手

 知りあいの業界人から意外な言葉を聞きました。「小田島隆って、インタビューが下手」。ラジオ番組のトークを聞く限り、小田島さんは話し巧者です。わたしもファンの一人で、TBSラジオ「たまむすび」の月曜日は聴いています。でも数年前、小田島さんが司会をしているCS番組で法律関係者のゲストと対談しているのを見たとき、たしかにギクシャクしていたことを、わたしも記憶しています。活字で読む小田島節は軽妙でリズム感があり内容も鋭いのに、あのギクシャク感との落差は何でしょう。

 「インタビューが上手なのはだれ」と尋ねると、たとえばアメリカCBSの「60ミニッツ」のマイク・ウォーレスみたいな人が上位にくるでしょう。日本では池上彰さんと答える人が多いかもしれません。たしかに、取材場面を映像で見せるインタビューは、取材者も被取材者もテレビに映ることを前提にしているので、受け答えの内容だけではなく、雰囲気や話し方の印象にも意識せざるを得ません。涙を見せたり、けんか腰になったり、反論を切り返したりというのは、ひとつの見せ場になります。

 しかし、インタビュー結果を活字で出力するコラムニストや新聞記者の場合、取材の現場に観察者はいません。取材場面が公開されることもほとんどない。なので、絶妙な切り返しをしたり、決めゼリフで相手を黙らせたりする必要もない。そういう取材をしている人が、突然映像メディアに登場すると(とくに編集が未熟なCS番組では)、なんだかギクシャクしているように見えることがあります。でも、活字メディアのインタビューアーはそれがふつう。インタビューが予定調和にすんなり終わってしまうのは失敗の典型でしょう。

 そもそも取材者が高価でおしゃれな服を着ていたり、理想的な東京共通語のイントネーションで話したりするという時点で、多くの被取材者は圧倒されてしまうものです(そういうのが必要な場面もあるでしょう)。ジャーナリストの場合でも活字と映像で異なるわけですから、社会学者の「インタビュー調査法」となると、様相が変わってくるでしょう。社会学では、構造化/半構造化/非構造化とか、アクティブ・インタビューとか、方法論的にいろんな作法があり、これがやっかいなのですが・・・

 私がこれまでこわいと感心した取材者たちは、見せるインタビューをする人ではなく、出力内容で勝負する人たちでした。固有名詞を出すと差しさわりがありますが、いわば刑事コロンボのようなタイプです。腹が出ていたり、ちんちくりんだったり、化粧っ気がなかったり、方言だったり・・・。被取材者を安心させ、心を開かせる取材者こそ恐るべし。昔の小田島さんも恐るべしなのです。
 
 インタビューが上手なジャーナリストや社会学者自身が、芸能人やスターのようになってしまうと、もはやかつてのように市井の人は取材できなくなり、各界の大物との❝ビッグ対談❞みたいなものしかできなくなってしまうかもしれないですね。

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コメント

小田嶋さんの事例は、インタビュアーとしての上手下手よりも、対話者としての上手下手ってことなのでしょうね。

ことインタビューで言うと、活字系の取材者と、映像のインタビュアーの一番の違いは「相手に語らせる技術」ではないでしょうか。

活字メディア出身のレポーターで取材した時よくあるのが、自分の見解を長々と質問として発して、相手が「Yes」「No」と回答するだけで満足なさってしまうケース。
文章になると「彼は○○○○○○○○○であると認めた」あるいは「彼は××××××××とした」となるのかもしれないし、それで活字的に再現されるインタビューとしてはOKなのかもしれないけれど。
でも、テレビ映像的にはインタビュアーの一方的な自説の展開を長々と伝えるだけのことになるのは、アウト。
だから、脇から「済みませんが」とでしゃばって、相手自身に「Yes」「No」が何に対してのものなのか自らの言葉で語らせるように追加質問せざるを得なくなる。

如何にして相手に語らせるか(言語的に、あるいは表情や動作として)が、テレビのインタビュアーの勝負所。相手が言語にしろ、表情・動作にしろ、相手自身のものとして語らせるように問いを発してゆく。

60ミニッツの場合、「生放送」での「インタビュアーvsインタビュイー」の対論(対決)番組。打打発止の言葉の打ち合いが重要になる形式。
一方的に問いを発し、相手を追い詰めるのもまた見世物としてはありなんだけれど、決してインタビューが上手いとは思えない。
(米国のネットワーク・ニュースのインタビュアー=レポーターとは何か、そのインタビュー手法は?という点では、マイクル・クライトンの『エア・フレーム』での描写が興味深いですよ。テレビ屋としては、かなり痛い記述です)

池上さんは「相手に語らせる問い」を発することができる方。
単に相手を追い込む事を目的にした問いは発しない方だと思います。

そして、多くのテレビでの(記録映画も同じだな)インタビューでは、インタビュアーは画面の外にいて、インタビュイーが主役となる。
インタビュアーは長短様々な問いを発し、時に表情で促すことによって、相手に言語的に、非言語的に語らせることに意を払います。
画面の外にいるインタビュアーの長々とした質問なんて、使えないですからね。

投稿: 真々田弘 | 2015年3月11日 (水) 08時06分

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