取材謝礼のグレーゾーン 連載「ジャーナリズムの道徳的ジレンマ」第10回
「わたしは取材謝礼の類いを一切しません」――そんな方針を貫くジャーナリストがいます。ネタをお金で買うようになってしまったら「小切手ジャーナリズム」と区別がつかなるし、欲得抜きで取材に応じてくれる人に現金を差し出すのは失礼なことかもしれません。週刊誌や民放ではケースバイケースのようですが、一般紙では、謝礼を支払わない原則はほぼ守られているのではないでしょうか。
ただ、ジャーナリストも切れば血の出る人間です。取材相手に多大な負担や犠牲を強いてしまう場合には、言葉だけでは済まないと思えることもあるはずです。謝礼金を支払わない代わりに、その人に有利になるよう事実を曲げて報道するわけにいきません。すなおに、感謝の気持ちをカタチにするほうが良い場合があるかもしれません。
やっかいなのは、どれくらいの謝礼がなされているのか、読者・視聴者には分からないということですね。
〈CASE 10〉取材謝礼のグレーゾーン keisobiblio.com/2016/12/13/hatanaka10/
メディアが報酬を支払う例もあります。たとえば、新聞社や通信社が、学者や文化人に寄せてもらう談話がそうです。識者談話に支払われるのは、いわば「原稿料」。専門的な知識に基づいてエッセーを書いてもらうのと同じで、「寄稿」のようなものだからです。
バックナンバー
〈CASE 09〉 小切手ジャーナリズムとニュースの値段(2016/10/25)
〈CASE 08〉 原発事故、メディア経営者の覚悟と責任(2016/10/25)
〈CASE 07〉 報道の定義、説明してくれませんか?(2016/08/30)
〈CASE 06〉 組織ジャーナリストに「言論の自由」はあるか(2016/08/09)
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