新聞のパートナー(5)
誤解のないよう付け加えておきますが、わたしがいう「新聞」は、新聞社のことではありませんし、日本新聞協会のような組織のことでもない。わたしは新聞と新聞社と新聞記者を切り分けて考えています。「新聞」なるものは、いわば、ニュースや言論が投じられ、議論される公共的な空間です。新聞社はそんな議論のネタを印刷した紙を作っている営利企業にすぎません。そして新聞記者とは、その両者を取り持つ存在といったところでしょう。こうした考え方は、2007年に東大に提出した修士論文のエッセンスを抽出した『新聞再生:コミュニティからの挑戦』(平凡社)で詳述しておきました。
東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 http://www.iii.u-tokyo.ac.jp/
畑仲哲雄(2008)『新聞再生:コミュニティからの挑戦』平凡社
新聞社の社員記者はサラリーマンでありながら、議論のための“薪(まき)”を見つけ、炉にくべる責務を負っています。まちがっても、新聞社経営の論理と過度に一体化してはいけないし、じぶんの上司だけに忠誠を誓ったりする振る舞いもジャーナリズムの価値を毀損します。全国の新聞社の若い記者たちに言いたいことは、よきパートナーを求めよ、ということです。
この記事に何か引っかかるものを感じた新聞関係者の方は、拙著を手にとってみてください。わたしの本は、地域コミュニティとジャーナリズムの再生を考えることを主眼としています。そして、この問題を一緒に考えてくれる仲間も募っています。(了)
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