「朝日ぎらい」を変える
「もう、『マスコミが悪い』と突っ込まなくなりましたよ」。先日、ある市民講座のあとで受講生からそんなコメントをもらい嬉しくなりました。その方は、学生時代に『朝日ジャーナル』や『世界』の読者だった団塊世代で、いつしかすっかり「朝日ぎらい」に。わたしの授業が変化の契機になったとすればうれしいですね。
わたしは、龍谷エクステンションセンターが運営する市民講座で「ジャーナリズムの道徳的ジレンマ~報道現場の難問を考えるワークショップ」という授業を担当しています。この授業は、報道倫理の難問をさまざまな角度から考える一種の哲学カフェです。わたしの主な役目はお題の提供とタイムキーパー。受講生同士が小グループに分かれて意見を聴き合い、最後は各グループでまとめた意見をクラス全体で共有するというのが授業の流れです。
対話型の授業は、いわば「文殊の知恵」的な解を求めるというよりも、むしろ、意見の違いを際立たせ、異なる意見を尊重しあうことに力点を置きます。「論破」とはまったく違うスタイルです。
テレビや新聞で伝えられるニュースや社会現象が、別の立場から見れば異なって映ります。最初は「俺の意見が正しい」と思っていた人も、意見交換するうちに、自分の考えがワン・オブ・ゼムであったり、分が悪いものであったりすることに気づく契機を得られます。
講師が一方通行で解説し、受講生がノートをとるだけの授業よりも、受講者どうしで頭を使って議論をするので、授業が盛り上がりますし、なによりも多様な意見を聞けることで、講師役のわたし自身の勉強にもなります。
こういう授業に、現役記者やメディア企業の幹部にも参加してもらい、市民・読者と同じテーブルで聴き合いをしてもらいたいと思っていますが、プロ意識が強いジャーナリストほど素人と平場で語り合うことに興味がなさそうです。そういうマインドが「マスゴミ論」に拍車をかけているのではないかと思っています。
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