新聞のパートナー(2)
日本新聞協会加盟の新聞社は、政界や財界の権力者の力を借りることなく「独力」で経営改善を模索しています。なかには全国紙=地方紙、全国紙=地域紙という系列関係にある企業もあり、ナントカ会という新聞社のグループもあります。そういうのを考慮すれば、完全な独力とはいえませんが、プロパブリカのように財団から金を得ているわけではありません。朝日と産経のように社論は対立しても共通する利害も多く、いわば護送船団方式を形成しているといえます。つまり「業界の風雲児」がけっして現れない構造ができあがっているわけです。
プロパブリカ http://www.propublica.org/
上越タイムス http://www.j-times.jp/
くびき野NPOサポートセンター http://www.kubikino-npo.jp/
畑仲哲雄(2014)『地域ジャーナリズム:コミュニティとメディアを結びなおす』勁草書房.
畑仲哲雄(2010)「『編集権』からNPO『協働』へ : あるローカル新聞の市民参加実践」『情報学研究 : 学環 : 東京大学大学院情報学環紀要』 http://ci.nii.ac.jp/naid/110007767390
この構造を内部から突き破れる可能性があるのは、「これじゃあ退職金はでないぞ」という危機感を持つ若い層だけです(このブログはそんな人たちに読んでもらいたいと願っています)。ただ彼ら彼女らには社内での意思決定権限がない。そんな若手新聞社員たちは、業界以外の世界に未来のパートナーを求めなければなりません。
グラフで示したデータは、日本新聞協会に加盟している100社あまりの合計です。協会に加盟していない新聞社のなかには、わたしが『地域ジャーナリズム:コミュニティとメディアを結びなおす』(勁草書房)で詳しく検討した上越タイムス社のような右肩上がりの例もあります。上越タイムス社は90年代末、地元の中間支援型のくびき野NPOサポートセンターという強力なパートナーを得ることで、変革不能と思われた構造を内破、つまり内側から破っていくことに「成功」しました。このプロジェクトを仕掛けたのは、もともと公立中学で数学の先生をしていた大島誠さんでした。(続)
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