ジャーナリズム界における「鳥とバードウォッチャー」の関係
報道実務家は、日々、ニュースを求めて取材活動で忙しくしている。それに対し、ジャーナリズムの研究者は、報道実務家や組織を観察し、問題を検討することを生業としている。両者の関係は、「鳥とバードウォッチャー」のようなものだ。恐竜のように振る舞う悪しき鳥の組織に対し、一部のバードウォッチャーは厳しい眼差しを向けてきた。また別のバードウォッチャーは鳥には役に立たない思想や理想を振りかざしてしてきた。
しかし、近年、鳥の組織は相対的に弱体化し、鳥の数も激減している。バードウォッチャーたちは、弱りつつある鳥たちに本来の働きを羽ばたきをしてもらうための処方箋を書くときに来ているように思う。
「鳥とバードウォッチャー」というのは、物理学者リチャード・ファインマンが残した有名な言葉から借用した。その言葉とはは「科学者にとって科学哲学の無益さときたら、鳥たちにとっての鳥類学と大差ない。(Philosophy of science is about as useful to scientists as ornithology is to birds.)」だ。科学者にとっての科学哲学というファインマンの言葉を初めて知ったとき、わたしは報道実務家にとってのジャーナリズム研究との関係性に類似性を見いだした。(https://www.msz.co.jp/book/detail/07558/)
わたし自身は、かつて鳥であった。上手に空を舞ったわけでもなく、すごい獲物を取った経験もないが、ひょんなことからバードウォッチャーとして修行する機会を得て、運良く免許皆伝の身となった。
今後は、報道の実務家たちが、市民社会から求められ、市民社会と善き関係を築き、市民社会にとっての益鳥となるような、研究をしようと思う。
わたしは次年度の1年間、研究休暇をいただき、いろんな方々とお目にかかるつもりです。実務家の鳥の皆さまも、研究者であるバードウォッチャーの皆さまも、どうかよろしくお願いします。
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