経営破綻を報じる時宜と大義 連載「ジャーナリズムの道徳的ジレンマ」第16回
わたしが『日経トレンディ』編集部から共同通信社金融証券部に転職した1991年、野村證券の損失補填問題が明るみになり、田淵義久社長が引責辞任しました。駆け出しの経済記者だったわたしには、ここからバブル崩壊にともなう金融市場の大混乱が始まることなど想像もできませんでした。じっさい、90年代中盤以降、中小の金融機関が相次いで経営破綻し、97年には山一証券が自主廃業しました。
破綻報道が難しいのは、「この会社は倒産寸前だ」と書けば、本当に倒産してしまうリスクがあることです。金融機関の経営破綻を報じれば、預金者が店頭に押し寄せる「取り付け騒ぎ」のパニックを招きかねません。
〈CASE 16〉経営破綻を報じる時宜と大義 http://keisobiblio.com/2017/04/25/hatanaka16/
金融行政は戦後長らく「護送船団方式」といわれる方式が採られ、行政・実務・報道の当事者たちは「日本経済の動脈を守れ」という不文律を守ってきたかにみえます。しかしそれら過去の話。金融機関の破綻が珍しくなくなって以降、破綻報道のタイミングと報道の意義をその場その場で考えていかなければなりません。
バックナンバー
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〈CASE 14〉世間に制裁される加害者家族をどう報じる(2017/03/41)
〈CASE 13〉被害者の実名・匿名の判断は誰がする? (2017/02/21)
〈CASE 12〉取材先からゲラのチェックを求められたら(2017/01/31)
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