『地域ジャーナリズム』が内川賞受賞
『地域ジャーナリズム:コミュニティとメディアを結びなおす』(勁草書房)
が、2015年度の第5回内川芳美記念マス・コミュニケーション学会賞に選ばれました。お知らせをいただいたときは、まるで豆鉄砲を食った鳩のような状態でしたが、時間が経つにつれ感謝の気持ちがわきあがってきました。本書を評価してくださった選考委員の先生方に感謝を申し上げます。
卑下するわけではありませんが、今回の受賞はじぶん一人の力によるものではありません。たとえば本づくりの過程でいくども無理を聞いてくれた担当編集者の勁草書房の橋本晶子さんはいうまでもなく、いつもそばで励まし、また相談にのってくれた妻の鈴木クニエさんがいなければ本が完成することは絶対にありませんでした。出版助成金の手続きを気持ちよくすすめてくれた龍谷大学研究部(瀬田)のスタッフに方にも助けていただきました。そもそも、わたしが研究テーマを設定したのは、共同通信在社時代に出会った神奈川新聞記者と神戸新聞記者との対話が発端です。地元に根を張る記者たちとの交流は「あとがき」に記したとおりです。
本書は、2012年度に東京大学に提出した博士学位論文を改稿したものです。大学院学際情報学府の林香里先生(指導教員)、水越伸先生(副指導教員)、田中秀幸先生、そして元立正大学の桂敬一先生、千葉大学の小林正弥先生に審査していただきました。学術的に厳く鍛えてくださり、かつ、温かい眼差しで励ましてくださった先生方には、なんとお礼を申し上げればよいかわかりません。なかでも林先生は、通信社の中間管理職として道を踏み外しそうになっていた三流記者に、9年にわたって学問道場で稽古をつけてくださいました。ご恩は生涯忘れません。
今回の喜びを分かち合うべきは、いうまでもなく新潟・上越の尊敬すべき友達です。上越では、日刊紙とNPOが対等なパートナーシップのもとで協働を続けています。日刊地域紙『上越タイムス』が毎週月曜日の紙面の一部(4ページ)を、民設民営の中間支援組織くびき野NPOサポートセンターに提供し、NPOのスタッフが市民活動のために紙面編集をするというのが協働の概要です。「過疎」の地で続けられているこの協働は、デモクラシーの最先端の実験といってよいと思います。大島誠さん、秋山三枝子さん、山田護さんをはじめ、多くの方々の営みは、ながらくメディア関係者には無視されてきましたが、よくよく考えれば、それは「大手」「一流」メディアに真似のできない大切なジャーナリズムの姿ではないか--わたしの目には、そう映りました。
本書出版から間もない段階でブログで紹介してくださいました佐藤和文さん(メディアプロジェクト仙台主宰)と、新聞社で初めて書評を掲載した琉球新報社(沖縄県)、そして新報で書評してくれた琉球大学の比嘉要先生に、あらためてお礼申し上げます。学会賞受賞という「評価」がまだ定まっていない(つまり、マブかガセかわからない)段階で、多くの方に本書を推奨していただいていたことを、うれしく思います。ありがとうございます。
このほか、地域メディア研究の第一人者で、同僚教員でもある龍谷大学政策学部の松浦さと子先生には、3月にシンポジウムで登壇する機会を与えていただきました。松浦先生こそ、数あるメディア研究者の中でもっとも早く上越タイムス社に着目されていたことを、わたしは執筆の過程で知りました。松浦先生の研究者としての鋭敏さには舌を巻くばかりです。ありがとうございます。
「授賞式の前に、ナ~ニ舞い上がってるんだか」と笑われそうですが、これまで支えてくださった方々への感謝の気持ちを表明したい衝動に駆られてのことです。どうかお許しください。今後は、賞の名に恥じぬよう、いっそう精進する所存です。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
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